IPRN年次総会はAGM(Annual General Meeting)と呼ばれています。1年に一度の開催で、メンバーは五大陸にまたがる30か国以上から集うこともあります。
開催時期は例年、10月下旬から11月上旬。
メンバーによる最新のPR活動事例の紹介やゲストスピーカーによる講演などが行われ、メンバー同士の親睦を深めるための現地ツアーやパーティも実施されます。
昨年の年次総会はコロンビアのカルタヘナで開催されました。一昨年はポルトガルのリスボン、その前は新型コロナウイルスの流行に伴って、ビデオ会議を使ったバーチャルでの開催でした。
2023年の年次総会は米国自治領プエルトリコの首都、サンファンで開催され、19の組織から25人が参加しました。現地プエルトリコの主催企業からは複数の発表者や運営スタッフが参加しており、総勢では40名近くが、10月28日から30日の3日間の年次総会に参加したことになります。
プエルトリコ(Puerto Rico)は略すとPR、つまり、PR活動の年次総会開催地としてはベストな場所ですね。
14カ国のPRパーソンが集結
国別(五十音順)で見ると、アメリカ合衆国(5社)、アルゼンチン、カナダ、コロンビア、スイス、スペイン(3社)、ドイツ、チェコ、チリ、日本、プルトリコ、ブラジル、ベルギー、ポルトガルからの参加がありました。
アジア地域からは私一人の参加になったわけですが、例年はインドや香港、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、南アフリカなどからの参加もあるとのこと。AGMの開催地や日時によって、メンバーの参加しやすさが特に費用面で変わる点については、課題として挙げられていました。ちなみに来年のAGMは、アラブ首長国連邦の都市、ドバイでの開催が予定されています。
年次総会の意義について、IPRN代表のロドリゴ・ヴィアナ・デ・フレイタス氏(ポルトガル)は以下のように述べています。
「IPRN年次総会は、メンバー間のネットワーキング(関係構築)にとって1年で最も重要な期間です。コミュニケーションの世界的なトレンドやベストプラクティスについて、経験、事例、ディベートを交換する3日間です。世界のさまざまな地域からCEOが集まり、現在と未来への懸念と解決策を話し合う刺激的な会議になります。メンバー間の協力関係を強化し、ますます効果的で効率的なコミュニケーションのための、新たな目標とビジョンを明確することができます」。
IPRNの前代表であり、創設当初からIPRNに参加、今年の年次総会で名誉会員第1号になったルイス・ゴンザレス・カノマニュエル氏(スペイン)によれば、IPRN年次総会の意義とは、「ローカルなものをグローバルな場で共有して、ローカルに持ち帰ること」とのこと。
筆者が参加して一番印象に残ったのは、この「ローカル(現地)なものをグローバルな場で共有して、ローカルに持ち帰る」プロセスの意義でした。これは知識、経験、ノウハウだけでなく、対面でのネットワーキングを通じて得られる信頼や尊敬、評価や自信なども含まれます。これらの収穫は、たいへん大きなものに感じます。
実際に、筆者が当社KMIについて紹介する20分ほどのプレゼンテーションを行った後には、多くの参加者から「発表がよかった」との声をかけてもらえました。
会期中は、聞く側から、徐々に質問やコメントを投げかける側へと回るようになり、自分の役回りの変化も感じました。こういったやりとりの一つひとつが、日本国内ばかりに目を向けていては得られない経験となって、グローバルな知見や人間関係を活かし、国内の仕事にもつながるのだと思います。
この連載コラムもまさに、ローカルからグローバルに、グローバルからローカルに持ち帰ったものの、副産物ですね。
初日の大半は、IPRN経営体制についての議論ですが、その後はメンバーによる発表やゲストスピーカーによる講演が続きます。メンバーにとっては、毎年のIPRNアワードへのノミネートとプレゼンテーション、そして最終日の受賞発表が、参加の大きなモチベーションになっています。
IPRNアワードのカテゴリーは、メディアリレーションズ、デジタル/インフルエンサーマーケティング、レピュテーション/クライシスコミュニケーション、コンテンツ/出版物、イベント/動員、映画/動画、統合的キャンペーンの7つです。3つのカテゴリーまでは1つのエントリーで同時にノミネートが可能です。
次回の連載からは、今年のIPRN年次総会で発表された世界中のPR活動ベストプラクティスの中から、選りすぐりのものを紹介していきます。グローバルで評価されている活動を知ることで、自社のPR施策を企画する際のヒントにしてください。