どうやらユニクロが展開するTシャツブランド「UT」と人気アニメ『チェンソーマン』(MAPPA)のコラボレーションを伝えるプロモーションのようだ。カメラを向ける通行人が後を絶たず、周囲の生活者に衝撃を与えた本施策。アイデアはどうつくられ、実現まで至ったのか。
- ※本記事は、月刊『販促会議』10月号「悔しい、けど上手い。プロモーション・アイデア」特集に掲載されています。
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ユニクロ
グローバルマーケティング部
UTマーケティングチーム
マーケティングメンバー
山内 潤氏
“2つの初めて”を伝えるセンセーショナルなニュース
「ぶった切られた巨大ユニクロロゴ、突如現る」。2023年7月19日、原宿のWeWork前を通りかかった通行人に配られたのは、衝撃的なタイトルの「号外」。発行元は、ユニクロだ。
そしてビルの前には刃物で切られた形跡が残る巨大なユニクロのロゴキューブが設置され、黄色の規制線で囲まれている。誰が、どこからどう見ても、ただ事ではない事件性さえ感じさせられる。
この突如現れたオブジェや配布された号外は、ユニクロが展開するTシャツラインナップ「UT」とMAPPA制作の人気アニメ『チェンソーマン』のコラボレーションを伝えるプロモーションを目的に実施されたもの。UTや『チェンソーマン』のファンに限らず、周囲にいた通行人も巻き込んだ大胆な施策だ。
企画を担当したのは、ユニクロ「UT」のグローバルマーケティング部UTマーケティングチームに属する山内潤氏。このセンセーショナルなプロモーションはどのようにでき上がっていったのか。
山内氏によると、今回の企画の狙いはUTにとっての“2つの初めて”を訴求することだったという。“2つの初めて”とは、何だったのか。ひとつは、2022年にUTのクリエイティブディレクターに就任したコラージュアーティストの河村康輔氏による、今期“初めて”のコレクションであること。そしてもうひとつは、UTと『チェンソーマン』とのコラボレーションが“初めて”であることだった。
「今回のプロモーションでは、“2つの初めて”を日本だけではなく、世界的なニュースとして打ち出せるインパクトのあるものに仕上げたいと思いました。UTにとっても、この“2つの初めて”は大きなニュースです。今までとは違う見せ方で、センセーショナルさを表現したいと考えていましたね」(山内氏)
コンセプトは「事件」どうすれば表現できるのか
山内氏が話す「センセーショナル」こそ、今回の企画のコンセプト。生活者が思わず立ち止まってしまうような「事件」の匂いを感じさせるものにしようと考えたという。
「僕は『チェンソーマン』のファンなのですが、物語を見てもわかるように、悪魔による事件があらゆる場所で起きるのがストーリーにおけるひとつの特徴だと思っていました。『チェンソーマン』の世界観を私たちが住む現実世界に落とし込むことができたら、日常の中で『チェンソーマン』がいる世界観を感じさせることができるのではないか。そんな考えのもと、できたのが『事件』や『センセーショナル』というコンセプトでした」(山内氏)。
コンセプトの決定後は、いよいよアウトプットとしてクリエイティブを制作し、実現させていかなければならないフェーズに差し掛かる。この企画では、WeWorkのエントランスに巨大なユニクロのキューブがチェーンソーでぶった切られ、地面に落とされていた。周りには赤のコーンと黄色の規制線が張られ、いかにも“事件現場感”を匂わせる。なぜ、このようなクリエイティブでのアウトプットに至ったのか。
「コンセプトが決まった後、まず考えたのは、“何を、どのように表現すれば事件になるのか”ということでした。単に事件と言っても、今回はわくわくも醸成させなければなりません。つまり、“何があったんだ?” と振り向かせると同時に、楽しくなってもらう必要があるわけです。そこで徹底したのは、妄想。自分の感情を、限りなく生活者の気持ちに近づけることでした。妄想は今回に限らず、何かを企画する際には必ず行っています」(山内氏)。
自分を限りなく生活者に近づける妄想が企画のタネになる
企画を考える段階で山内氏が心掛けているのは、先述の妄想。ファンの視点に限りなく自分を近づけ、クリエイティブを見た人がアクションする様子を徹底的に考えることだ。
「僕だったら――、」
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