嫉妬のガソリン(文・廣瀬泰三)

東京コピーライターズクラブ(TCC)が主催する、コピーの最高峰を選ぶ広告賞「TCC賞」。その入賞作品と優秀作品を収録したのが『コピー年鑑』です。1963年に創刊され、すでに60冊以上刊行されています。

広告クリエイターを目指す人や駆け出しのコピーライターにとっては、コピー年鑑は憧れの存在であり、教材であり、自らを奮い立たせてくれる存在でもあります。TCC会員の皆さんは、コピー年鑑とどう向き合ってきたのか。今回は、ロート製薬やUHA味覚糖などの広告を手がける廣瀬泰三さんです。

若手の時、会社の図書室のようなところでコピー年鑑をよく見ていた。でもある日「これを会社で見ている時点でアカンのちゃうか?」と思い、家で見るために10年分を買った。正直「高い」と思ったが、結果的には正解だった。

もちろんコピーの勉強になったのだが、それより残っているのは「嫉妬」の感情だ。読めば読むほど悔しい。コピー年鑑に載っているコピーは、今までになかった切り口だから広告として目立っていて選ばれている。つまり年鑑に載っていない切り口でないと今後は目立てないのである。

いわば、コピー年鑑は「もうやってはいけない手口」の集まりでそれは年々増えていく。その事実に愕然とした。

そして「なんでこんな面白いのを先にやんねん……」という筋違いの怒りを覚えながら読み進めると、さらに嫉妬させるコーナーが出てくる。そう、新人賞のページだ。新人賞を獲った人たちが満面の笑みでずらりと並ぶ。丁寧に生年月日付きのプロフィールまで載っている。ボクだけだろうか?「その年鑑の年」―「その人の生まれた年」の計算をして、その人がいくつで新人賞を獲ったのか?を計算していた。

「この人35歳か…ボクまだ大丈夫や」「え!?こいつ25歳!?年下やんけ!」気付けばこんな不毛な事にたっぷり時間を使っていた。我ながらアホだと思う。でも、結局年鑑にはそう思わせてくれるいいコピーが載っているからで、経緯はさておきモチベーションをあげるのにすごく役立った。

というわけで、年鑑と言えば僕にとっては「嫉妬のガソリン」である。そして今もほぼ同じテンションで年鑑を見ていることは内緒です。人は変わりませんね。

(編集部より)現在は、コピー年鑑に受賞者の生年月日を掲載していません。

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廣瀬泰三(ひろせ・たいぞう)

(2011年TCC入会)

電通 関西オフィス CMプランナー・コピーライター。1978年兵庫県生まれ。関西大学卒。2001年電通入社。2011年に「AKB×ぷっちょ」でTCC新人賞を受賞し入会。2022年に味覚糖グミサプリのTVCM「ええ声店長」篇でACC小田桐昭賞。主な仕事に、ロートのドローンショー「目の愛護ショー」、電車ジャック「目の愛護車両」、「ロート×ローキ(佐々木朗希)」キャンペーン、関西電気保安協会ホアンドロイドTVCMシリーズなど。…といったことはさておき、野球とお笑いが大好きです。

東京コピーライターズクラブ(TCC)
東京コピーライターズクラブ(TCC)

東京を中心に日本全国で活躍するコピーライターやCMプランナーの団体。毎年、前年度に実際に使用された広告の中から、優秀作品を選出。その制作者を「TCC賞」受賞者として発表し、受賞作品のほか優秀作品を掲載した『コピー年鑑』を発行している。TCC新人賞審査に応募し、新人賞を受賞することで入会資格が得られる。

東京コピーライターズクラブ(TCC)

東京を中心に日本全国で活躍するコピーライターやCMプランナーの団体。毎年、前年度に実際に使用された広告の中から、優秀作品を選出。その制作者を「TCC賞」受賞者として発表し、受賞作品のほか優秀作品を掲載した『コピー年鑑』を発行している。TCC新人賞審査に応募し、新人賞を受賞することで入会資格が得られる。

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