「AIが浸透した未来、人間は自分の欲求を自分で決められるか?」(木村健太郎)

「AdverTimes.(アドバタイムズ/アドタイ)」は2024年6月に20周年を迎えました。2004年に新聞として創刊、2010年からオンラインがスタートし現在に至ります。
20周年の節目に際し、これまでのコラム執筆者の皆さんから寄せられた、それぞれの領域における「これまでの20年とこれからの20年」を紹介します。

木村 健太郎氏

博報堂 執行役員、博報堂ケトル ファウンダー

――これまでの20年間で、ご自身のお仕事の領域や関心領域において、エポックメイキングだったと思われることはなんですか

日本のエージェンシーのグローバルプレゼンスアップでしょうか。個人的な原体験としては、僕が初めてカンヌライオンズに参加した今からちょうど20年前の2004年には、日本のクライアント企業がグランプリやゴールドをいくつも取っていてそれが誇らしかった反面、日本のエージェンシーは見る影もなかったのを痛切に覚えています。日本はメーカーなどのハード産業が強いが、クリエイティブなどのソフト産業が弱いという印象でした。

それがデジタル、デザイン、統合キャンペーンなどのカテゴリーで徐々に受賞数を増やしていき、2010年くらいからは日本が国際広告祭で大量に受賞するようになり、審査員もセミナーも増えました。広告だけでなくアニメや映画などコンテンツビジネスでも日本発のIPが存在感を増してきました。

グローバル市場における日本企業の凋落が語られていますが、広告やコンテンツなどのソフト産業は、この20年で大幅にプレゼンスがアップしていると思います。

――現在のご自身のお仕事の領域において、最も関心を寄せる/寄せられるべき課題は何だとお考えですか

僕らの所属する産業を、企業や社会の課題を創造性で解決するクリエイティビティ産業と呼んだ場合、最大の課題は、今後果たしてそれが高付加価値を生むプロフィタブル(高収益)でサステナブル(持続的)な産業であり続けられるかどうかだと思います。

そのためには、まず従来のマーケティングコミュニケーション領域での提供価値をさらに高度化するのに加え、それ以外の領域、たとえば事業戦略、商品やサービス開発、物流やコミュニティ運営など、マーケティングコミュニケーション以外の全バリューチェーンにおいても求められるクリエイティビティを提供していくこと、そしてグローバル化を加速していかなければいけないと考えています。最後にダイバーシティやワークスタイル、環境問題や社会課題への対応で、先進的な産業になっていけるかどうかも課題だと考えています。

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