パーパスに基づく「運用方針」で 有事の企業イメージ低下を回避

SNSにおける企業の公式アカウントは、企業の認知拡大などの効果が期待できるため運用する企業が年々増えている。その一方で、「炎上」など企業イメージの低下を招くリスクも伴う。効果を最大化するために決めておくべき方針や対策について、SNSのリスク管理に詳しいループス・コミュニケーションズ副社長の福田浩至氏に聞いた。

※本記事は、『広報会議』2023年8月号の転載記事です。

企業の存在意義を示す「パーパス」を重視した企業姿勢が求められている近年。「SNSの公式アカウントもリスクマネジメントの観点から『パーパス』に紐づいた運用をする必要がある」と述べるのは、ループス・コミュニケーションズ副社長の福田浩至氏だ。

パーパスを運用の判断軸に

市場がコモディティ化し情報があふれる中で、「パーパス」の存在は企業が生活者に選ばれるフックとなる。しかしいくら社会的に意義のある「パーパス」を唱えても、企業の日常的な発信や取り組みとの矛盾が生じていると、その姿勢は生活者からすぐに見抜かれてしまう。福田氏は「企業は、公式SNSの運用を含むあらゆる顧客接点で『パーパス』に沿った行動をすることが重要です」と強調する。

そこで公式SNSの運用においても、「パーパス」に紐づいた「運用方針」の策定が重要となる。こうした方針があると、投稿内容やSNSと連動したキャンペーンを企画する際に「自社がこれを実施(投稿)する意味はあるのか」とパーパスに立ち返って検討することができる。すると、生活者に企業のパーパスを示す機会になるだけでなく、企業イメージを低下させるような炎上も防ぎやすくなるのだ。

「SNSを活用したキャンペーンの企画段階でも、『“パーパス”の実現につながるのか』という視点があれば、生活者が嫌悪したくなるような、的外れな企画は生まれないはず。また仮にSNSユーザーが、企画側の意図と異なる観点でネガティブな反応を示し、想定外の炎上が起こってしまったとしても、自社がなぜこの施策を実施したのか、パーパスに基づいて理路整然と説明ができれば、賛同あるいは理解を示してくれるユーザーは少なくないと思います。ひいては、炎上の緩和・沈静化につながりやすくなるでしょう」(福田氏)。

“バズ”に偏らない施策を

一方、自社の「パーパス」と関連性がない、例えば“バズ”狙いに偏ったキャンペーンなどは一度炎上すると鎮まりにくい。例えば、数年前に起きたストッキングメーカーの炎上。発端は、企業のキャンペーンの一環で、Twitterの公式アカウントにストッキングを着用した露出の高い女性のイラスト数十点を公開したこと。「性的搾取」と非難が寄せられ、大炎上に発展した。

主要顧客が女性であるにもかかわらず、その女性から指摘を受けるようなキャンペーンが実施された要因として、その施策によって何を目指したいのか、パーパスや、ビジョン・ミッションと照らし合わせた視点が抜け落ちていたことが考えられる。

「炎上」そのものは不可抗力で起こることもあるが、企業イメージの低下にまで発展させないためには、投稿や施策を構想する段階から「パーパス」を基軸にした運用方針が欠かせない。

反応に合わせた対応を

では仮に炎上してしまった場合、具体的にどのような観点で対応をすれば、企業イメージの棄損を回避できるのだろうか。福田氏は「炎上のレベルに合わせて、スピーディーかつ最適な対応をすること」を挙げ、そのために求められるのは、日ごろからSNSで投稿される自社に対するユーザーの声を収集・分析する「ソーシャルリスニング」だと提言する。

「ソーシャルリスニングを日常業務に取り入れていれば、自社に関わる炎上にもいち早く気付くことができます。気付いた後には…

続きは、『広報会議』2023年8月号でお読みいただけます。

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