「imma」から学ぶ、消費されないIPコラボの秘訣と可能性

ピンクのショートヘアがチャームポイントのバーチャルヒューマン「imma(イマ)」は、2018年に生まれ、SNSを通じてファンを増やしてきた。今ではファッションブランドを立ち上げたり、ファッション誌で特集されたりと、国内外で活躍の場を広げている。IPを育てる上で重視してきたことをimmaの生みの親に聞いた。

(本記事は月刊『ブレーン』10月号の特集「ファンと共創で育てるSNS発キャラクター コラボ設計と活用」の掲載記事からの抜粋です)。

互いのブランドに寄与する関係性

「imma」が生まれて初期に多かったのは、既にバーチャルヒューマンが生まれていた南米や北米のファン。そこから最近ではインドや東南アジア、オセアニア地域でファンを増やしている。InstagramやTikTokなどSNSの総フォロワー数は100万以上。主なファン層は、CG表現にも親しみのあるZ世代で、男女はほぼ同じ割合だ。

immaは誕生以来、「東京2020 パラリンピック」の閉会式への出演や、最近ではファッション誌『Harper’sBAZAAR』台湾版で表紙を飾り36ページの巻頭特集を組まれるまでに。2023年8月には自身のブランド「Astral Body」を立ち上げるなど活躍の場を広げ、アジアを代表するバーチャルインフルエンサーへと成長している。

写真 表紙 arper's BAZAAR 台湾版400号 モデルimma

2023年6月1日に発売されたファッション誌『Harper’s BAZAAR』台湾版400号では、「imma」を表紙モデルに起用。インタビューを含む36ページの特集が組まれた。

注目度の高さから、これまでも多様な企業の広告に起用されてきた。直近では6月から野村ホールディングスの「新NISA」訴求のための広告に出演するなど、国内でも露出の機会を増している。

写真 広告 野村ホールディングス モデルimma

野村ホールディングスは「新NISA」訴求のための広告にimmaを起用。

どのようにその魅力を高めてきたのか。immaの生みの親であるAww(アウ) 代表取締役の守屋貴行さんは、企業とコラボする上で重要なのは「消費されないこと」だと話す。

「企業のプロモーションにimmaが“起用”されるのではなく、企業とimma、お互いのブランドに寄与するコンテンツに仕立てることを重視しています。immaは実体がない分、方向性を私たちがきちんとコントロールしないと、PV数などただの数字集めのために使われ、消費されて終わってしまう。そのためimmaが表現したいこと・進みたい方向性が先にあり、それと企業が目指す方向性が重なり、互いにとってメリットのある企画であることが重要です。さらに消費者の目も厳しくなり、ただのコラボ広告では見てもらえないので、きちんとマーケティング効果も得られるコンテンツに仕立てることも心がけています」。

IPの“らしさ”をどう生むか

しかし、バーチャルな存在の“らしさ”をどう生んでいるのだろうか。immaの場合は、その思考や行動の指針となる膨大な量の、基本のシナリオが存在する。それを運営チームメンバーそれぞれに憑依させ、さらにそのメンバーたちの意志が重なることで、immaの“らしさ”が生まれている。時が経つにつれメンバーの思考も変わるので都度アップデートされていき、その思考や行動に共鳴したファンが増えていく、といった形だ。この過程に、現時点ではAIは用いていない。「重要なのは、“この子にこうさせたい”と思うのではなく、“この子ならどうしたいか”と考えられるまで、運営チームが落とし込むことです」と守屋さん。

一方で、人間のように解像度が高く複雑な存在だからこそ、IPとしては成長しづらい側面もはらんでいるという。「IPビジネスにおいては、誰もがそのキャラクターの性格や人間性を知っている状態をつくることが重要です。『サザエさん』だったら誰もがキャラクターや人間関係がわかりますよね。でもimmaの場合は、たとえば『スター・ウォーズ』のように膨大で綿密な世界観やキャラクターの設定がないと、誰もが『immaの性格はこうだよね』と語れるようにはならないと思うので、いつかそこに辿り着くことを目指しています」。

