クリスピーサンドが踊るように回る、佐藤健出演「ハーゲンダッツ」CMの裏側

気になるあのCMの演出やキャスティングについて、ディレクターにインタビューする月刊『ブレーン』の連載「CMの裏側」。9月号で取り上げたのは、ハーゲンダッツ ジャパン「クリスピーサンド」のテレビCM「音まで贅沢」篇です。演出を担当した田中裕介さんに話を聞きました。

(本記事は月刊『ブレーン』2023年9月号「AIの民主化で際立つ人間・文化の視点 世界のクリエイティブ」に掲載したものです)。


写真 CMカット ハーゲンダッツ「音まで贅沢」篇。
「音まで贅沢」篇。

いかに本物らしく美味しそうにみせるか

リズミカルな音楽に合わせ、踊るように回る色とりどりのクリスピーサンド。場面はクリスピーサンドができていく様子に変わり、最後は佐藤健が「クリスピーサンド ザ・キャラメル」をサクッと心地よい音を立てて味わう。本CM の監督を務めたのは、CAVIAR の田中裕介さんだ。

「クリスピーサンドは『サクッ、パリッ、とろ~り』とした食感が楽しめることが特長で、今回はこの製品特長を印象的に表現しています」と田中さん。オリエンでカラフルに商品バリエーションを見せたいという要望があり、そこにクリスピーサンドのもつポップで軽快なイメージを掛け合わせ、踊るような映像を構想した。

クリスピーサンドが踊るシーンは全てCG。制作時にはいかに「本物にみせるか」にこだわった。一見規則的な動きだが実は個体差があり、一つひとつ微妙に動きをずらしている。これにより、まるでアイスクリームが意思を持っているかのような動きを実現した。

また、チョコレートがアイスクリームにかかるシーンでは、実際にモックをつくり、それを3D スキャンしてCG にしている。質感やチョコレートの流れる様子など、細かな部分にもリアリティを出すための工夫だ。「音まで贅沢」というコピーのとおり、最も力を入れたのは「サクッ」と音を立てて食べるシーンかと思いきや、実はそのひとつ前のシーンにもこだわりが詰まっている。

「佐藤さんがクリスピーサンドを手に取るシーンは、手に持った状態からはじめるとCG とリアルの境目が目立ってしまいリアルさが出ませんでした。そこでアイスクリームをつるした装置をつくり、撮影の瞬間に上からアイスクリームを落として掴んでもらいました。手に収まる瞬間の重力などが、リアルさを生み出しています」。

CG でCMをつくる際の難しさとして、田中さんは「食べたくなるかどうか」を挙げる。「アイスクリームを美味しそうに見せようと思うと、表面はツルッとした質感にしますが、本物は温度差で霜がつきます。リアルを追求して霜をつけすぎると、美味しそうに見えないこともあるので、そのリアルさとシズル感のバランスには、細心の注意を払っていますね」(田中さん)。

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パース・イメージ ハーゲンダッツ ジャパン「クリスピーサンド」「音まで贅沢」篇(15 秒)の絵コンテ。

ハーゲンダッツ ジャパン「クリスピーサンド」「音まで贅沢」篇(15 秒)の絵コンテ。

 

田中裕介(たなか・ゆうすけ)

1978年生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。2007年よりCAVIARに参加。秀逸なデザインセンスと映像制作のスキルに遊び心を加味した独創性を武器に多くの話題作を手がけ、CMやMVの映像演出を基軸にグラフィックデザイン、アートディレクション、舞台演出などその活動は多岐にわたる。

スタッフリスト

企画制作
TBWA\HAKUHODO+AOI Pro.
ECD
高橋律仁
AD
松崎賢
C
渡部琴菜
企画
土谷秀一郎、渡辺光
CPr
生駒武志
Pr
齊藤佑典、衛藤有希菜
PM
井上唯香
演出
田中裕介
撮影
近藤哲也
照明
上野甲子朗
美術
Enzo
編集
瀬谷さくら(オフライン)、中村貴則(オンライン)
CG
jitto
カラリスト
大角綾子
MA
倉田昌治
ST
中兼英朗
HM
古久保英人
フードST
山崎慎也、奥村まどか
出演
佐藤健

