パーパスやミッションといった、企業の方針やメッセージを新たに打ち出すにあたり、コーポレートサイトのあり方を見直す企業も少なくない。
出前館では2022年1 月に、新しく「ミッション:テクノロジーで時間価値を高める」「ビジョン:地域の人々の幸せをつなぐライフインフラ」「バリュー:ホスピタリティ・チャレンジ・クリエイティビティ」を策定した。これらは、2025年、2030年の出前館が、フードだけではなく日用品やヘルスケアなどの即時配送といった幅広い領域でライフインフラとして機能し、テクノロジーの力で時間的価値を提供するという想いのもと、刷新した。“時間的価値”とは、「エンドユーザー」であれば、デリバリーを利用することで自分の時間を確保して活用でき、「配達員」にとっては自身のタイミングで稼働ができる、「加盟店」であれば、新型コロナの影響もあった中で来店以外の顧客を獲得し、時間当たりの注文数を増やすなど、各ステークホルダーへの提供価値を表している。
これらの提供価値を視覚的に表現し、ステークホルダーに“出前館とは” を伝えるため、同社はユニットベースとの共創プロジェクトにより、コーポレートサイトのリニューアル実施に至った。
デザインをとことん“言語化”
プロジェクトのスタートは、MVVの刷新と同じく2022年1月。今回のプロジェクトの肝となったのは、“サイトコンセプト” の設定と、そのコンセプトを表す“トップページ” の見せ方であった。
「まずは、出前館さんにMVVに込めた想いや中長期的な事業戦略、プロダクトのアップデート計画などをヒアリング。そこから、ステークホルダーへの提供価値が何によって構成されているかを整理し、サイトのデザインに含まれているべき表現を細かく言語化しました」とユニットベースの宮内一政氏は話す。具体的には、出前館の3つのバリューのひとつ、「チャレンジ」であれば「クイックコマース事業への参入」「ライフインフラの形成」といった事業活動が含まれるため、これらを表現するには「大胆さ・力強さ・変化」といった知覚表現を表すキーワードが適切であると言語化。このように様々な角度から表現の言語化を行うための議論を何度も実施し、「打ち破る」というサイトコンセプトを作成した。
「打ち破る」というコンセプトについて、出前館 プロダクトマネジメント本部 コンシューマー企画部の織笠愛生氏は、「他社のコーポレートサイト事例などを見て研究することで、出前館の社内でも、デザインのトレンドを掴むことはできるのですが、いかに“出前館らしさ” を加えるのかが困難でした。共創によって提案いただいた『打ち破る』というコンセプトは、まさに当社が目指すものを正しく言語化してくださったと感じました」と話す。
プロジェクトのもうひとつの肝であった、トップページのビジュアルについても、この「打ち破る」というコンセプトを基に、「スマホ画面(=出前館のサービス)を通ることで、人々がアップデートされる」というデザインイメージをお互いにアイデアを出し合いながら固めていった。
社内合意を得るアプローチ
企業の顔とも言われるコーポレートサイトのリニューアルは、その企業のトップを含む、上層部の決裁が必要となるケースも多いだろう。社内で確実に合意を得ることができるか否かは、その後のプロジェクトの進捗に大きな影響を与える。今回のプロジェクトでは、「コンセプト」と「トップページのビジュアルイメージ」が固まった段階で、出前館の代表や広報、IRの責任者などからの決裁を得て、認識を合わせることで、その後のプロセスがスムーズに進行したという。
「決裁をとるためには、まずは上層部に提案する出前館側の担当者と、ユニットベースさんの間で認識が合っていることが必要不可欠でしたが、実際に動作し、イメージしやすくなるモック画面や、当社の想いを汲んでデザインを言語化した資料を共同で用意できたことで、認識がずれることなく進行できました」と織笠氏。これに対し、ユニットベースの木村詩音氏は、ユニットベースではデザイナー職以外の人が見てもイメージが正しく伝わることを重視し資料を作成していると話す。資料は、出前館社内での確認にも使用され、皆が同じイメージを共有することで、余分な手戻りの発生を防ぐことができた。
コンセプトを大切にする意義
言語化によって生まれた「打ち破る」というコンセプトがあったからこそ、様々なステークホルダーが関わる長期プロジェクトでもチームの認識がブレずに、正しくミッションを可視化できたという。クリエイティブの満足度だけでなく、2023年1月に公開したコーポレートサイトは、リニューアル前と比較し、アクティブセッション率が約250%改善。「これは、トップページからの離脱が減り、閲覧者が適切なページにたどり着けていることの表れだと考えています」と織笠氏はリニューアルによる効果を語った。
企業の方針や社会貢献活動にも注目が集まる昨今。デジタル上でその企業に関心を持つ人が多く訪れるコーポレートサイトで、企業のメッセージや目指す方向を示し、ステークホルダーに適切な情報を届けることは、今後ますます重視されそうだ。
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