「マーケティングPR」の基本と最新事例―宣伝会議の専門誌サマリー

株式会社宣伝会議では、1954年創刊の月刊『宣伝会議』を皮切りに、マーケティング、広報、クリエイティブの領域で4つの専門誌を毎月刊行しています。各専門誌には最新の事例から、マーケティングに関わる基本用語まで、多種多様なコンテンツを掲載。
本記事では、マーケターが知っておきたい「マーケティングの基本用語」を月刊誌で紹介の記事・事例をもとに解説していきます。

はじめに

インターネットの登場以降、必要とされる「マーケティングPR」

企業が一方的に自社の商品の魅力を伝える「広告」だけでは、SNSを通じて大量の口コミ情報に接する消費者の行動を喚起し、商品の購入に至らしめるのは、難しくなっています。マーケティング・コミュニケーション活動の中でも「広告」以外の手法をうまく取り入れることが求められており、そこで「マーケティングPR」が注目されるようになりました。

マーケティングPRとは?

マーケティングPRは大きくは、企業がマーケティング・コミュニケーション活動を展開するに際して、有料の媒体を購入してメッセージを届ける「広告」以外の手法を指します。一般的に、消費者の口コミやテレビや新聞などのメディアに記事として取り上げられるパブリシティなどを活用することを意味します。

ここで言う「広告以外の手法」とは、「トリプルメディア」という概念を用いて解説すると、わかりやすいです。トリプルメディアは和製英語で、「ペイドメディア(広告)」「オウンドメディア」「アーンドメディア」の3つで構成されます。

そして、この広告費を「支払う(Paid)」メディア、自分たちが「所有する(Owned)」メディア、第三者の口コミ、メディアのパブリシティなどを通じて評判を「獲得(Earned)」するメディアの3つを組み合わせた統合的なマーケティング・コミュニケーションが現在のマーケティング活動には必要とされています。

イメージ トリプルメディアを駆使したコーポレートブランディング戦略とは(月刊『宣伝会議』2017年5月号より引用)

トリプルメディアを駆使したコーポレートブランディング戦略とは(月刊『宣伝会議』2017年5月号記事より引用)。

引用元記事

※本記事は一部有料になります。

マーケティングとマーケティング・コミュニケーション

マーケティング活動は4つのP(Product、Price、Place、Promotion)で構成されると言われます。マーケターはマーケティング戦略の企画・実施に際して、この4つのPについて考える必要があります。

具体的には魅力的な「Product」を開発すること、その商品の適切な「Price(価格)」戦略を考え、どのような「Place(販路)」で販売すべきか?ターゲット顧客の戦略に基づき、企画していきます。

そして、マーケティング戦略の中でも特に重要なのが「Promotion」で、このプロモーションの中に広告やパブリシティ獲得のための施策ほか、セールスプロモーション、人的営業などの手法が含まれます。そして、これらプロモーションに含まれる各施策を「マーケティング・コミュニケーション」と呼びます。

日本においては、高度経済成長期を中心にマス広告でより多くの人に伝えることが、商品の売上につながりやすい環境が続き、かつテレビを中心に人々のアテンションが一極集中するメディア環境が長く続いてきたことで、プロモーション戦略の中でも広告、ペイドメディアの活用が重点的だったと言われてきました。

広告以外のマーケティング・コミュニケーションがより必要とされてきたのは、インターネットやSNSが登場・浸透して以降です。

■マーケティングPR事例

1.UGCを活用、資生堂の「美容液ファンデ」
資生堂では2024年4月、「彩る美容液、という奇跡。」をキーメッセージとした「ファンデ美容液」の新カテゴリーを提案するコミュニケーションを開始しています。

今回「ファンデ美容液」のカテゴリーで打ち出されたのは、美容液の中にファンデーション成分を閉じ込める同社独自の「セラムファースト技術」を搭載した2023年発売の「SHISEIDO エッセンス スキングロウ ファンデーション」と2022年発売の「マキアージュ ドラマティックエッセンスリキッド」で、同社にとって複数ブランドを横断でプロモーションを展開。2商品は、新製品ではないが、SNS上で「もはや美容液だ」という口コミが増えていたことから、この口コミをコンセプトに採用。

2024年4月2日のメディア発表会を皮切りに、各種広告を大々的に展開。このとき広告予算の約3割を、これまでに実績がありROIが図れる施策でなく、オーガニックな発話を拡散させていくためのチャレンジングな新施策に投下しています。またTikTokなどのSNSも活用していました。

イメージ バナー 「SHISEIDO エッセンス スキングロウ ファンデーション」と「マキアージュ ドラマティックエッセンスリキッド」

UGCから生まれた新カテゴリー「ファンデ美容液」の共創マーケティング戦略より引用(月刊『宣伝会議』2024年9月号)。

2.グルテンフリーで時代に合った訴求、ケンミン食品の「ビーフン」

1950年に神戸で創業した、ビーフンメーカーのケンミン食品は、国内ビーフン市場の約50%のシェアで日本一を誇ります。ビーフンの特徴は麺類でありながら、小麦を使用せず、米粉を使っている点。同社では売上のメインとなるビーフンのほかにも、フォー、ライスパスタ、ライスペーパーなど米を原料とした加工食品を製造しています。

近年、欧米ではグルテンフリーがトレンドとなっていることから、2022年には米粉でつくったグルテンフリーで本格的な中華麺を開発し、グルテンフリーラーメンや焼そばも販売。オウンドメディアを通じた、レシピ提案を行うなどして、グルテンフリー食材としての米粉、ビーフンの価値を発信しています。

イメージ 商品 ライスパスタ

社会の潮流に合わせ、グルテンフリーで訴求 、米麺の価値を広げる「県民食費カテゴリーPRより引用(月刊『宣伝会議』2024年9月号)

マーケティングPRの注意点

アーンドメディアに含まれるのは、メディアという第三者が取り上げてくれるパブリシティの他、現在の環境で外すことができないのが、消費者の口コミによる発信です。しかし、消費者がポジティブな口コミをしてくれるかどうかは、企業側にコントロールできないことです。バズのきっかけとなるネタは提供できても、実際に話題になるかどうかは、ある意味で商品力次第な側面があります。

これを無理にコントロールしようとすると「ステルスマーケティング」という違法行為になりかねません。企業が金品などを渡して、SNSでの発信力の高いインフルエンサーに自社商品について発信をしてもらっているにもかかわらず、その関係性を明示しないで、あたかも自然な口コミのように見せる行為は、ステルスマーケティングと認定され、景品表示法の違反行為に該当してしまいます。

また、広告費の一部をPRに割いた場合、広告のように露出面は確保できないので、これもまた企業にとってはマーケティング・コミュニケーション戦略の不確実性を高めることになりかねません。

これらのリスクを踏まえ、またPRというものが持つそもそもの特性を理解したうえで、マーケティング・コミュニケーション活動にマーケティングPRを取り込んでいくことが必要と言えます。

月刊『宣伝会議』2024年9月号では資生堂、ケンミン食品以外にもマーケティングPRの最新事例を紹介しています!

advertimes_endmark

イメージ バナー 月刊『宣伝会議』2024年9月号


この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