ECD:エグゼクティブクリエイティブディレクター/CD:クリエイティブディレクター/AD:アートディレクター/企画:プランナー/C:コピーライター/STPL:ストラテジックプランナー/D:デザイナー/I:イラストレーター/CPr:クリエイティブプロデューサー/Pr:プロデューサー/PM:プロダクションマネージャー/演出:ディレクター/TD:テクニカルディレクター/PGR:プログラマー/FE:フロントエンドエンジニア/SE:音響効果/ST:スタイリスト/HM:ヘアメイク/CRD:コーディネーター/CAS:キャスティング/AE:アカウントエグゼクティブ(営業)/NA:ナレーター

 

月刊『ブレーン』2023年9月号

ブレーン9月号

  • AIの民主化で際立つ人間・文化の視点
  • 世界のクリエイティブ
  • ▼31人のクリエイターに聞く海外アワード2023
  • ●時代を映す注目事例とキーワード
  • ●海外アワードに見るAIとの共創の可能性
  • 〈回答者〉(五十音順)浅井雅也、阿部光史、荒井信洋、石井義樹、石川俊祐、石原 和、泉家亮太、井口 理、岩崎亜矢、岡村雅子、小川信樹、小田健児、金箱洋世、木村健太郎、窪田新、小山真実、佐々木康晴、嶋浩一郎、杉山元規、鈴木佳之、関谷アネーロ拓巳、多賀谷昌徳、田中直基、谷脇太郎、張ズンズン、出村光世、中島琢郎、萩原幸也、平井孝昌、細田高広、松宮聖也
  • ▼AI活用の前に理解しておきたい
  • 国・地域で異なる「文化的価値観」
  • (文:渡邉寧)
  • ▼審査員と応募者双方の視点からひも解く
  • 企画の見方
  • 八木義博
  • ▼海外アワード2023日本の受賞作品
  • ▼ヤングカンヌレビュー
  • 受賞へのあと「一歩」は?
  • 【AITOPICS】◎新コーナー
  • ・調査
  • クリエイターのAI活用実態調査262人の答え
  • ・OPINION
  • 生成AI時代のテクニカルディレクション(文:岡田太一)
  • 【第11回BOVA】
  • 11月からスタート!
  • 【UP TO WORKS】
  • ・味の素/CookDo®オイスターソースレタス保存新聞、CookDo®オイスターソース、「奇跡の肉野菜炒め」篇、「CookDo®オイスターソース瞬間消滅レタス」篇
  • ・キリンビール/一番搾り糖質ゼロ「庭仕事のあと」篇、「フライドポテト」篇
  • ・江崎グリコ/カフェオーレ「そ、朝飲むの」篇
  • ・サントリー/サントリージン「翠(SUI)」「ホアジャオな出会い~それはもう、流行っちゃうかも~」篇
  • ・鹿屋市/ふるさとPR課「土用の『うしの日』問題」
  • ・WACK/BiSH「#BiSHからの手紙広告」
  • 【SPECIAL】
  • 注目のU35クリエイター/フラックス
  • 青山デザイン会議
  • テーマ:「怖い」気持ちをデザインする方法
  • 大垣ガク×清水崇×日比健
  • 【PICK UP】
  • フジパン「本仕込」
  • 池田模範堂「デリケアエムズ」
  • 【CONTENTS】
  • ・C-1グランプリ
  • ・CMの裏側/ハーゲンダッツジャパンクリスピーサンド「音まで贅沢」篇
  • ・デザインプロジェクトの現在/minna
  • ・今月のブックマーク/せきゆおう
  • ・STAND THE FLAG/岩手県、福岡県、鹿児島県、徳島県
  • ・心に残ったプレゼン術/雪印メグミルク
  • ・名作コピーの時間/永野弥生(電通九州)
  • ・クリエイターおすすめのブック&マガジン/クラナガ
  • ・デザインの見方/佐藤夏生
  • ・SPECIALIST NAVI/福島節(音楽プロデューサー)
  • 【連載】
  • BRAIN’SBRAIN(今月のカバーストーリー)/Ordinary People
  • QUESTION/「やっぱりこれじゃないと」リピートし続けている自分的名品は?
  • CREATIVE NEWS
  • 犬馬難鬼魅易/文:仲畑貴志
  • EDITORSCHECK/「田んぼシリーズ『水を編む-アグリロード-』」パッケージ/「鈴木三郎助全広連地域広告大賞」トロフィー/東直子『現代短歌版百人一首 花々は色あせるのね』装丁
  • エディターズブックセレクト
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