「まじめさ」から「革新性」に求められる人材像は変わる!? 経産省「未来人材ビジョン」を見据え、民間の力を得て実践する探求的な学習

学校と企業、そして行政が一体になって取り組むコンソーシアム構想を推進中!

私が民間企業から移籍し現在、副校長を務めている茨城県の下妻一高では4月に学校経営方針を発表しました。その方針では「文武両道」・「進路実現」・「探究的な学び」の3本柱が掲げられ、この1年間、全職員が一丸となって活動してきました。

3つ目の「総合的な探究授業」は、ここ数年で新たにカリキュラムに入ってきた授業で、まだまだ発展途上の状況です。私も花王時代の経験や人脈を活かし、企業と学校を繋いだり、外部講師をお招きしたりと、この授業に積極的に関わらせもらい、来年度の更なる進化へと繋げる活動を行ってきました。

文部科学省の学習指導要領を見ると、探究的な学習とは「物事の本質を探って見極めようとする一連の知的営み」であり、「問題解決的な活動が発展的に繰り返されていく」学びのことであると書かれています。この探究的な学びは、過去の延長線上には未来が存在しないVUCA時代において、非常に重要な学びだと感じています。

写真 総合的な探究授業の様子

例えば、私が花王時代に経験した、DXを推進する新設された部署などは、前年がない中でそれぞれ独自の構想を立てて実行をして行く仕事なので、まさに探究心が求められ、ビジネスパーソンにおいても必要なスキルだと再認識させられました。

経済産業省は2022年に「未来人材ビジョン」を発表しています。これは2030年、205男0年の産業構造の転換を見据えた人材政策についての議論をまとめたものです。これにによると、現在は「注意深さ・ミスがないこと」、「責任感・まじめさ」が重視されるが、将来は「問題発見力」、「的確な予測」、「革新性」が一層求められるとあり、求められる能力が変わってきていことが分かります。

図 56の能力などに対する需要 経済産業省「未来人材ビジョン」レポートより引用
経済産業省「未来人材ビジョン」レポートより引用。

本校ではこれらの能力を身に付けるため、まずは組織の強化として、探究部を独立組織にして新設し、学年ごとの探究プログラムを作成し、学年横断で総合的な探究な時間を推進しています。まさに探究部と各学年のマトリックス運営型組織として機能し始めました。現在の探究部の先生方がここまで苦労を重ねてつくりあげ、ある一定の形になってきました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

そんな中、昨年の4月から民間発の副校長として着任した私の役割としては、今の活動を中学生の探究授業と、高校の探究授業を繋いで学校全体の戦略を考えたり、探究授業カリキュラムで足りないところは補う役割として、全体をサポートさせてもらっています。

つい先日の2月22日には、1年間の探究活動を発表する、探究成果発表会を行いました。

この会の目的は、全校交流できるとともに外部講師にも関わっていただける環境のもと、全生徒に探究成果発表の場を提供し、探究力全般の向上を図ること。また、生徒個々の振り返りを促し、その視野の拡大を図ることを目的にしています。

写真 外部のゲストも招聘した探究成果発表の場
発表会には外部のゲストも招聘した。

社会課題を見つけて解決策を提案する学習は、生徒それぞれの視点があり、私たちも感心させられる内容でした。今回は、AIや画像認識技術で、洗濯後の衣類を自動でたたむ機械、ランドロイドの事業に挑戦された、ジーフィットの阪根さん(CEO)にご講演いただきました。テーマは、「失敗を恐れず挑戦する大切さ」。会終了後に、阪根さんのもとに質問に来る生徒の姿勢は印象的でした。

写真 阪根信一さんによる講演
阪根信一さんによる講演の後には、生徒たちの質問が相次いだ。

また起業家精神の観点から楽天グループ、メディア・コミュニケーションの観点からTBSラジオ、プレゼンスキルに関しては本校出身の千葉大学の教授、さらに行政との連携という点で下妻市役所地域連携課など、それぞれの分野でご活躍されている方たちに発表会に参加をいただき、産官学連携のコンソーシアムを組んでの開催となりました。

私は、こういう活動を通じて、ひとつひとつのピースが繋がってきているような手応えを感じており、これからの下妻一校の探究授業の更なる飛躍がとても楽しみです。当日の発表に際して、TBSラジオの方に「これだけ一生懸命取り組んでいる生徒を見ると、日本の将来は明るいと感じた」というコメントをいただきましたが、これからも日本の将来のために、みんなで力を合わせて頑張っていきたいと思います。

花王時代にご一緒にお仕事をさせていただいた方々と、このような形で教育分野でもご一緒できる事は、感謝の気持ちで一杯です。学校と企業、そして行政が一体になって取り組むコンソーシアム構想を推進し、生徒や教員のみなさまに、新たな価値提案をしていきたいと思います。

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生井秀一(茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校 校長)
生井秀一(茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校 校長)

花王の販売子会社に入社し、営業部門で大手流通チェーンを担当。ヘアケアブランドのマーケティングを担当した後、2015年にECの営業マネジャーとなり、花王のECビジネスを推進。2018年に全社DX推進をするプロジェクト型組織の先端技術戦略室に異動。2021年にDX戦略推進センターを設立、全社DX戦略を担当した。過去3度、社長賞を獲得。花王グループのDXを推進し、ECビジネスの構築などの推進役を担う。

2023年に茨城県とエン・ジャパンが実施した「ソーシャルインパクト採用」において、茨城県内の中高一貫校・専門高校の「校長」を教員免許不問で公募するプロジェクトに応募。1645人の応募者のなかから選ばれ、花王を退職して2023年4月から民間出身者の校長として茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校に着任。

生井秀一(茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校 校長)

花王の販売子会社に入社し、営業部門で大手流通チェーンを担当。ヘアケアブランドのマーケティングを担当した後、2015年にECの営業マネジャーとなり、花王のECビジネスを推進。2018年に全社DX推進をするプロジェクト型組織の先端技術戦略室に異動。2021年にDX戦略推進センターを設立、全社DX戦略を担当した。過去3度、社長賞を獲得。花王グループのDXを推進し、ECビジネスの構築などの推進役を担う。

2023年に茨城県とエン・ジャパンが実施した「ソーシャルインパクト採用」において、茨城県内の中高一貫校・専門高校の「校長」を教員免許不問で公募するプロジェクトに応募。1645人の応募者のなかから選ばれ、花王を退職して2023年4月から民間出身者の校長として茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校に着任。

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