広報の仕事を選ぶ上で大切なのは「何を伝えたいか」 スポーツが好きなのでスポーツ広報の道を選んだ私のキャリア

広報、マーケティングなどコミュニケーションビジネスの世界には多様な「専門の仕事」があります。人事異動も多い日本企業の場合、専門職としてのキャリアを積もうとした場合、自分なりのキャリアプランも必要とされます。現在、企業のなかで広報職として活躍する人たちは、どのように自分のキャリアプランを考えてきたのでしょうか。横のつながりも多い広報の世界。本コラムではリレー形式で、「広報の仕事とキャリア」をテーマにバトンをつないでいただきます。サントリーホールディングスの松崎 廣光さんからの紹介で登場するのは和田 真智子さんです。
写真 人物 和田 真智子氏

International Olympic Committee
Japanese Social Media Community Manager
和田 真智子氏

プロバスケットボールチームの広報、Tokyo2020組織委員会・広報局での勤務を経て、現在は、フリーランスとして、国際オリンピック委員会のソーシャルメディアであるオリンピックの日本語公式アカウントの運用を担当している。

Q1:現在の仕事の内容とは?

国際オリンピック委員会(International Olympic Committee)のソーシャルメディア、オリンピックの日本語公式アカウントの運用をしています。国際オリンピック委員会のソーシャルメディアでは、英語、フランス語、韓国語など様々な言語で情報発信を行っており、その中の日本語の担当になります。

2024年7月にはパリでオリンピックが開催されるため、大会に関連する情報の投稿、また、オリンピック予選となる様々な大会の結果などを投稿しています。

日本で開催されるオリンピック予選を兼ねたワールドカップなどの大会には、現地まで出向き、選手のコメントなどを撮影することもあります。

2023年は、バスケットボールワールドカップ2023が沖縄で開催され、男子日本代表がパリ2024オリンピックの出場権を獲得、現地でその瞬間に立ち会えたことは素晴らしい経験でした。

国際オリンピック委員会のアカウントのため、日本人選手以外も撮影するケースがあり、日本語のアカウントだけでなく、他の言語のアカウント担当者にも撮影した素材を共有するなど、常に連携して投稿を行っています。

Q2:これまでの職歴は?

大丸松坂屋百貨店の本社販売企画部などで約9年間勤務しました。百貨店の販売企画部は、広報担当と連携して業務を行うことも多く、効果的な広報により、商品が売れていく様子を目の当たりにし、広報の業務に携わりたいと考えていました。

2013年に、奈良県で、プロバスケットボールチーム・バンビシャス奈良が誕生し、bjリーグに参入することを知りました(現在はBリーグに所属)。新規参入チームで広報をしたいという思いと、高校と大学でバスケットボール部に所属していて、「バスケットボールが好き」という思いも、転職の決め手になりました。

出来立てのチームで、記者会見の実施などのマスメディア対応、ホームページの更新やソーシャルメディアの投稿など広報業務全般を担いました。

奈良県初のプロバスケットボールチームが、ホームゲーム「初」開催、リーグ戦の「初」勝利など、ひとつずつ歴史を積み重ねていく過程を広報することは、大きな喜びであり、何物にも代えがたい経験でした。

2021年には、東京オリンピックに関わる仕事がしたいという夢が叶い、Tokyo2020組織委員会・広報局・企画制作部に入社しました。東京オリンピック・パラリンピックのソーシャルメディアであるTokyo2020公式アカウントのコンテンツ製作や投稿を担当しました。

大会期間中は、日本人選手がメダルを獲得した瞬間にXに結果速報を出すという業務にも関わり、高い緊張感の中ではありましたが、貴重な経験が出来ました。

現在は、国際オリンピック委員会のソーシャルメディア、日本語公式アカウントの運用を行っています。7月に開催されるパリ2024オリンピックへ向けて、出場国や出場選手が決定していく過程にも注目して投稿を行っています。

Q3:転職や社内異動などに際して、強く意識したこととは?

「何が好きか、何を伝えたいか」が広報の仕事を選ぶ上で大切だと思っています。私はスポーツが好きだったので、スポーツの広報の仕事を選びました。

また、国内外問わず選手の魅力を伝えていきたいという思いから、英語の習得が必須であると考え、職業訓練校での英語の学習など、一から学び直しを始めました。オンライン英会話なども使い、継続的に英語を学習しています。

Q4:国内において広報としてのキャリア形成で悩みとなることは何?

スポーツの広報において、ソーシャルメディアは重要であり、広報担当の「経験値」が高いと、様々なリスクを回避して投稿することができます。特にフォロワーが多い公式アカウントを運用する場合は、投稿に細心の注意を払う必要があり、その際もユーザーの反応をある程度予想することができるので、経験値が役に立ちます。

一方、ソーシャルメディアの運用には、Z世代のフレッシュな感覚も重要です。経験を積み、リスクを回避することに注力しすぎると、ユーザーの興味を引く投稿ではなくなるケースもあります。広報の経験値は重要ですが、柔軟な思考と、自分より年齢の若い方から学ぶ姿勢が重要だと感じています。

また、ソーシャルメディアは、新機能の追加や、アルゴリズムの変更などがあるため、昨日まで正解だったことが、今日は不正解になることもあります。常に最新情報をチェックする必要があります。

Q5:広報職の経験を活かして、今後チャレンジしたいことは?

活動拠点を日本だけでなく、海外にも広げ、日本の選手の魅力を海外の方へ伝える、また海外の選手の魅力を日本の皆さんに伝えることに、チャレンジしたいと思っています。

【次回のコラムの担当は?】

次に紹介するのはサッカーJ3リーグに所属する奈良クラブで広報・営業を担当されている木田奈都子さんです。北海道日本ハムファイターズ、大阪エヴェッサなど、スポーツ業界に長く携わってこられました。その後、「奈良に元気を」との思いから、地元である奈良県に戻られ、ご活躍されています。スポーツの力で地域を元気にする木田さんのお話をぜひお聞きしたいです。

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