私は現在、「モスバーガー」を展開するモスフードサービスで、社長室長という立場で、秘書、広報、IR、サステナビリティなどの業務を統括しています。広報には2008年から携わっていて、自身のキャリアでは最も長い職種となりました。
本コラムでは、個人株主にいかに企業のファンになっていただくかをテーマに、当社の現在進行形の取り組みを紹介していきたいと思います。第1回の今回は、株主に限定せず、当社とステークホルダーとの関わりについてご紹介します。
創業者の考えを軸にした不変の価値観「モスの心」
当社は1972年の1号店オープン以来、創業者である故・櫻田慧氏の考えを大切にして企業経営を行っています。2016年にそれまでいくつかあった創業者の想いを再整理・体系化し、4つの言葉からなる「ピラミッド型」の経営方針を定めました。
これは、当社が企業として掲げるものであると同時に、当社グループで働くすべての人が大切にする不変の価値観「モスの心」と定義づけ、理念に重きを置いた経営を推進しています。
モスフードサービスが掲げる経営方針。(出典:モスフードサービス)
当社では、この「モスの心」をベースに、自社の差別化ポイントを「おいしさ」「地域密着」「世の中の新」と定義づけています。広報の発信においては、この3つのポイントと、それを支えるステークホルダー、さらには社会的な意義など、関係者すべてを巻き込み、企業の人格を伝えることを心掛けています。
3つの差別化ポイントの詳細については次の通りです。
①おいしさ
モスバーガーの「おいしさ」は生産から販売まであらゆるバリューチェーンによって支えられています。モスバーガーで使用する生野菜はすべて、当社が独自に関係を構築した全国117産地、2379軒の契約農家で農薬や化学肥料の使用を継続的に削減する姿勢を持つ農家さんによって栽培されているものです。
それぞれの産地では、GAP※指導員資格を持った本社社員が農場の管理状況を確認するとともに、生産者との対話を大切にしています。極力、農薬や化学肥料に頼らない野菜は「モスの野菜」として高評価をいただき、一部スーパーでも「モスブランド」で販売を行っています。
また、モスバーガーは日本で生まれた日本の企業です。醤油や味噌、出汁など日本の食文化を活かした商品開発を心掛けています。
試作したメニューをチェーン全体に届けるためには食品工場での工夫が不可欠なため、試作品と変わらぬ品質の維持は取引先のメーカーの皆さんに担ってもらっています。
そして実際に商品をお客さまに提供するのは店舗スタッフです。丸のまま店舗に届けられたレタスなどは1枚1枚洗浄し、4℃の冷水で締めてシャキシャキ感を出します。また、オーダーを伺ってから商品を組み立てるなど、熱いものは熱く、冷たいものは冷たい状態で提供することを心掛けています。
この一連のバリューチェーンこそが当社の強みである「おいしさ」という価値をつくり上げています。
創業以来、不動の人気を誇るモスのテリヤキバーガー。レタスなどは店舗で1枚1枚洗浄し、4℃の冷水で締めてシャキシャキ感を出している。