参加者全員でつくりあげる、コピーの世界を広げるための「宣伝会議賞」

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三島邦彦氏

電通
コピーライター

第62回「宣伝会議賞」から初めて最終審査を務め、かつ自身も「宣伝会議賞」への参加経験があるコピーライターの三島邦彦氏。2024年3月、コピーライターとして言葉に向き合う際の姿勢を綴った著書『言葉からの自由』(宣伝会議)を刊行した同氏に、「宣伝会議賞」について、さらに言葉への向き合い方について話を聞きました。
※本記事は、月刊『宣伝会議』10月号に掲載されているものを一部抜粋しています。

「競技コピー」で蓄えた力で「ビジネスコピー」を発展させる

――三島さんご自身がコピーを書く時に大切にしていることは何でしょうか。

一番大切にしているのは、「自分が本当に思っていることを書く」ことです。仮に自分自身がターゲットではなく、その商品の良さを実感しづらい場合であっても、何かしら商品・サービスに関心を持てる部分はあるはず。

そういう考えでいるからでしょうか。ほかの人がつくったコピーを見ていても、「面白い」「かっこいい」など、表現や技巧に対する興味よりも、「本当にそうだな」という気持ちを抱けるコピーが好きです。

もちろん、広告コピーに技巧がいらないわけではありません。技術的な部分では、「できるだけ短く書く」ようにしています。

基本的にコピーは人に覚えてもらえたほうが良いので、もしひとつの単語で表すとしたらどうなるかとか、一文字でも短くできないかと、常に試行錯誤しています。

もうひとつ大切なのが新しさです。しかし、言葉を短くしようとすればするほど、新しい表現を生み出すのは難しくなります。僕は単語そのものを新しくつくるのではなくて、シンプルな単語と単語の組み合わせの新しさを追求するようにしています。これにより理解しやすく、かつ新鮮な響きを持たせることができるからです。

特に「宣伝会議賞」のキャッチフレーズ部門はテキストだけで審査されます。一般的な広告賞の場合には、ビジュアルも含めた広告物として総合評価をされるので、「宣伝会議賞」ほど突き詰めた形でテキスト単体が審査されることはないと思います。

それゆえ最終審査まで残っていく作品は、“まだそんな場所が空いていたのか”と感じられるような、分かりやすくて面白いゾーンにある言葉なのだと思いますし、それがコピーのひとつの理想的な姿だとも思います。

――書籍『言葉からの自由』では、「競技コピー」と「ビジネスコピー」の違いについて触れていました。

本の中では、「公募の課題をもとに書かれるコピーを競技コピー、クライアントビジネスから生まれるコピーをビジネスコピー」と分類しました。

そもそも「広告」も「コピー」も経済活動の一環であり、ビジネスと切り離すことはできませんが、「宣伝会議賞」のような公募広告賞で言葉の技術や視点を見つける力を蓄え、実務でその力を発揮する人が増えてほしいと思っています。

「宣伝会議賞」は競技コピーの祭典ですが、協賛企業が具体的なビジネス課題を提示してくださるので、経済活動の一環としてのビジネスコピーを書く力を磨く場としてとても有用だと思います。

――「宣伝会議賞」に初めて挑戦する人は、まずはどのようなことから始めたらよいでしょうか。

様々な企業の課題があるので、自分の日常に関係のある商品・サービスがひとつぐらいはあるはずです。まずはその課題について書くことから始めてみてください。自分に関係があるということは何かしら思い出や経験があるはず。前から思っていたことや言いたかったことを素直に言葉にすると、そのままコピーの形になることもあります。

先ほども「新しさ」について触れましたが、自分が言いたいこととか伝えたいこと自体は、別に斬新な意見である必要はないんです。コピーとしてアウトプットする時に、新しい言葉の組み合わせはないかとか、今までにない伝え方はないかを探すこともまた「新しさ」だと思います。

よいコピーを書くためには、過去の優れた作品を見て学ぶことはもちろん大切です。その一方で、新しい「傾向」をつくりださないと、コピーの世界が発展していきません。

100本書くのであれば、いわゆる「傾向と対策」に従ったものを半分、挑戦も込めて無邪気さを出したものを半分、というふうに書き分けてみるのもよいと思います。

――普段、仕事でコピーライティングに向き合っている人は、「宣伝会議賞」をどのように生かしたらよいでしょうか。

普段はいろいろな制約の中で考えることを求められて、自分が純粋によいと思ったコピーがそのまま世に出ることは少ないと思うんです。「宣伝会議賞」は年に一度、自分がやりたいことを確かめるための機会と捉える。僕も昔はそんな思いで挑戦をしていました。

たとえ審査を通過しなくても、いろいろな書き方を試したり、頭の働かせ方を試行錯誤すること自体が、コピーライターとして必ず役に立つと思います。

――「宣伝会議賞」に参加する皆さんにメッセージをお願いします。

ちゃんと食べてちゃんと寝て、その上で限界まで考えぬいてみてください。ひとつの課題を、これ以上考えられないというくらい熟考する経験は実務ではなかなかできないこと。

いちど徹底的に考え抜いてみると、自分が限界と思っていた枠から、飛び出せます。そうして一人ひとりの限界が広がっていくことが、コピーそのものの限界を広げることにつながるのではないでしょうか。

「宣伝会議賞」は個人プレーですが、参加者全員で、広告やコピーの世界を広げていく活動だと思います。そこにぜひ、加わってみてください。

第62回宣伝会議賞特設サイトはこちら:https://senden.co

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