JR東日本「JR SKISKI」のフルファネル施策 TikTokで認知から購買まで一貫したアプローチ

JR東日本が3月31日まで実施した、スノーレジャーへの誘致キャンペーン「JR SKISKI」のTikTok施策が成果を収めた。担当する広告会社のジェイアール東日本企画の小野航汰氏は、「TikTok広告の主要業績指標(KPI)は目標をすべて達成しました。結果的に、全体としても前年を上回る結果になりました」と話す。背景には、緻密なメディアプランニングがあった。

JR東日本「JR SKISKI 2023‐2024キャンペーン」のキービジュアル

ロングランだからこそ求められる変化

「JR SKISKI」は1991年の「JR ski ski」(表記は当時)を皮切りに始まったキャンペーン。以降、断続的に実施し、特に2012年度の俳優・本田翼さんの起用以降は、毎年イメージキャラクターや、CMソングでタイアップするアーティストが話題になっている。「若手俳優の登竜門のひとつとして、キャンペーン自体を楽しみにしていただいている方も多い」と小野氏は話す。

ジェイアール東日本企画の小野航汰氏

ロングラン施策ならではの課題だが、毎年「新しさ」を提供することは難しい。奇しくもコロナ禍中に迎えた30周年の「JR SKISKI」を除き、ここ数年間のキャンペーンのベースとなっていたのは、「グループでの青春感」だった。

「仲間とスノーレジャーを楽しむ大学生たちの、ワイワイしたトーンを描いてきました。しかし、特に今回は、行動制限解除後としては初のウィンターシーズンとなることもあり、期待も高まるだろう、と。『新しさ』や『驚き』をキャンペーン全体で展開していくことを意識しました」(小野氏)

メディアプランニングとして成し遂げたいこともあった。「JR SKISKI」でのTikTokの広告出稿は、2018年度にインフィード広告を出稿したのが最初だ。直近の22年度でもTikTokでブランド動画と、オフショット動画を広告として運用している。これまでの手応えについて、ジェイアール東日本企画 コミュニケーションディレクターの木戸健太朗氏はこう話す。

「クリックあたりのコスト(CPC)がほかのプラットフォームでの広告と比べ、とても良い数値が出ていました。当時の目的は認知の拡大だったのですが、今回、TikTokを活用することを前提に、どのような展開ができるか。特に、認知拡大だけではなく、購買にまでつながるよう、すべてを一貫して活用したい、というのが焦点となりました」(木戸氏)

ジェイアール東日本企画 コミュニケーションディレクターの木戸健太朗氏

2023年度の「JR SKISKI」のターゲット層は主に2つ。初めてスノーレジャーを体験するような18〜24歳。そして、毎年スノーレジャーに出かけている人や、以前は出かけていたが少し離れていた人だ。

起用したのは、俳優の桜田ひよりさん。楽曲を描き下ろしたのは、シンガーソングライターのiriさんだ。「雪よ、推してくれ。」のコピーは、2012年度の「青春は、純白だ。」や2013年度の「ぜんぶ雪のせいだ。」などを担当した山口広輝氏。

こうした、これまで評価の高かったイメージキャラクター、楽曲、コピーといった基本路線は維持しつつ、表現のトーンについては変化を加えている。

「キラキラした、これまで通りのトーンが、いまのターゲットに届くのか。もっとリアリティを高めた映像のほうが、より受け入れてもらえるのではないかとディレクターを務めた真田敦さんをはじめ、クリエイティブチームから提案をもらいました」(小野氏)

舞台設定は、「夏にうまくいかなかった二人が、共通の友人たちと共に訪れたゲレンデ」。ターゲット世代が、実際には何を考えているのか。真田氏が大学生にヒアリングしながら検討を重ね、その中から生まれた設定だ。「ゲレンデにて」篇、「リフトにて」篇、「歩く」篇の3篇で、それぞれ15秒、30秒、60秒のパターンを用意した。いずれも会話こそ少ないが余白を感じさせ、物語性の高い動画となった。

TikTok配信初日、「リフトにて」篇30秒を『TopView(起動画面広告)』に使用。ユーザーがTikTokアプリを開いた際、「おすすめ」フィードに最初に表示され、最も認知を獲得しやすい広告メニューだ。また、その後「ゲレンデにて」篇、「リフトにて」篇、「歩く」篇の3篇をインフィード広告で活用をした。


「広告らしくない見た目、ぐっとのめり込ませるようなストーリー性を評価いただいて、ユーザーからの反応も好感触でした」(小野氏)

縦型動画用に制作した映像ではないものの、「かなり自然に縦型へと再編いただけたと考えています」と話すのは、TikTok for Businessの村田有彩氏だ。小野氏によると、TikTok広告の企画時から、TikTok for Businessもミーティングに加わっていたという。

「届けたい視聴者層のことを深く理解した上で制作された動画で、ユーザーを引き込むクリエイティブになっていたと思います。だからこそ、多くのユーザーが好反応を示したのではないでしょうか。必ずしも縦型のために制作をしなくても、既存の横型素材を活用し、縦型のより没入感ある洗練された見た目で表示する手立てはあります」(村田氏)

