林 信行のモバイルマーケティング注目事例(第3回)

ノティフィケーションでリテンションを上げる

林 信行(ITジャーナリスト兼コンサルタント)

(第2回はこちら)発表から1年、発売開始からはまだ半年強しか経っていないというのに、有名ブランドやeコマースサイトがiPad用の電子カタログを出しているのは驚くべき事実だ。特にアパレルブランドの進出は著しく、GAP、ZARAなどの海外ブランドはもちろん、UNIQLOなどの国内ブランドも面白いアプリを出し始めている(中でも「Tabio」のアプリと「ニッセン Virtual Coordinate Room」は必見。後者は以前「宣伝会議」2010年9月1日号で紹介した「RNA 2010」と同じ、大阪デジタルファッション社の3D着せ替え技術HAOREBAを採用している)。

もっとも、いくら面白いアプリでも人は同じモノを使い続けると飽きる。iPad上にアプリケーションのアイコンは残していても滅多に起動しなくなってしまってはお金をかけてつくっても意味がない。そろそろどうやったらリテンション、つまり再びアプリを起動してもらえるかを考え始めるべきかもしれない。CHANELのiPhoneアプリケーションは新しいコレクションの発表ごとに、収録ビデオを置き換えたアップデート版アプリをリリースした。これもひとつの手だろう。

しかし、もっと簡単で効果的なのはノティフィケーションという仕組みを使って、新しい情報があることを知らせる方法だ。以前、紹介したGILTのアプリはタイムセールの開始時間になると、この方法を使ってiPadがスリープ状態でも、ポーンという音とメッセージでそれを教えてくれた。

この方法は使いすぎるとスパムとして嫌がられ、設定画面で簡単にオフにされてしまう(アプリ単位で切ることができる)。

だがeBayのオークションやGILTのタイムセールのように予想可能なタイミングを知らせてくれるモノや、ユーザーが待ち遠しくなるくらい少なめのサイクルで使用すれば効果的にリテンションを引き上げてくれるはずだ。(「宣伝会議」2011年1月1日号から)

※毎月1回掲載(全4回)、次回は2011年2月1日掲載予定


(はやし・のぶゆき)
1980年頃からアップルの動向に関心を抱き、90年から本格的な取材活動を始める。技術的取り組みやものづくりの姿勢、経営、コミュニティーづくりなど、多方面にわたり取材。『iPadショック』(日経BP)など著書多数。

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