米国のフォントメーカー・Monotypeは7月19日、フォントワークス(東京・港)をSBテクノロジーから買収すると発表した。SBテクノロジーはMonotype日本法人へ9月1日付で全株式を譲渡し、2023年第3四半期中に取引完了予定。Monotypeが日本企業を買収するのは初で、日本語書体をグローバル展開する。日本国内での多言語書体の展開強化にも取り組む。
Monotypeは米国で100年以上の歴史を持ち、日本法人は2004年に設立された。「Helvetica Now」「Neue Frutiger」「Gotham」をはじめ約4万を超える欧文書体を所有し、他社所有書体を含め40万超の書体をライセンス展開してきた。米国、東京のほか英国、ドイツ、インド、中国、台湾、香港、韓国に拠点を構えている。
フォントワークスは1993年設立。2000年代初頭に登場した日本語書体の筑紫書体シリーズなど260種の書体を保有し、定額制サービス「LETS」などで知られる。SBテクノロジーは2013年6月にフォントワークスを連結子会社化していた。
またMonotype、フォントワークスは2017年4月に事業提携を結び、定額制フォントサービス「Monotype LETS」を提供してきた。今年4月には和欧混植フォントの開発に向けて連携強化を進めると発表していた。
本買収によりフォントワークスの書体デザイナーやエンジニアら73人のスタッフ、知的財産、「LETS」をはじめ「mojimo」「FONTPLUS」といった各種サービスが Monotypeに加わる。Monotypeの最高経営責任者であるナイナン・チャッコ氏は「フォントワークスは日本語書体において有力な企業。アジア太平洋地域での事業展開の拡大を進めていけたら」と話している。
これまでブリヂストン、メルカリといった日本企業のコーポレートフォントなどを手がけてきたMonotypeのクリエイティブ・タイプディレクターの小林章氏も「日本語書体は欧文書体に比べ、文字のバリエーションが多い。開発期間が長くなり提供コストも高めに設定されることになる。欧米の強力なブランドが日本市場に目を向けたとき、日本語でブランドの姿勢を発信する際の手助けになれば」と話す。
背景には、グローバル企業の日本市場におけるコミュニケーション展開時の書体活用の可能性はもちろん、Netflixなどを通じて各国が制作するコンテンツが世界各国に配信をされる中、字幕などに用いる書体の多言語が求められている状況などもある。
「Monotypeでは書体がもたらすブランドリフトの機能などの効果測定や研究も進めている。今後、それらの影響力をデザイナーはもちろん、デザイナー以外の方にも知っていただくことができたら」と小林氏は話している。