「NEC像」を形成する、デザイン組織のあり方とは?

メディア環境、市場環境が変化を遂げる中、生活者とブランドの接点をつくり、さらにその関係性を深めていくマーケティングやコミュニケーションにかかわる仕事の難易度はますます高まるばかりです。現在発売中の月刊『宣伝会議』8月号では「人材・組織・施策の課題と戦略2024」をテーマに、広告・マーケティング部門の責任者の皆さまに現状の課題や、その課題を解決するための構想を聞きました。毎年恒例の本企画ですが、変わらずにある課題が、人材育成や組織開発に関わるテーマです。そこで今回新たに、コミュニケーションに関わる部門の組織を大きく変え、全社、そしてステークホルダーを巻き込む取り組みを行っている2つの企業に話を聞きました。
 
※本記事は、8月1日発売の月刊『宣伝会議』9月号に掲載いたします。
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冨岡秀樹氏

NEC
コーポレートブランド戦略部

約20年間のキャリアを通して家電や自動車のマーケティングに従事。2013-2015年にインドへ赴任。2021年にNECへ中途入社。コーポレートブランディング部 上席ブランド戦略統括を経て、2024年4月より現職。

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井手裕紀氏

NEC
コーポレートデザイン部

1999年からNECにおいてデザイナーとして活動。プロダクト・サービス・ブランディングなど幅広い業務に従事し、2018年よりデザイン組織のマネジメントに。デザイン組織の格上げや全社のデザイン機能の再編を行い2022年4月より現職。

NECでは1958年にデザイン部門を創設し、長年にわたり「デザイン思考」を実践してきた。プロダクトデザインのみならず、新規ビジネスの創出や業務改革においてそのメソッドを体系化し活用してきた同グループだが、2022年、従来のデザイン機能を大きく再編した。

普遍的なパーパスを激変する環境の中で伝えるために

NECは2022年、ブランディング・コミュニケーション・デザインの3機能を経営企画部門の直下に設置した。一貫した「NEC像」を形成し、企業価値向上を実現させることが目的だ。

2010年代以降、PCや携帯電話といったBtoC製品の製造販売から、事業ドメインをBtoB、BtoGの「社会ソリューション」へとシフトしていった同社。これにより、これまでのようなプロダクトを通した認知から、NECという企業そのものに「共感」してもらうことが大切になったと冨岡氏は話す。そうした中で2021年5月に掲げたのが、「NEC 2030VISION」と「2025中期経営計画」だった。

ここで示されたのが、同社の「パーパス」「戦略」「文化」を企業活動の柱として、三位一体で伝えていくという方針だ。

「第一に必要なのが、その『パーパスを軸とした一貫性のあるブランディング』です。しかしそれだけでは、昨今の急激に変化する市場や社会、競合他社の環境、そしてお客さまのニーズに100%応えていくことは難しい。そこで第二に必要なのが『経営戦略と一体化したブランディング』で、最新の経営戦略と外部環境との整合性を合わせた、時間軸のあるブランディングです。そして第三の視点が、「誰に・何を」伝えるかを定めること。「顧客」「パートナー」「市場(投資家)」「社員」「未来の社員」の5つを主要なオーディエンスとして、具体的な行動変容につながるアプローチを設定していきます」(冨岡氏)。

パーパスは普遍的なもの。しかし常に変わり続ける環境や、多角的なステークホルダーに対して、最も適したブランドのあり方や伝え方は変わってくる。経営企画の直下にコミュニケーション部門があることにより、インサイトを元にあるべきブランドの姿を言語化し、そして経営戦略と連携。定まった方向性を、さらに社内外へと示していくのだ。

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