左から)プランナー 津崎景太氏、クリエイティブディレクター 橋本弘平氏、プランナー 金子真大氏、プロデューサー 甲斐智大氏、プランナー 若林 大氏
人を動かす最も強い手段 リアル・デジタルの体験の価値
━━体験デザイン本部の設立から現在に至るまでの系譜をお聞かせください。
甲斐:体験デザイン本部は、 TOWが提供するサービスの質を高め、領域の拡張をけん引する部署として、2017年に設立されました。当初は、プロダクションには珍しい、プランナーのみが在籍する「企画室」。そして、WEBサイトやインタラクティブコンテンツを得意とするプロデューサーが在籍する「インタラクティブプロモーション室」で構成されていました。
しかし統合的なコミュニケーションが求められる時代。ここ数年でもプロモーションにおける領域が飛躍的に広がり、その都度、配信系・PR系・デジマ系・デザイン系が得意な人材を拡充してきました。
7月1日からは、より面白い仕事をつくっていくことを目的に、業務領域の枠を取り払って、「本部長の下に9つのチームが並ぶ」形に再編する予定です。例えばプランナーは、プランニングだけではなく制作領域にも介入し、プロデューサーも、自身のドメインに限られない統合的案件にプランニングからかかわっていくことで体験デザイン本部の全員が、そのプロセス全体に関わることを目指していきます。
若林:ここ数年で「体験デザイン」という言葉の定義も変わり、それに合わせて私たちに求められる課題解決の提案の幅も変わってきました。認知獲得のための手段としての店頭やイベントの体験デザインから、リアル以外の場も含めてブランドと生活者の距離を縮めるための施策へと広がっていると感じます。とはいえ我々、体験デザイン本部の存在意義は不変だと感じています。
津崎:リアルに限らず体験は「人を動かす上で最も強い手段」ですよね。金子:昨今の広告の仕事というと効率性が重視されがちですが、「人を動かすという結果に至るまでのプロセス」を大事にしているのも、僕たちの特徴だと感じます。そしてこのプロセスをしっかり積み上げていくことで、「人を動かしたその先」にある購買にとどまらない、ファン化や継続利用にまでつなげていくのが僕らの目指す「体験デザイン」です。
入社式に方針説明会 従業員イベントにも体験デザイン
――「デザイン思考」「デザイン経営」など「デザイン」という言葉が様々な場面で聞かれるようになり久しいですが、クライアント側の意識として捉えていることはありますか。
若林:Z世代に対しては共感のコミュニケーションが必要だと言われてきていますよね。ただ、共感を抱いてもらうには、プッシュ型広告やマス広告では限界があるのかなと感じています。そこで有効になってくるのが、リアル接点であり、彼ら自身に足を運びたいと思ってもらえる魅力的なイベントです。そういう場で深い共感を生活者と結んでいきたいというニーズが高まっているのを感じています。
甲斐:特にコロナ禍以降、この共感の体験デザインを通じて社会課題に取り組むことも増えました。広告を中心としたマーケティングにとどまらない領域で体験デザインの価値を感じていただける機会が増えているのかなと思います。若林:企業においても、対顧客だけでなく、体験デザインの知見が求められる機会は増えていると感じますます。例えば、当社のケースで言えば、近年は従業員向けのコミュニケーション施策の依頼が増えています。入社式や企業の経営方針発表会に携わることも増えました。こうしたインターナルコミュニケーション課題の解決にも体験デザインが活用できると気づき始めた方が出てきている印象です【図1】。
図1 企業マーケティングにおける「体験」の役割範囲
橋本:このような相談をいただけるようになったのは、イベント演出を提案するだけの会社ではなく、来場者の心や体をどう動かすかといったことを一緒に考えるというスタンスで仕事をしてきたことが奏功しているのではないでしょうか。
目的によっては、私たちはイベントではなく、映像配信などの代替手段を提案することもあります。具体的なイベント企画・運営の依頼だけでなく、「こんなことをやりたいのだけど、どうしたらいい?」と相談ベースで、柔軟な提案ができるところを買っていただけているのかなと思います。
甲斐:「体験から考えて“使われる”アプリをつくろう」という発想で、ジャパンモビリティショーの公式アプリを制作した仕事が象徴的かと思います。この仕事を通じて感じたのは、TOWは「合わせ技」が強いということ。PRも、SNSも、映像もやる。そういった統合能力を、企画面でも実行面でも持ち合わせているのはTOWならではですね。
橋本:幅広い打ち手に対応もしてきましたが、それだけでは圧倒的な強みにはなりづらいという面もあります。各専門領域における打ち手は強みではなく、当たり前に標準装備するべきこと。それに加えて「子育てしながら働いているプランナーがいるから、子育て世帯のインサイト把握に強い」など、テーマでの提案に強みがあると考えています。
若林:企業の戦略意図を汲み、生活者に嫌味なく届けるための施策を考えるのが自分の役割だと考えています。先述のように、アウトプットの形に縛られないからこそ、いろんな生活者の視点と企業の視点を行き来しながら接着できる気がします。
津崎:職種はプランナーですが、常にプロデュースワークやアウトプットされた現場を意識しています。役割や領域を分断して考えるのではなく、全体を俯瞰しながら統合的に課題を解決することが企業のパートナーとして役に立つ上では重要なのかなと思っています。また、こうした発想こそがTOWの特徴なのかもしれません。
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