自律型バーチャルヒューマンの実現へ

最近では、さまざまな企業から自社のバーチャルヒューマンの制作を依頼されることがかなり増えているという。「当社では現在は受けていないのですが、自社IPを持ち、それがさまざまなプラットフォームに進出していくことで、新たな認知やビジネスを生む、というモデルを理解し、実践したい企業が増えているのだと思います」。(・・・この続きは月刊「ブレーン」2023年10月号にてお読みいただけます)

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  • この後のトピック
  • ・imma×Amazon Fashionのサービス「The Drop」
  • ・生成AIを活用した自律型バーチャルヒューマンの実現へ

月刊「ブレーン」2023年10月号

写真 書影 月刊「ブレーン」2023年10月号
  • 【特集】
  • 共創で育てる魅力
  • SNS 発キャラクター
  • コラボ設計と活用
  • ・OPINION
  • IP ビジネス全盛期 他の企画との差を生むコラボの極意とは?
  • 村上絵美(ADKマーケティング・ソリューションズ)
  • 拡大する日本のSNS キャラ活用 海外にも商機
  • 水野和寛(Minto)
  • ・REPORT
  • ディー・エル・イー「秘密結社 鷹の爪」
  • ケイコンテンツ「マリマリマリー」
  • Kumarba「クマーバ」
  • BUSON「しきぶちゃん」
  • Aww「imma」
  • ■AI TOPICS
  • ・REPORT
  • Immersive Museum
  • 「Your Portrait by Vincent van Gogh」
  • オレンジ・アンド・パートナーズ
  • 「ORANGE AI」
  • ・OPINION
  • 生成AI 時代のテクニカルディレクション
  • 岡田太一
  • ・UP TO WORKS
  • ユニクロ/ UT「チェンソーマン × 河村康輔UT」
  • サントリーホールディングス/ザ・プレミアム・モルツ「すず&NEW」
  • クラシエホームプロダクツ/いち髪「いち髪 絹髪のちから」篇
  • 大塚製薬/ポカリスエット「ポカリCM制作フェス! 参加者のことば」
  • CHARIS & Co. など10 社/世界水泳選手権2023福岡大会
  • 応援広告「さあ浮上しよう、瀬戸大也。」
  • 小学館/漫画『トリリオンゲーム』「挑戦状広告」
  • サントリーホールディングス/ジムビームMV『解放カーニバル』ORANGE RANGE
  • ライゾマティクス/ Fencing Visualized Project「Fencing Visualized Data Archive」
  • 関西学院大学法学部/オープンキャンパス「HELLO STUDENT展
  • 受験生に贈る100枚のメッセージポスター」
  • ・SPECIAL
  • 注目のU35 クリエイター/フラックス
  • ■青山デザイン会議
  • テーマ:新しい教育のデザイン
  • 伊藤直樹×岩﨑千佳×手塚貴晴・手塚由比
  • ・PICK UP
  • メルカリ/10 周年サイト
  • KDDI(au)/ANYTEAM
  • ・CONTENTS
  • TCC 賞2023 新人賞レポート
  • C-1 グランプリ
  • コピーライター養成講座 課題制作レポート
  • CMの裏側/コーセー 雪肌精
  • 「SAVE the BLUE」プロジェクト
  • デザインプロジェクトの現在/中村竜治
  • 今月のブックマーク/新村卓宏( アマナ)
  • STAND THE FLAG/鳥取県、香川県、大阪府、栃木県
  • 心に残ったプレゼン術/ニコン
  • 名作コピーの時間/細川万理( ADK マーケティング・ソリューションズ)
  • クリエイターおすすめのブック&マガジン/せきしろ( 作家/俳人)
  • デザインの見方/清水恵介
  • SPECIALIST NAVI/元川益暢( キャスティング)
  • ■連載
  • BRAIN’S BRAIN(今月のカバーストーリー)/Martina Paukova
  • QUESTION/幼い頃グッズを集めていたキャラクターは?
  • CREATIVE NEWS
  • 犬馬難鬼魅易/文:仲畑貴志
  • EDITORS CHECK/
  • 「AOAO SAPPORO」(青々)/Dos Monos『Don’t Make Any Noise 』(Dos Monos)/田中幸・結城千代子『道具のブツリ』(雷鳥社)
  • エディターズブックセレクト
  • CREATIVE NAVI
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