シティプロモーションを通じ、まちづくりのあらゆる分野にPRマインドが広がる可能性 「自治体広報の仕事とキャリア」リレー連載 宇都宮萌(福知山市)

広報、マーケティングなどコミュニケーションビジネスの世界には多様な「専門の仕事」があります。専門職としてのキャリアを積もうとした場合、自分なりのキャリアプランも必要とされます。現在、地方自治体のなかで広報職として活躍する人たちは、どのように自分のスキル形成について考えているでしょうか。本コラムではリレー形式で、「自治体広報の仕事とキャリア」をテーマにバトンをつないでいただきます。東京都利島村の中川晃介さんからバトンを受け取り、登場いただくのは京都府福知山市の市長公室秘書広報課シティプロモーション係 係長の宇都宮萌さんです。

写真 人物 プロフィール 京都府福知山市 市長公室 秘書広報課 シティプロモーション係 係長 宇都宮萌氏

京都府福知山市
市長公室 秘書広報課
シティプロモーション係 係長
宇都宮萌氏

民間企業と公益財団法人を経て、現職。地元ゆかりの武将・明智光秀からの「謀反のお知らせ」、市民参加型企画「福知山の変」など、市民やクリエイターと協働するPR企画を多数手掛ける。全国広報コンクール特選、シティプロモーションアワード金賞、CAMPFIREアワード特別賞、PRアワードブロンズなど受賞。月刊ブレーン×東京コピーライターズクラブ「C-1グランプリ」初の自治体コラボに、福知山市側の担当者として参加した。


Q1:現在の仕事内容について教えてください。

はじめまして、京都府福知山市役所の宇都宮と申します。私の仕事は「シティプロモーション」です。市内外に市のファンをつくることを目指したコミュニケーション活動を行っています。

具体的には、市の資源や事業を生かしたPR戦略と戦術の立案・実行、メディアリレーションズ、SNS運営などを、他部署や市内外のステークホルダーと連携しながら進めています。

実データ グラフィック 京都福知山市の地図と眺め

ここで少し、自分のまちの紹介を挟ませてください! 人口は約7.5万人。京都・大阪・神戸の各市から北に1時間~1時間半ほどでアクセスできる、京都府北部の丹波地方にあります。すべてが“ほど良い”ので、市民から全国の人にまで通じる「福知山は○○のまち」のブランディングが難しいのが、正直なところ悩みです……。

ただ一色じゃない、というのは、多様性や余白がある、と言い換えられるかなとも思います。それを表現できたらと、市民向けのブランドメッセージは「いがいと!福知山」になりました。

福知山には、意外な魅力が多いんです。例えば、スイーツや肉など自慢のグルメがあって、明智光秀を慕う城下町で、海はないけど雲海はある、住みよさランキング上位、出生率は本州3位(2.02!)、まちづくりにチャレンジする人も多い。そんな「いがいと!」なところを市民の皆さんと見つけて発信しています。


Q2:貴組織における広報部門が管轄する仕事の領域について教えてください。

広報を管轄している部署は、秘書広報課のなかにある広報係と、私が所属するシティプロモーション係です。

写真 風景 京都福知山市

広報係は、「自治体広報」と聞いて思い浮かぶ仕事はだいたい行っています。広報誌、市政情報の発信、危機管理広報……。ふるさと納税の主幹係でもあります。

シティプロモーション係の仕事の領域でいうと、PR、ブランディング、マーケティング、あと市のファンクラブを運営しているのでCRMなども入ってくるでしょうか。2018年に発足したばかりの係なので、試行錯誤しながら取り組んでいるところです。


Q3:ご自身が大事にしている「自治体広報における実践の哲学」をお聞かせください。

「挑戦と倫理観の両立」を大事にしています。

自治体は制約が多い分、何か実行する際に低いハードルでも飛べたら驚かれるというか、面白がってもらえるところがあります。やるからには市内外の方に知ってもらいたいですし、まずは困難なことに挑戦する姿勢を見せることは大事だと思っています。そして「福知山を応援したい」「自分も良いまちづくりがしたい」という思いを持つ方々と共創していきたいです。

同時に、人権尊重のまちづくりが責務である自治体の職員として、そして社会の一員として、倫理観を磨き続けて、自分の仕事に反映させることは絶対に怠ってはならないと思っています。小さいことですが、係の定例会議で事例を共有して話し合ったり、最近も改めて倫理観に照らし合わせて、進めそうになっていた内容をギリギリまで悩んで直前に変更したりしました。

自分なりに強い挑戦心と高い倫理観を両立させて、市内外の方々と共創をすることで、魅力発信にとどまらず、より良い社会を築くことにつなげる……そんな仕事がしたいと日々思っています。

写真 風景 京都福知山市


Q4:自治体ならではの広報の苦労する点、逆に自治体広報ならではのやりがいや可能性についてお聞かせください。

苦労する点は「毎年、人事異動で新しいチーム編成になるため継承が難しい」ことです。

例えば、シティプロモーション係は現在、常勤職員3名とパートタイムの会計年度任用職員1名がいるのですが、私以外は係2年目か新入職員という、かなり若い編成です。異動が常の現場では、専門性を伸ばしていくことはなかなか難しいことだなと思います。

ただ、福知山市にとって前例のない事業をする部署のため、若手や未経験者でも即戦力として活躍できることは良い点です。PRマインドをそれぞれが考えて身につけていく環境のなかで、自然とその年々のチーム感が生まれていくことがわかってきました。

そして、1年でも2年でも専門的にPRを学んで実践した職員が市役所内に“放流”されて、次の部署でPR力の高い仕事をしたり、私たちの係に別の形で関わってくれたり。他部署のPRマインドを持った職員とつながって、お互いに事業を高め合うことが増えました。そんな状況は、数年前にはありませんでした。

市役所全体、まちづくりのあらゆる分野にPRチームが広がっていくことに、自治体広報のやりがいや可能性を感じます。

写真 風景 京都福知山市

【次回のコラムの担当は?】

京都府福知山市の宇都宮萌さんが紹介するのは、静岡県富士市 シティプロモーション課 課長の秋山千賀子さんです。

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