企業理念の策定から着手
─ギブリーがコーポレートサイトを刷新した背景を教えてください。
吉田:当社では当時、社内体制が事業部ごとに独立しており「企業の全体像を従業員自身が語れない」という課題がありました。今後ビジネス成長を加速させるためにも、縦割り感を解消し企業の一体感を高めることが欠かせません。またその一体感を社内外に示していく必要もあると考え、企業ブランディングからサイト刷新までをアンティー・グループさんに依頼しました。
水野:当社には上場を目指すタイミングなどで、「企業理念などの思いをコーポレートサイトで表現したい」という依頼も多くあります。そこで私たちは、企業の過去・現在・未来を深く理解した上で、企業アイデンティティを導き出し、それをサイトとして視覚化する役割を担っています。
吉田:私たちも、企業ビジョンなどの土台を明確にする部分から、最終的に1年ほど伴走してもらいましたね。
水野:企業のブランディングをしながらサイトを刷新するにあたり、当社には5つのステップからなる独自メソッドがあります(図)。このメソッドは、企業自らも気付いていない思いや展望を具現化するためのものです。ただサイトの制作に実際に着手するのはステップの4つ目。工程の半分以上を費やすほど企業アイデンティティ策定の重要性は高いのです。この工程を経て表出した「企業らしさ」をサイトに落とし込んでいくイメージですね。
図 サイトリニューアルの5つのステップ
「ありたい姿」を徹底言語化
─サイトリニューアルで最も大変だったことを聞かせてください。
吉田:ありたい姿を言語化し、企業アイデンティティの方向性を決めるのに苦労しました。水野さんには役員を中心に取材やワークショップなどをしていただきました。中でも、代表取締役社長の井手(高志)に「企業として何を実現したいか」と何度もインタビューされる姿が印象に残っています。
水野:当社では「その企業らしさ」の、本質を引き出すためにインタビューを重ねることが多くあります。依頼時には「その企業らしさ」が明確になっていないこともありますが、本来はどの企業も固有の魅力が存在すると感じていて。深掘りすると、胸が熱くなるくらいのストーリーが必ず見えてくるのです。ただそれは第三者だからこそ引き出せる部分でもあると考えています。
吉田:第三者の視点がなければ、自社のビジョンに向き合う機会もなかなかありません。半年以上にわたり「自分たちは何者か」について問われ続け、導いてもらったと感じています。
水野:今回は、各事業が紐づくような企業アイデンティティの構築が課題でしたので「マニフェストのような企業サイト」をクリエイティブコンセプトに設定。サイト構造についても「自分たちは何者か」が伝わるユーザー体験を目指し、情報を整理していきました。
吉田:2つ目のステップにあたる、企業のブランドパーソナリティを決めていく過程では、企業を人に例えて考えていく過程も印象的でした。
水野:当社独自の手法として企業の擬人化があり、ギブリーさんの場合もキャラクターなど複数人に例えました。人物に例えると、自然とブランドのビジュアルイメージが見えてきます。そのイメージをさらに具体化し、最終的に1枚のイメージボードに落とし込むことで、リニューアルに携わる担当者全員の共通認識となります。制作時に立ち戻る指針として、その後も迷うことなく円滑な進行が叶うのです。
サイトだけでなく企業が変わる
─サイトリニューアルによる成果や反響を教えてください。
吉田:サイトリニューアルと並行して、社内では新たに策定したビジョンなどを、従業員に説明する機会を随所に設けました。結果として、2022年1月のサイトローンチ以降は社内の縦割り体制という当初の課題が解消。また従業員がサイトに掲載されている言葉を引用しながら、自社について語れるようになり、企業ビジョンのもとに各事業が成り立っている構造理解も浸透しました。変化はサイトだけでなく、ビジョンからビジネスモデルに至るまで、企業自体が変わったと言えるほどです。
水野:ビジョンから組み立て直すことで経営方針もクリアになり、サイトで表現した「ありたい姿」に向かって組織の実態が変わっていく。その様子を私も間近で感じています。もちろん、サイトリニューアルのご相談によっては、経営理念などがすでに固まっている企業もあります。その場合でも、ブレのない耐久性のあるサイトにするには、企業アイデンティティのビジュアル化を行うことが重要です。企業アイデンティティの構築というと、ロゴ策定を連想する人もいると思いますが、いまやコーポレートサイトこそ企業アイデンティティの具現化と言えるほど存在感が増しています。効果的なコーポレートサイトには、企業の「ありたい姿」とビジュアルコミュニケーションの一貫性が欠かせなくなっています。
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