博報堂のシンクタンク、博報堂買物研究所は4月11日、「令和の“買物欲を刺激する20のツボ”」を定義・発表した。買物研究所は2007年に「いいモノを手に入れたい」という欲求、いわゆる“物欲”に対して、「いい買物体験をしたい」という買物プロセスに対する欲求を指す「買物欲」の概念を発表。以降、“買物体験での差別化”の重要性が高まっているという考えのもと、研究活動を行っている。
その一環で今回発表されたのは、「令和の“買物欲を刺激する20のツボ”」。EC普及やSNS利用の拡大、コロナ禍、物価高騰などを受けて急激に変化する買物環境や生活者の「買物欲」は、従来の枠組みでは捉えきれなくなっていることを踏まえ、生活者アンケート、SNS上の投稿分析、有識者インタビューなどの調査を改めて実施。調査から抽出した“良い買物体験”の要素を、重視度や要素間の類似度によってグルーピングし、20の要素に集約。それらを「令和の“買物欲を刺激する20のツボ”」として定義した。
博報堂買物研究所によると、「令和の“買物欲を刺激する20のツボ”」は、モノを買う時に、感情『LOVE』と理性『REASON』のどちらで商品を選ぶか。そして、買う気持ちを増幅させる『BOOST』か、買う気持ちを維持させる『KEEP』か、という2つの軸で4つの象限に分類。20のツボはそれぞれの象限に当てはめ、『フリクションレス』(精神的・物理的労力が少ない)、『損失回避』(失敗や損の回避)、『偏愛性』(“好き”の想いを表現)、『ストーリー性』(企業“らしさ”、コンセプトやストーリーへの共感)などのキーワードで構成される。
発表された「令和の“買物欲を刺激する20のツボ”」は、以下の通り。
買物研究所の分析によると、現在生活者からのニーズが高いのは『KEEP』系のツボ。一方で、今後伸びていく兆しを見せたのは『LOVE&BOOST』系のツボだったという。「失敗したくない、なるべく省力化したい」「ネガティブな部分がないから“これでいいか”」という『KEEP』系の買物スタイルから、遠回りしながらも買物プロセス自体を楽しんだり、自分軸で買う、想いに魅かれるなど、“これを買いたい”という『LOVE&BOOST』系の買物スタイルへの変化、つまり生活者の“買いたい”という主体的意志が復権する兆しが見えてきたと分析している。
また、分析の結果から同研究所が提言した「生活者の“買いたい”という主体的意志が復権した時代におけるマーケティングヒント」は3点。
- ①ソウルを打ち出す 関係するツボ:「偏愛性」「利他社会性」「ストーリー性」
~根拠・理由だけでなく、信念・情熱を感じる体験「も」打ち出すことが重要~ - 根拠や理由に納得して理性的に買うだけではなく、企業のソウル(他には提供できない企業「らしさ」や売り場づくりに込めた「信念・情熱」)を感じる買物体験の提供が差別化に繋がる。理念を体現する“一貫性のある買物体験”を提供することが今まで以上に重要になる。
- ②楽しめる買物プロセスの提供 関係するツボ:「過程充実性」「鮮度・体感」
~時には非効率を楽しめる体験「も」提供する~ - 生活者は、効率重視の買物では味わえない、プロセス自体を楽しめる工夫がある買物を求めることもある。例えば、海外の市場での買物を完全に再現して、異世界感に没入できる体験や、ガチャガチャのように予測できない楽しさの提供があげられる。
- ③未来視点の提示 関係するツボ:「自己投資」「学習心」
~「今視点の損失回避」だけでなく「未来への投資性」を~ - 目先の損得だけではなく、「どれくらい長く使えるか?」「それを買うと自分がどれくらい頑張れるか」など未来の姿を想像できる買物体験が重要。
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