「著作者人格権」って何? 漫画実写化で、編集者が知っておくべきリスクと対応(前篇)

漫画や小説などを原作に、ドラマや映画として実写化される作品は多くあります。しかし原作者に編集者、実写化作品を担う脚本家や監督、演出家など多数の人が関わるプロジェクトの中で、問題も発生しています。

 

特にSNSが浸透した環境ではトラブルが発生した際、実写化にかかわるメディア企業の制作者や編集者が誹謗中傷を受けるケースも少なくない。原作者の権利を守り、トラブルを避けるためにメディア企業に所属する編集者や制作者は、どんなことに配慮すればよいのでしょうか。

 

法律という視点から、実写化・ライツビジネスを巡る課題や今後の展開について考えることで、課題解決への糸口、あるいは作品の魅力の最大化を的確に行うことができるのではないか。そんな観点から、著作権法に詳しい骨董通り法律事務所の弁護士である、岡本健太郎氏に話を聞きました。

 

※本記事は情報、メディア、コミュニケーション、ジャーナリズムについて学びたい人たちのために、おもに学部レベルの教育を2年間にわたって行う教育組織である、東京大学大学院情報学環教育部の有志と『宣伝会議』編集部が連携して実施する「宣伝会議学生記者」企画によって制作されたものです。企画・取材・執筆をすべて教育部の学生が自ら行っています。

※本記事の企画・取材・執筆は教育部所属・永留琴子が担当しました。

――まず、漫画や小説をドラマや映画などの作品として実写化するに際して、注意しなければならない原作者の権利について教えてください。

特に注意しなければならない権利として、著作権と著作者人格権の2つが挙げられます。「著作権」は、漫画をコピーする権利や原作を映像化する権利など、著作物に関する経済的な利益を保護する権利です。作品の表現上の本質的な特徴を保ちつつ形態等を変えて利用することを「翻案」と言いますが、翻案する権利も著作権の一つです。

もうひとつの「著作者人格権」は、著作者の尊厳を守る権利です。少し複雑化しますが、具体的な内容として、著作者に無断で作品を改変することを禁止する「同一性保持権」や、著作者の名前を表示することを要求する「氏名表示権」などがあります。まれに、映像化に際して、原作のタイトルを変更することもあるかもしれません。この場合にも、著作者人格権(同一性保持権)の問題が生じます。

全ての作品ではありませんが、例えばシリーズものの作品を利用する場合には、商標権についても配慮が必要となることがあります。また、少し場面が異なりますが、作品を配信するような場合やグッズを販売するような場合には、出演者の肖像に関する権利にも配慮が必要かもしれません。このように漫画や小説の実写化に際しては、著作権や著作者人格権だけでなく、それぞれの段階や状況に応じて、様々な権利に注意を払う必要があるのです。


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