活用の場広がる「動物CG」
3DCG/VFX プロダクション・グリオグルーヴ内の、動物の CG に特化したチーム「LiNDA ZOO」でディレクターを務めている井上順さん。日清紡の動物が登場するシリーズなど、さまざまなCMで動物のCG制作とクオリティ管理を担当している。
元はゲーム会社の出身。『サイレントヒル』『ウイニングイレブン』といった人気作を手がけ、そこからリンダに参画した。
「動物のCG制作は、毛の描写や体の動きの仕組みづくりなど、CG制作の中でもかなり高い技術が求められます。5、6人のチームでフェーズごとに分担をして進めています」と話す。
動物のCG制作の依頼は、制作会社経由で来ることがほとんど。井上さんやチームメンバーで監督から希望内容を聞き、それを元にイメージを膨らませていく。「クライアントや各メンバーで、想像している完成形が少しずつ異なることも多い。軸となる動物の写真やアニメーションなどを共有しながら、イメージを擦り合わせて解像度を高めていきます」。
クライアントからのオーダーは、「実際の動物に忠実なリアルなCG」か、作風に合わせて「デフォルメされた動物のCG」かのいずれかだ。ヒアリングなどを経てある程度イメージが固まった時点で、軸となる動物の写真や映像からモデリング(3D空間内に立体物を形成)をし、そこに毛や皮膚の表面の質感などのニュアンスを加えていく。
資料が少ない場合は、自ら動物園などへ行き取材をして集めることも。続いてモデリングしたオブジェクトを動かす仕組みをつくるリギングを行い、それを映像にするレンダリング、光の当たり方を調整するライティングなどを経て完成に近付いていく。
動物のCGの制作過程。
またCMでは、背景のみ実写ということも多く、その写りによってCGオブジェクトの色味や光の当たり方も変わる。「背景の撮影にも立ち合い、CGの動物が登場する環境や光の当たり方に合わせて最終調整を行います」。
広告表現において、CGの動物の出番も増えているという。日清紡では、2019 年のマレーグマが登場するCMは足の一部のみCGが使われていたが、最新の「アザラシ」篇のアザラシはフルCGで制作された。「段々とCGを信頼してもらえていて嬉しいですね。演技の幅も広がるので、ぜひ積極的に活用してもらえたら」と話す。 動物のCGの制作過程。
【参考】
個人制作としても動物の CG を制作することもある井上さん。今後は「実在する動物をベースにした CG だけでなく、一からCG キャラクターをつくることにも力を入れていきたい」と話した。
井上さんが個人制作したCGのワシやミーアキャット。