BtoB事業やフランチャイズ展開も推進
毎日の食事をフードデリバリーで用意するライフスタイルが定着してきている。Antway(東京・千代田)が運営する手作りおかずの冷蔵宅配サービス「つくりおき.jp」は、2024年3月末に累計提供食数が1200万食を突破した。3月の提供食数は前年同月比73%増。4月以降は新生活でさらに需要が高まっている。既存のフードサービスとの大きな違いは、生活における料理の負担軽減に重きを置いている点。「週5食プラン」などサブスクリプション形式で、毎日の食事として販売している。健康面にも気を配った手作り料理で、料理の負担を減らしたいが、出前では栄養の偏りなどが心配といった共働き世帯の要望に応えている。
矢野経済研究所によると、2022年度の国内食品宅配市場は事業者売上高ベースで前年度比102.3%の約2兆5363億円。コロナ禍で宅配需要が急増した2020年度以降の同市場は、国内人口の減少や少子高齢化でも成長を続けている。少子高齢化や共働き世帯の増加が需要を後押ししており、コロナ禍で宅配サービスの利用が定着した一方、ネットスーパーの新規参入など市場の競争は激しさを増している。
総務省統計局の調査では、現在の日本の共働き世帯は7割を超え、75.7%の母親が子育てをしながら働いているという。同社によると、子どものいる共働き世帯の多くが「時間・心理的余裕がない」と回答。特に負担になっているのは家事で、中でも「料理」は献立づくりや買い物、下ごしらえ、調理、後片付けなど多くの工程を伴う。同社が食事の支度にかかっている時間を調べたところ、1日あたり合計約2時間という結果になった。
「つくりおき.jp」は、家事の中でもとくに負担の大きい「料理」をサポートする目的で2020年2月にサービス開始。専用キッチンで手作りしたおかずを冷蔵で宅配する。フードデリバリー市場はコロナ禍で拡大したが、同サービスは外出機会が増えたコロナ収束後の方が、需要が高まっている。週に1回、おかずをまとめて受け取り、毎日の食卓に並べる活用方法で、同社CX部長の鷲頭史一氏は「当社もおいしさにはこだわっているが、一回の食事で戦っているわけではない」と独自性を強調した。
急成長の背景にSNSや口コミなど利用者による周知もあるという。鷲頭氏は「家事の外注は日本ではまだ一般的ではなく、抵抗感がある人も多い」と話す。一方、料理の負担に頭を悩ませている人は多く、同サービスの利用者が同じ悩みを持つ知り合いに紹介する動きが見られるという。
福利厚生の一環として共働き支援を行う企業が増えたことも拡大要因だという。企業向けの福利厚生サービスとしても提供しており、これまで住友商事や日立製作所労働組合などが導入。BtoCだけでなく、BtoB市場でも事業領域を拡大している。
需要の高まりに対応するため、フランチャイズビジネスにも参入。これまでは都内3カ所の直営キッチンで、1週間に数万食を製造していた。2023年10月20日に「串カツ田中」と業務提携契約を締結。5月に新しいキッチンをオープンする。
料理の製造では、温度などの管理は機械が実施するものの、炒めたり、混ぜたりする工程は人の手で実施しているという。機械と人力のハイブリッド調理で、手作りの温かみを重視しつつ、品質も均一化。フランチャイズ展開では製造データを共有することで品質を維持するほか、同社の研修を通じてノウハウを伝授する。
現在はサービスを提供していないエリアもあるが、フランチャイズ展開を通じて日本全国での対応を目指す。鷲頭氏は「家庭の中で義務となるタスクをなくしていきたい」とし、将来的には洗濯や掃除など家事全般をサポートすることも視野に入れているという。