Instagram広告は視聴率にどう影響する? テレ東の番宣における視聴者獲得数(視聴CV)を検証

放送局における番組プロモーションの手段は多様化。テレビ東京でもマーケティング局が中心となり、新時代の“番宣”に取り組んでいる。そんな同局が注目したのは、Instagram広告だ。加えて、今回は出稿に合わせて、Instagram広告における視聴者獲得にむけた効果の可視化に挑戦。Meta社のデータクリーンルーム「Advanced Analytics」と博報堂DYメディアパートナーズが提供するAaaSのデータを突合させることで、広告に触れた人の番組視聴者数を実数で割り出すプロジェクトの全容を追った。

写真 人物 博報堂DYメディアパートナーズ

写真左から、テレビ東京 マーケティング局 前田有花氏、Meta Agency Partner Manager 鈴木陽子氏、博報堂DYメディアパートナズ TV AaaS Lab 安田凛氏

テレビ×Instagram広告の「勝ちパターン」を見つけたい

――今回のプロジェクトの概要について教えて下さい。

安田: 私たちTV AaaS Labでは、放送局が有するコンテンツの価値発掘や、マーケティングの高度化支援を行っています。その取り組みのひとつとして、テレビ東京さんのInstagram広告における番宣効果の可視化に挑みました。今回の目的は、放送局の番組プロモーションにおけるInstagram広告の“勝ちパターン”を見つけることでした。データ分析の対象にしたのは、2月に放送されたドラマ「ブラックガールズトーク」とバラエティ番組の「出川哲朗の充電させてもらえませんか?祝!哲朗“還暦”SP」の2つ。ターゲットやユーザーの興味関心、表示場所などによって番組宣伝の効果に差があるのかを分析しました。

AaaS(*)の分析環境を活用し、視聴CVとなる地上波の視聴データと出稿データを、Meta社のデータクリーンルーム「Advanced Analytics」で突合。広告接触後の地上波視聴CVを実数推計しました。

(*)博報堂DYグループが2020年12月より提供を開始した「AaaS (Advertising as a Service)」は、「枠から効果へ」を標榜し、統合的なメディアプラニングから、広告枠のバイイング、広告効果のモニタリングをワンストップで支援することでマーケティング戦略上、最適な広告メディアの活用を可能にするサービス。

前田:テレビ東京ではこれまで、番宣広告の出稿先として様々なメディアを検討してきました。かつては番宣と言えばターミナル駅に掲出されるポスター広告の反響が大きかったのですが、ここ数年はデジタル広告での発信を強化してきました。そうした取り組みを通じて、「ドラマとInstagramは相性がよい」という傾向が肌感覚では見えていました。そこで、地上波放送への誘因にInstagramは定量的に有効かを調べてみることにしたのです。特にSNSへの投稿だけでなく、広告の活用については番組視聴に与える影響が仮説の域を出ていませんでした。その様な中で今回、AaaSを活用し、その影響を可視化できるのは非常に大きな進歩だと考えました。

視聴秒数が全体の25%を超えると番組の視聴リフト率が向上

――Instagram広告を出稿するにあたって工夫した点と結果についてお聞かせください。

前田:「ブラックガールズトーク」「充電させてもらえませんか?」の両番組で、共に縦型のクリエイティブを用意しました。

特に「充電させてもらえませんか?」は、出川哲朗さんの還暦を祝うスペシャル回の放送告知だったこともあり、現場でのサプライズバースデー動画や、過去の名リアクション集などのオリジナル動画を制作しました。それらは通常の予告編を縦型配信したドラマのクリエイティブに比べ、高い広告効果を得られました。具体的には、広告がリーチした方の5%、実に21万人もの方が番組を視聴されたことが推計で明らかになりました【図1】。この数字は、関東地区の個人視聴率1%がおよそ40万人といわれることを考えても、相当なボリュームだといえます。CPAも低く抑えることができ、他のデジタル広告やOOH広告と比較してもコスパのよい広告であることも確認できました。

イメージ グラフ 図1 Instagram 広告接触による視聴リフト

さらにInstagramのアカウントに動画を投稿すると、広告期間が終わった後もオーガニックで動画が再生されていきます。実際に、広告なしで何百万もの再生につながっている番組動画も存在しています。

鈴木:これまでにも推奨してきたことなのですが、やはりInstagram向けのオリジナル縦型動画を制作していただいたことが、よい結果につながったと感じます。今回の分析結果から、広告の視聴秒数がクリエイティブ全体の25%を超えると番組の視聴リフト率が向上することも判明しました。

――今後の展望をお聞かせください。

前田:Instagramの利用者は多様な方に広がっているため、ドラマやバラエティのみならず、今後は同様の試みを報道コンテンツでも仕掛けてみたいです。私たちテレビ局にとって今、大事なことは、地上波放送とデジタル配信の両方を視聴してもらうこと。テレビ東京がコンテンツ配信を行っている「TVer」でもデジタル広告での視聴CVの計測をしてみたいですね。

また今後はデジタル広告だけでなく、OOH広告のように効果測定がしづらいものに関しても視聴CVについての調査ができたらと考えています。

鈴木:今後も「広告を配信したら終わり」ではなく、AaaSと連携して、視聴CVのような難しい広告効果のPDCAにも挑戦していきたいと思っています。

安田:今後の展望としては、放送や通信、OOHなど、媒体を統合したPDCA環境を構築し、放送局をはじめとした様々なコンテンツホルダーのマーケティング支援をしていきたいと考えています。

編集協力:博報堂DYメディアパートナーズ

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