今回はキリンの国産ウイスキーブランド「陸」。ブランドリニューアルを経て売上200%を達成した背景に迫ります。
※本記事は月刊『販促会議』4月号に掲載されています。
キリンビール
事業創造部国産洋酒チーム
鈴木雄介氏
2009年入社。キリンホールディングス コーポレートコミュニケーション部で広報担当を経て2021年10月から現職。富士御殿場蒸溜所で製造するウイスキーのマーケティング業務を担当。「陸」の2022年4月フルリニューアルを主導した。
■商品情報
- 商品名:キリンウイスキー 陸
- 希望小売価格:500mlびん1430円(税込)、4000mlペットボトル8800円(税込)
- 主な販路:酒類販売店、スーパーマーケットなど
「陸」誕生の背景 なぜ、競合の多いタイミングで?
──「陸」開発の背景と、商品の特徴を教えてください。
キリンといえばビールのイメージが強いと思いますが、実はウイスキーにも長い歴史があります。当社のウイスキーブランドをつくっている富士御殿場蒸溜所は1973年操業。昨年11月に50周年を迎えています。
日本の経済成長期、ウイスキーは「出世の酒」として役職が上がるにつれて飲むことができる銘柄も変わる、憧れのお酒でもありました。その後、飲むお酒の多様化に伴いウイスキー自体の人気低迷もありましたが、2009年前後からのハイボールブームやテレビドラマの影響で市場が回復。また、国際的な賞の受賞もあり、世界的に「ジャパニーズウイスキー」の地位が高まってきていました。
キリンは2016年、17年、19年に国際的ウイスキーコンテストの「ワールド・ウイスキー・アワード」で『富士御殿場蒸溜所シングルグレーンウイスキー AGED 25 YEARS SMALL BATCH』が「ワールド・ベスト・グレーンウイスキー」を受賞し、世界最高峰のグレーンウイスキーとして認定されました。それがきっかけとなって、当社もあらためてウイスキー事業に注力することに。そこで、2019年に樽熟成庫の増強を始め、発酵・蒸留設備の新規導入と、既存ウイスキーブランドの整理・再編によって2020年に誕生したのが「富士」と「陸」です。
リニューアルを機に売上が倍に 仕掛け人が振り返る当時の狙い
──販売推移を見ると、2022年で急激に売上が成長しています。
売上ベースだと、初年度は7億円。翌年の2021年は7.7億円という結果でした。しかし、2022年には倍の約15億円へと伸長。2023年はさらに成長し、28億円になっています。飲食店での取り扱いも増えていて、2022年から2023年にかけては175%増。約2万8000店になっています。
2022年の大幅な成長に寄与したのが、「陸」の中味とパッケージのリニューアルでした。
──パッケージのリニューアルには、どのような狙いがあったのでしょうか。背景を教えてください。
発売当初の2020年は、「ウイスキーをもっと自由に楽しめるものにしたい」という思いから、従来のウイスキーとは異なる斬新な、モノトーンのパッケージにして販売していました。実際、お客さまへの調査では「現代的」、「若者向け」という項目のスコアが上がって狙い通りだったんです。
一方で、「何者なのかわからない」「どういうウイスキーなのかがわからない」という意見が多かったのも事実。商品の魅力がお客さまに十分に届いていないのだと感じました。
そこで2022年4月に味覚とパッケージの、リニューアルを実施しました。「私たちはそもそもどんなウイスキーをつくりたかったのか」と操業当初の原点に立ち返りましたね。制作したパッケージのデザインは200以上にも及びました。既存のウイスキーとは異なる明るさがありながらも、“本格的”なウイスキーであることを伝えるために、他蒸溜所の商品や、店頭のウイスキー売り場に並んだときの見栄えも考慮しながら、慎重に選んでいった経緯があります。
議論を経て選ばれたのが、現在のパッケージ。白地にゴールドの文字で製品名を大きく打ち出し、蒸溜所の紋章を加えることで“本格的なウイスキー”であることを伝えられると思いました――。
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