ブランド人格を起点とした対談を通じ、新時代を拓く“戦わないマーケティング”による事業サステナビリティを描き出す。
大広が目指す“持続的な関係性づくり”
鬼木:大広は、古くからダイレクトビジネスやダイレクトマーケティングに関わってきました。ビジネスの形が変化する中、いくつかの企業の通販事業の立ち上げに携わり、事業のフルサポートのノウハウを蓄積してきた会社です。常に並走しながら、お客様と対話を重ねて価値共創し、私たちのノウハウもアップデートさせています。
よりシンプルに説明すると、生活者が購買者になり、購買者が顧客になるという流れの中で、一度企業と接点を持って以降(ファネルの右側)の方の満足度を上げていく。愛用・推奨まで持っていくだけでなく、気持ちの面でも企業を応援するファンになっていただき、さらにそれを持続させるにはどうしたらいいのかを追求し続けています。
大広 取締役執行役員 マーケティングデザイン本部長/ブランディング ディレクター 鬼木美和 氏
「ブランド人格」が力を発揮する3つの場面
増田:続いて、「ブランド人格」について教えてください。
鬼木:持続的な関係性をつくる際に必要なのは、自分自身にいかに賛同し、信頼していただけるかということです。それは企業や事業、商品で見たときも同じです。同等の商品でも、好きなブランドや馴染めないブランドが出てくると思います。この違いは、背景にある歴史や企業の思いにあります。つまり人と同じであるということにたどり着いたのが、この「ブランド人格」という考え方です。
ブランディングの上で最も大切なのは、その必然性をはっきりさせることです。それは企業によって違いますが、ブランド人格が求められる場面は大きくこの3つではないかと思います。
1つ目は「起業する」。会社が生まれる際、一緒に組んでくれる協業社や従業員を集めるにはブランド人格という指針が必要です。2つ目は「事業領域を拡げる」。事業領域が多岐に渡るほど、顔がたくさんあるためブランドがつくりにくくなります。しかし、根底にあるものは共通しているので、それをどう描くかを考えるということです。3つ目は「危機から再生する」。企業である以上、トラブルに巻き込まれることもあるでしょう。
何が問題だったのか、どう改革していくのかなど、人として考えるととても判断がしやすいです。このように、ブランド人格が力になる場面は多く存在します。
これからの時代のマーケティング
増田:ここからはキーワードに沿って対談し、解像度を上げていきたいと思います。まず「ステークホルダー」についての考えを聞かせてください。
赤谷:ブランド人格を通じて、自社や思い・熱量を発信していくことが重要であると思っています。例えば株主や顧客に対し共感を生むことで、初めてその人たちが自社のファンになると考えています。そして対話を通じて価値共創する。ステークホルダーをより深く巻き込み、ファンになってもらうためのツールがこのブランド人格だと考えています。
INFRECT 代表取締役CEO 赤谷翔太郎 氏
増田:「共感」というキーワードについて、鬼木さんいかがですか。
鬼木:ブランド人格を起点にしながら活動開発する際にまず行うべきは、「その企業や事業は誰に取り巻かれているのか」ということの棚卸しです。関係人口として、どれだけ応援者がいるかは企業の成長に欠かせないものだと思います。今後はそういう意味でのステークホルダーの視点を大事にしながら、自分達は誰と関係を結ぶべきなのか、一度立ち止まって考えてみてもいいのではないかと思います。
増田:ではその関係性の質や量、奥行きについてはいかがですか。
赤谷:ブランド人格を通じて、自社の商品やサービスに思いを込めますよね。しかし、対消費者という観点においては、一方的な情報発信だけではなかなか受け取ってくれません。私たちは、顧客と企業の架け橋となるインフルエンサーを巻き込みながら、一緒に事業開発をしています。そうすることで、消費者に伝えたい情報が双方向的に広がっていくのではないかと考えています。
増田:今後も「関係性」は重要なテーマになると思いますが、鬼木さんの見立てはいかがですか。
鬼木:先日、日本マーケティング協会による「マーケティングの定義」が変わったのをご存じですか。シンプルに言えば「価値交換の仕組みづくり」から「ステークホルダーとの関係性を持続させること」に定義づけられました。さらにその結果ではなく、構想とプロセスこそがマーケティングであるとしています。私たちが追求していることは間違いではなく、これからの時代に必要なことなのだと改めて思いました。
増田:3つ目のキーワードとして、「戦わないマーケティング」も有り得るのではないかということをお二人に聞いてみたいと思います。
大広 マーケティングデザイン局2プランニンググループ 部長 兼 ミラストプロジェクト リーダー 増田浩一 氏
鬼木:マーケティングでは歴史的に戦時用語を使ってきたので、「戦略」という言葉が当たり前にあるし、相手のことは「ターゲット」と言います。これまではカテゴリーがはっきりとした市場の中でシェアを取り合う「戦うマーケティング」でした。しかし今は、その境界線が分からなくなってきています。そう考えると、戦うよりも、共創・共感の方が大事なのではないかと思います。
赤谷:いかにファンを巻き込み、対話をしながら、彼らが求めていることは何なのかを見つけ出していくことが重要です。対話を通じて価値共創することにより、戦わなくてもおのずと市場を取ることができるのではないでしょうか。
増田:最後に、対話を通じてどのように価値共創していくのかを教えてください。
鬼木:一度広告を打ち、成功した、失敗した、ということではなく、何度も繰り返しお客様と会話を続けていく。まさに「対話」を続け、お互いアップデートしていくことが大事なのではないかと考えています。対話を重ね、企業も社会も顧客も、みんなが賛同できる価値のど真ん中を見つけ出すための手法が求められているのではないでしょうか。誰の声を聞くのか、どういう場面で知るのかなど、いろいろな技術が必要になってきます。私たちはそれをさらに磨きたいと思っています。
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