【前回はこちら】原点はオグリキャップ? 「人を動かす」力がマーケティングの面白さ
──佐賀大学の数学科を卒業後、ベネッセコーポレーショングループの編集プロダクションに就職されたそうですが、理系の学生の進路としてはなかなか珍しい選択だったのではないでしょうか。
そうかもしれませんね(笑)。でも、私は「進研ゼミ」の東大・京大を目指す受験生向けの数学の教材編集を担当し、その後は教材のプロモーションを担当していたので、数学の知識がけっこう役立ったんですよ。例えば、二次関数って覚えていますか?
──ええ、ありましたね。
受験生向けの広告やダイレクトメールに教材誌面の見本を掲載するのですが、私が担当する以前は二次関数のページをサンプルとして載せていたんです。放物線のグラフの形が、いかにも数学っぽくて見栄えがいいですし、なにより最初に習う単元ですからね。
でも、二次関数の問題はそんなに難しくない。受験生がよくつまずくのは、実は数列の問題だったりするわけです。だったら数列のページをサンプルにした方がいいんじゃない?と私は思ったのです。受験生の興味関心を引くツボが、手に取るようにわかったというか。
ヤマップ 執行役員 安全推進事業部長
小野寺洋(おのでら・ひろし)氏
1997年に佐賀大学理工学部数学科を卒業後、ベネッセコーポレーショングループの編集プロダクションに入社。『進研ゼミ』などの教材編集、販売営業に携わる。2003年広告制作のジェリーフィッシュへ転職。化粧品通販のJIMOS、ネスレ日本などでダイレクトマーケティングの経験を積んだのち、2019年にヤマップ入社。2022年より執行役員。
──ということは、会社のなかでもエース級の存在だった。でも転職することになったのは、何かきっかけがあったのですか?
率直に言うと、新しい刺激が欲しくなったんです。
私はもともと、飽きるということをネガティブにとらえていません。アップルの創業者、スティーブ・ジョブズの「『今日が人生最後の日だとしたら、今日やる予定のことは本当にやりたいことか?』と自問して、『ノー』の日が続くなら何かを変えるときだ」という、あのスタンフォード大学での有名なスピーチが好きで。「何かに飽きたときは、何かを変える良いチャンス」なんだと思っています。この言葉に背中を押されて最初の転職をしましたし、その後もずっと、キャリア形成の指針にしています。