日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)と広島国際文化財団が主催し、1983年より実施しているキャンペーン「ヒロシマ・アピールズ」。1983年に第1回作品として、当時JAGDA会長の故・亀倉雄策氏による「燃え落ちる蝶」を発表。その後ら1990年まで毎年JAGDA会員1名がボランティアで1点ずつ新しいポスターを制作している。2013年より主催にヒロシマ平和創造基金も参加。言葉を超えて“ヒロシマの心”を訴えるポスターを共同制作し、国内外に向けて平和を呼びかけている。
本年度のポスターを制作したのは、中村至男氏。7月11日に、広島市役所において松井一實広島市長に本ポスターは贈呈された。そして、7月31日~8月13日の期間に、広島市内のバス停にも掲出される。
中村氏は、1990年日本大学芸術学部卒業、CBS・ソニー(現ソニー・ミュージックエンタテインメント)を経て1997年よりフリーランス。グラフィックデザインを中心に、広告、絵本、CI、デジタルコンテンツ、映像、イラストレーション、ブックデザインなどで活動している。これまでの主な仕事に、21_21 DESIGN SIGHT「単位展」、アートユニット「明和電機」のグラフィックデザイン、銀座メゾンエルメスのウインドウディスプレイ、松山市立子規記念博物館、日本科学未来館、雑誌『広告批評』(1999年)、佐藤雅彦氏とのプロジェクトに、PlayStation「I.Q」やNHKみんなのうた「テトペッテンソン」などがある。
今回の制作にあたり、中村氏は次のようにコメントしている。
「先の戦争は、物心がついた時にはもう教科書の中の昔の出来事だった。ながく平和だと思いこみ育ってしまったが、歳を重ねるほど、この世界の危うさに自分の甘さを思い知る。震災、原発事故、疫病や戦争……想像を超えることが次々と起きる時代を生き、わかったつもりで世界を憂いても、核兵器使用?まさか、と心の底に一粒の傍観が残る自分に今一度問いたい。
このポスターを制作しながら、手元のスマホに目をやると、まさに広島からG7サミットが生中継され、各国首脳陣が原爆資料館を出て記念碑へと向かっている。核兵器は人間の所業に他ならない。人が起こすことは人が止められるのだ。
そんなことを想いながら1945年と地続きの”今”を表現した。この指は人間の弱さの象徴である。『人差し指』と名づけたこの一枚。2023年、広島からの訴えをつなぐ鎖のひとつになれたらと願っている」
本ポスターは、広島平和記念資料館(原爆資料館)、広島市平和記念公園レストハウス、広島市現代美術館他、JAGDA事務局(東京ミッドタウン・デザインハブ内)、 JAGDAオンラインショップで販売される。価格は、1枚1,100円(税込)。
ポスターの展示
・7月30日(日)~8月7日(月)
「ヒロシマ平和ポスター展 2023」にて、これまでの「ヒロシマ・アピールズ」ポスター全作品、JAGDA広島・長崎・沖縄地区会員の作品、「広島平和ポスター学生コンペティション」選出作品とともに展示(会場:合人社ウェンディひと・まちプラザ 北館4F ギャラリーA・B)
・7月31日(月)~8月13日(日)
広島市内のバス停に、本ポスターのデザインを掲示
・9月1日(金)〜10月19日(木)
「日本のグラフィックデザイン2023」展にて、本ポスターおよび第1回「ヒロシマ・アピールズ」ポスター(亀倉雄策/1983年)を展示(会場:東京ミッドタウン・デザインハブ)