エンジニアやデータサイエンティストほどの専門職は目指さなくても、テクノロジー知識を自身の仕事に生かせる人になるためには、どんな勉強やキャリアづくりが必要なのでしょうか。全4回にわたり、ビジネスの最前線で活躍する「TECH人材」に、これまでの学びや自身のキャリアに対する考え方、実践について話を聞きます。第1回はパナソニックの乗峯笙汰さんに話を聞きます。
※本記事のインタビュアーは、DX人材育成のオンラインスクールを運営する、Tech0の前田諒氏と斎藤貴大氏が務めます。
<乗峯さんのキャリアの軌跡>
〇ものづくりが好きで、大学は電気電子情報工学を専攻。
〇日本企業は「技術の活かし方が下手」という危機感を抱き、大学院では技術経営を学ぶ。
〇新卒で入社したパナソニックでDXメンバーにアサインされる。
〇社外のDX人材とコラボできる場に参加をし、日本の製造業の活性化に貢献することを目指す。
モノづくりが好きで選んだ学部、リーマンショックで見えた製造業の課題
前田:乗峯さんの経歴を教えてください。どのような動機でパナソニックに入社したのですか。
乗峯:私は大学では電気電子情報工学を専攻していました。昔からモノづくりに興味があって特に電機が好きで、家電量販店にはよく通ってましたね。私が高校2年生のころ、リーマンショックが起きて日本の製造業も大打撃を受けました。私が大学に進学してからも続いており、当時、「日本の技術、モノづくりは終わった」という風潮が強くなっていったことを記憶しています。
確かにリーマンショックの影響や円高、中国や韓国メーカーの台頭によって、日本を代表するモノづくり企業が苦戦を強いられました。しかし、当時の私から見た時に、それは日本企業の技術力が衰退したことが原因だとは思えませんでした。大学にも優秀な先生や学生が周りにいましたし、当時流行りはじめていたiPhoneに使用されている部品は半分以上が日本製だと聞いていたからです。
モノが足りなかった時代からモノが溢れる時代に変わり、モノを通して消費者にどんな“体験“を届けるのかを考える必要性がありました。当時の私はここまで解像度は高くありませんでしたが、「技術の使い方、活かし方を上手くやれば、まだまだ日本は戦えるのでは?」と考えました。
そんな問題意識を抱えていたので、大学院では専攻を変えて技術経営を学びました。その後、ITベンチャーを始めいくつかの企業のインターンに参加しましたが、やはりモノづくりに貢献したい、そのためにはメーカーでの経験が必要だと思い、パナソニックに就職しました。
前田:僕は高専でものづくり工学を学んでいたので、モノづくりに対しての考え方に共感します。入社されてからの業務内容について教えてください。
乗峯:バッテリーの研究開発部門に配属され、車載用次世代EVバッテリーパックの開発に携わりました。自分で考えたものを作り出すことは面白いのですが、一方で最終的にはコスト競争になりがちでして。ハード面には確かな技術力があるけれど、ソフト面・お客さまの課題解決に繋がるデザインの話となると、なかなか進まない状態です。
そんな折、新規事業としてDXプロジェクトを立ち上げることとなり、私を含めて各部門からメンバーが集められました。DX推進を検討している企業の多くに見られる傾向ですが、何から始めたらいいのか、ゴールがどこなのかも分からずに打ち合わせをするだけの日々が続き、強い危機を覚えました。大学生の頃に感じた、『日本は技術の使い方、活かし方が下手なのでは?』という思いが強まるばかりで、そこからどうすれば抜け出せられるのか、が分からなかったんです。
私が迷い悩んでいた時、大学時代の先輩である濵田さん(Tech0代表取締役 濵田隼斗)と話をする機会があり、濵田さんも同じ想いだと分かりました。自社だけの話じゃありません。このままでは『日本は持ち前の技術力を活かすこともできず、DX後進国になってしまう』と。そこから議論を尽くし、DX人材育成オンラインスクールであるTech0の活動に参画することにしたのです。