「MVVは会社の羅針盤」行動変容を生み出す、スタートアップの企業ブランディング事例

事業の成長スピードが速く、組織もめまぐるしく変化するスタートアップ。ビジョンやミッションなど企業固有の指針をどのように浸透させ、行動変容につなげているのでしょうか。2023年の「働きがいのある会社ランキング」で受賞しているhacomonoに、2021年に策定したMVVの社内浸透の裏側を聞きました。

※本記事は、広報会議2024年4月号(2024年3月1日発行予定) 企業ブランディング 吸引力を生む新たな取り組み の転載記事です。

DATA

企業名:hacomono
設立年:2013年7月
従業員数:216名(2023年12月時点)
MVVの策定体制:社内では蓮田健一CEO、人事責任者が中心に半年かけて推進。浸透施策は、広報PRチームが担当

ウェルネス業界向けの会員管理・予約・決済システムを展開する、hacomono。コロナ禍の非接触ニーズも後押しし、2019年3月のサービスローンチから導入数は5000店舗に拡大。従業員数も約4年で4倍ほどまでに急成長した。

こうした組織の急拡大の裏で懸念されるのが組織内のコミュニケーション不足だが、同社は2023年版「働きがいのある会社ランキング」にて、中規模部門でベストカンパニーを受賞。組織を拡大しながらも、組織環境において一定の評価を得ている。

この要因を紐解くと見えてくるのが、2021年8月に刷新したMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の社内浸透の施策だった。

Hacomonoのコーポレートミッション(社会で実現したいこと)。ミッションを主軸に、ビジョン(実現した時の自社の状態)・バリュー(大切にする価値観・行動指針)を掲げている。

 

バリューの地道な体現を

MVVの策定背景について、「組織の急拡大により“hacomonoらしさ” の認識に少しずつズレが生じていたため」と語るのは広報PRの友行仁美氏だ。

同社は2013年の創業からサービスローンチまでは、少人数で事業を展開してきた。トップとの距離感も近く意思決定に“らしさ” が反映されやすい状況だったという。

しかし組織の急拡大で“らしさ” への共通認識が徐々に乖離し、コミュニケーションコストがかかるように。さらなる企業成長のため、蓮田健一CEO 推進のもとMVV策定プロジェクトを開始した。

約半年間のプロジェクトの末、ミッション(社会で実現したいこと)を「ウェルネス産業を、新次元へ。」と策定。併せてミッション実現時の会社の状態を示す「ビジョン」と、実現のために大切にする行動指針「バリュー」を定めた。

また2022年には、サステナビリティビジョン「ウェルネス産業の力で、社会もウェルネスに。」を掲げた。超高齢化社会への対応をはじめ、ミッション実現を目指して取り組む、企業の社会的意義を示している。

企業の社会性と大義、イノベーションへの覚悟を示した「サステナビリティビジョン」。ミッションである「ウェルネス産業を、新次元へ。」の社会的意義を言語化し、社内外への浸透を促す。

ただ策定するだけではなく、同社がこだわったのが「MVVを業務に実装する仕組みづくり」だった。

「代表の蓮田はMVVやサステナビリティビジョンを『会社にとって、仲間と共に船を進めるための羅針盤。意思決定の場面における、判断の拠り所になるもの』と定めています。その上でコーポレートブランドをつくるのは、ミッション実現の土台となるバリュー(価値観・行動指針)を従業員が日々体現し続けることに尽きると。一朝一夕で為せるものではなく、バリュー体現の積み重ねで強固になっていくもの、と解釈しています」(友行氏)。

 

きっかけは「楽しさ」から

MVVの浸透・業務実装のため、入社時に行う「ヒストリー・ビジョン研修」やその体現度を「人事評価」に反映するといった制度を構築している同社。さらなる継続的な理解のため、広報部門を中心にMVVを体感できる社内コミュニケ―ション施策を行っている。

「ウェルネス業界をリードし“社会もウェルネスに”する」企業にとって、社会課題への当事者意識の醸成は必要不可欠だ。この考えから取り組んでいる社内コミュニケーション施策のひとつが、2021年から3年連続開催している「RUN for#ウェルネスアクション」。

1カ月の間に従業員がランニングで消費したカロリー200kcalごとに、開発途上国の子どもたちへ10食分の給食を寄付する取り組みだ。社内チャットの専用チャンネルで走行距離・カロリーを報告すると、累計されていく。

「開発途上国では約8億人が飢餓や栄養失調で苦しんでいる」といったデータもある中で、社会課題に当事者意識を醸成する機会をつくることを目的にはじめたという。

2023年の実施にあたり、注力したのが「従業員を巻き込み、参加率を上げる」仕掛けづくりだ。フルリモート体制の同社にとって、オンライン上での呼びかけのみで「参加してもらう」のはハードルが高いのだ。

そこで、イベントを率いた友行氏が意識したのが…

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本記事の続きは、本誌からご確認ください。
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誌面ではこのほかにも、35年ぶりのグループリブランディングを実施しているJTBグループや、リブランディングで売上高70%増加(単月比較)を実現した北海道のメーカー・環境大善、企業のビジョンをクリエイティブで伝えることに注力したプロニなど、様々な業種や企業規模のリブランディング事例を取り上げています。

ぜひ誌面を参考に、自社の企業ブランド力の向上につなげてください。

 

広報会議2024年4月号

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