花王の飲料ブランド「ヘルシア」が発売20周年を迎え、パッケージの刷新をはじめとするリブランディングを開始した。
2003年に発売開始した「ヘルシア緑茶」の名前の由来は、“ヘルシーをアシストする”。花王唯一の飲料ブランドとして、機能訴求を中心としたマーケティング戦略で展開してきた。
ヘルシアのブランドマネージャーを務める花王 ライフケア事業部門ヘルス&ウェルネス事業部の柳田雄一氏は、今回のリブランディングの経緯についてこう話す。
「『ヘルシア緑茶』は体脂肪を訴求するお茶として初めての特定保健用食品で、販売から最初の10年間は好調でした。しかしこの10年で売上げが急落。競合商品が続々登場し、2015年には機能性表示食品の制度がスタート。現在は類似の効果を持つお茶は20ブランド程にまで拡充しています。こうした中で同質化していき、お客さまとのエンゲージが失われていったのだと分析しています」(柳田氏)。
特性上、効果実感が1度では分からない、継続使用が前提の商品であることもネックだった。
「例えば清掃用品なら“汚れが落ちてきれいになった”と、継続購入の理由が分かりやすい。効果を実感し、その後も選び続けてもらうには、ただ店頭に置いているだけでは手に取ってもらえない。“商品をどう売るか”ではなく“この商品を手に取ったお客様が本当に健康になるためにはどうしたら良いのか?”という発売当初のマインドに力点を置いたマーケティングの模索がスタートしました」と柳田氏は話す。
さらに調査では、生活者から「ストイックな人が飲む特保茶」「鬼教官のよう」といったイメージを持たれていた。
「“効くから飲み続ける”という動機を持ってもらうことは非常に難しい。そこで、“ヘルシーライフに寄り添ってくれる”という親しみやすさを先に持っていただきたいという方法に切り替えました」(柳田氏)。
そこでリブランディングでは、より日常の健康習慣に寄り添い応援する、「親しみがあり かつ 頼りがいのある存在」へとシフトするコミュニケーションをスタートさせた。
第1弾として、2023年春に大江戸線六本木駅の階段に広告を出稿した。“日本一深い”地下鉄で階段を利用する人に向けて、ヘルシアがエールを送るというもの。「いいぞ!いいぞ!その調子。」をコピーに、ヘルシアが転んだり列から外れたりする姿を描いた。
「この施策以降、愛着を感じてもらえたようなコメントが増えました」と柳田氏は振り返る。
そして11月1日、パッケージの大幅刷新と共に、テレビCMとデジタル広告の放映、都内での電車ジャックを実施した。
新CMでは、ヘルシーライフを応援する存在として3体のキャラクターが登場。ヘルシアの機能説明だけでなく、ヘルシーライフを楽しく盛り上げながら応援していく存在として設定した。声の出演には声優の黒沢ともよさん、俳優の竹井亮介さん、武谷公雄さんを起用。キャラクターたちを通した会話劇を通して、人々の健康習慣に寄り添う姿勢を打ち出す。
都内8路線で実施した電車ジャックでは、健康行動の周辺に存在する「あるある」や「本音」を題材に、ヘルシアたちによるチャーミングな応援メッセージを中づり広告・窓上広告に掲出した。
CDを務めたのは電通の島津裕介氏、コピーライターは電通の伊藤みゆき氏だ。
島津氏は、「クリエイティブのゴールとして、好きだから長く付き合っていけるという立ち位置をつくりたいと考えた。コミュニケーション投資がすべて商品に蓄積されていくように、タレントを起用せず、ヘルシアそのものをキャラクター化。完璧な存在というよりは、隙があったり、伴走してくれるような人格として認知される存在を目指しました」と話す。
伊藤氏は、「背中を強く押すというよりは、隣にいてちょっと支えてくれるようなイメージ。ツッコみどころ、肩の力が抜けるような感じで言葉をつくっていきたいと考えました」と話す。
車内広告では、“ハンガーかけになっていたサイクリングマシンに再び電源を入れたあなた”など、応援する相手を細かく設定し、エールを送る。
「議論したのはヘルシアの人格として『応援』という言葉をどの程度使うのがいいか。電車内で囲まれた時にプレッシャーにならないよう、チャーミングさが出るビジュアルとコピーワークにこだわりました」(島津氏)。
花王の柳田氏は、「健康行動そのものを楽しいと思ってもらえる、サービスも含めたソリューションを提供できるブランドになっていきたい」と展望を語る。今後はLINEロイヤリティプログラムを開始するなど、ユーザーのファン化・ロイヤリティ化を図っていく方針だ。
また11月13日からは、RIZAPが展開するコンビニジム「chocoZAP(チョコザップ)」とのコラボレーション企画をスタートさせた。第一弾「ちょこっとヘルシーDays」キャンペーンでは、chocoZAP有料会員を対象にしたサンプリングを実施。LINEスタンプラリーや、100日間の体の変化を振り返るレポート提示を行う予定だ。