TikTok for Businessの村田有彩氏

ユーザーが知りたい情報を広告に、予約への背中を押す

メディアプランでのキーポイントは、「認知から購買まで一貫して設計し、それぞれの段階にいるユーザーに応じたフォーマットを活用すること」と木戸氏は話す。「リフト」篇を活用した「TopView」を起点に、「JR SKISKI」のWebサイト(LP)の来訪データなどを活用し、ユーザーの状態に応じた施策を打っている。

「JR SKISKI」の動画にふれ、即座にトラベル商品の購入につながるのが理想だ。しかし、より検討のための情報や期間を要するユーザーも少なくない。「TopView」を視聴したユーザーを対象に、さらにテレビCMと同じ3篇を「インフィード広告」で配信。より興味・関心を高めるように働きかけを行った。

さらに今回の施策で要となったのは、「カルーセルフォーマット」だ。「カルーセルフォーマット」は、2〜35枚の「静止画」を用いるもので、横に画面をスライドさせることで、ページをめくるように静止画を閲覧できるフォーマット。スノーレジャーの世界観を伝える動画とは別に、「予約することのお得さ」など、より購買意欲を高めるための情報を静止画にまとめて配信した。平日出発や複数名予約、日帰りプランなどターゲットや訴求内容に応じて用意した数は9パターンだ。

「JR SKISKI 2023‐2024キャンペーン」のTikTok施策概念図

「結果として、獲得あたりのコストやコンバージョン率双方で好調に推移しました。特に、TopViewのリタゲーティングを活用した施策のCPA(クリック単価)はKPIより30%以上安価におさえられ、ローワー施策については、複数のユーザーが知りたい情報を広告に、予約への背中を押すターゲティング/素材で実施し、KPIと比較し-80%でCV獲得に成功しました。ムービーでしっかりと訴求したユーザーに対し、お得情報や期間限定など、シーズナルな情報を提供し、予約への背中を押す動きが、TikTokの中で完結してできたのがよかったと思います。ブランドとして発信することは不可欠である一方、それだけではなくユーザーが求めている情報、いま知りたい情報を広告として活用できました」(木戸氏)

プランニングにおいても、TikTok for Businessが早い段階から情報提供を行っていたという。

「予算の割り振りとしても、『TopView』への割り当て以外は、目標となる予約数から逆算して、そのためにどれくらいのサイト訪問者が必要か、そのためにどれくらい配信するか……と下から考えていきました。それぞれのフェーズで最適なフォーマットやクリエイティブはどのようなものか、というのは、プラン表だけを見ていてもなかなか解像度は高まりません。やはりプラットフォーマーと話しながら設計していくのが重要だと思います。成果を出すために必要な運用期間の見込みも教えてもらえていたので、テレビやOOHとの歩調を合わせたりするのにも役立ちました」(木戸氏)

「ターゲットは広すぎず、はもちろんですが、絞りすぎず、という点も肝要です」と話すのは村田氏。

「今回のケースでは、『TopView』のリターゲティングを活用しましたが、年齢や興味関心軸で区切り、あえて狭めすぎずに、今回のキャンペーンでの訴求に対してポジティブな反応を示したユーザーを対象にしたことがキーポイントになったと思います。TikTokのレコメンドシステムは、ある程度ターゲティングを広めに設定していた場合にも、その時々のユーザーの反応や興味を短期間で反映させることに優れています。弊社では最低3〜5週間以上の配信を推奨しており、配信期間を約1カ月に設定したのも、勝ちクリエイティブを見つけ、素材や配信設計の検証を行い、結果を出し切る後押しになったのではないでしょうか」(村田氏)

TikTokとトラベルの可能性

村田氏によると、TikTokでは旅行関連広告は+265%、旅行関連のユーザー投稿の視聴推移は+213%成長と大きく伸びているという※。「やはり旅行の情緒的価値を表現し、旅行したくなる、という気持ちを醸成する上で、動画は強力なプラットフォームなのだと思います」と同氏は話す(※自社調べ、2022年対2023年比)。

「旅行業界とTikTokの相性は非常によいと思います」と話すのは小野氏だ。

「広告だけでなくより全方位的に、普段からの発信であったり、さらにはほかのTikTokクリエイターとの共創であったりと、武器が多いプラットフォームだと思っています。オーガニックと広告とを組み合わせて、よりクライアントのご要望にお応えしていきたいですね」(小野氏)

木戸氏はさらに、「課題や目的、ターゲットに応じて、プラットフォームを個々に選ぶのではなく、TikTokでフルファネルを完結させるような活用の仕方ができた」と強調する。

「ユーザーの体験に寄り添うようなフォーマットやクリエイティブで、複合的なコミュニケーションを図れる。確実にユーザーの多様性が広がっていますし、その中で、施策がターゲットにきちんと届くということが、今回の大きな発見でした。TikTokは情報量が多い世の中で、潜在層にアプローチができる唯一といっていいほどのプラットフォームではないかと思います」(木戸氏)

お問い合わせ

TikTok for Business Japan

URL:https://tiktok-for-business.co.jp

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