※『広報会議』2024年3月号の記事を転載しています
「創造は生命」というグループバリューのもと、様々なゲームコンテンツやサービスを提供しているセガ。2012年に立ち上げたX(旧Twitter)の公式アカウントは現在約55万のフォロワーから支持されており、ユニークな投稿内容が話題になることも多い。
Xをはじめとして、セガのSNS公式アカウントを10年以上にわたって担当しているのは、SNSの「中の人」こと広報部副部長・山田愛氏。メディア広報、社内広報に従事しながら、SNS上を通じた企業ブランドの向上や顧客との関係強化を行い、セガが運営する公式アカウントのアドバイザーも務める。山田氏は「製品をつくって終わりではなく、その先のお客様の笑顔をつくりたいという気持ちを、SNSでも伝えていきたいです」と話す。
セガの採用活動では、新卒・中途ともにグローバルで活躍できる多様な人材の採用に注力している。「自社にカルチャーフィットする優秀な母集団の形成」を目標に、より多くの入社希望者の獲得を目指す。採用広報活動におけるSNSの有用性について、山田氏は次のように語った。
「就活生は『自分らしく活躍できる現場で働きたい』という志向が強く、企業を選ぶ上で働きがいや職場の雰囲気を重視する傾向にあります。また、デジタルネイティブ世代にとって、SNSは身近な情報源として不可欠な存在であり、企業情報の収集にも積極的に活用しています。ホームページ上では伝わりづらい社風・臨場感も、SNSのタイムリーな投稿ではリアルな質感を伴って伝えることができます。SNSで長期的に誠実な投稿を発信し続けた実績は、企業の信頼獲得につながり、入社希望者の増加にもつながると考えています」。
注目を集めた投稿では、どのような工夫がなされていたのだろうか。Xセガ公式アカウントの2021年6月投稿の内容は、ゲーム開発に用いられている数学の社内勉強会用資料を、一般に無料公開するというもの。「線形代数」という専門的な内容でありながら、技術者以外も興味を持ちやすい語り口調の投稿で幅広い読み手の関心を引いた。
投稿と併せて、資料概要を解説した記事をエンジニア向けのセガの技術ブログ「SEGA TECH BLOG」で公開。エンジニアを募集していることを知らせる投稿も続けて行った。
「一般のお客様が知りたいのは、『へぇ〜』と思えること。技術者ならばゲーム業界がどんなところか、入社後も成長できるかが気になるはずです。一方でセガとして伝えたいのは、ユニークな会社であること。そして特に技術者に対しては、技術力があること、入社後も技術の学びを深められることを知ってほしいと考えています。発信する側と見る側の間を埋めていくことが、SNS担当者や広報担当者の役目だと考え、数学ってゲームに役立つんだと思ってもらえる投稿をしました」と山田氏。
資料の読者層からは「このボリュームと内容が無料公開されているのが凄過ぎる」などの声が寄せられた。本投稿は1.9万リポストと3.2万いいねを獲得し、投稿自体がネットニュースにも取り上げられた。
「発信する側の『伝えたいこと』と見る側の『知りたいこと』がマッチした投稿を長期にわたって誠実に続けることが、会社としての信用にもつながっていくと考えています」。
セガ
広報部 副部長 山田 愛氏
X(旧Twitter)をはじめとするSNSセガ公式アカウントを2012年より担当。企業広報に従事する傍ら、SNSを活用したレピュテーションの向上や顧客との関係強化、採用広報に携わり、硬軟織り交ぜた情報発信を積極的に展開中。
広報会議2024年3月号
特集 話題を生み出す 情報発信のアイデア
- STEP1 2024年のメディアの関心を知る
- メディア注目のキーワード45選
- 自社とつなげて広報企画の切り口に
- STEP2 社会課題や生活者の意識の変化を掘り下げる
- 座談会
- 高まる人々の「セルフケア」意識
- 新しい自分を発見するサポートが鍵
- 座談会
- 新たな働き方に関する広報
- 制度導入時は背景をいかに語れるかが鍵
- STEP3 社会の関心事と自社のメッセージを掛け合わせる
- 社内に眠るニュースバリューの高いネタを発掘
- パブリシティが増える広報企画に仕立てるには?