消費者はネット上で商品評価の確認を
5日のコラム「『前払いクーポン割引サービス』で“おせち事件”はなぜ起こったのか」は非常に大きな反響を得た。記事の内容は、そもそもおせち料理の通販という商材がこのビジネスに適していないために起こってしまった構造上の問題を指摘したものである。
筆者はこの「前払いクーポン割引サービス」が流行すると見込んで、今までに4本の記事を書いてきた(脚注に記事へのリンク掲載)。このモデルはうまく回ればメリットが大きいと考えている。今後、健全にサービスを提供するために、消費者、サービス提供業者、クーポン業者、マスコミ、行政それぞれが、どのようなことに気をつければよいか考えてみたい。お断りしておくが、本記事は今回起こった事件の当事者を非難もしくは弁護するものではない。
まず消費者は以下のポイントをチェックするべきだろう。(1)その商品は本当に、通常定価で販売されているものか。ホームページや関連サイトでの評価を見るべきである。(2)通販型の商品や返品できない生もの、継続性のない商品には手を出さないこと。(3)サービスの提供を受けたあとは、その評価をインターネット上で何らかの形で行うこと。良い場合も悪い場合も書くことによりネット上に資産として残すことができる。今回の事件もグルメ情報サイトへの投稿が発覚のきっかけであったようだ。
事業者、行政、マスコミらの取り組みが健全な市場発展に必要
サービス提供業者は、クーポン販売で直接利益を追求しないことである。リピーターの獲得や店舗の知名度向上、インターネット上での評判の獲得などを通じた間接利益を狙いとすることが重要である。利益を追求するには仕入れや経費を削る必要があり、モラルハザードに陥る可能性が高いので要注意。また、そのような対応では決して評判は上がらないために長期的には経営は苦しくなるだろう。
クーポン事業者は提供する商品やサービスの事前チェックを厳格化するとともに、サービス提供後の評価をオープンにするべきだ。地域ごとの営業員がノルマに追われ、チェックせず業者と現存しない商品を構築するということが一番懸念されるので、後述するが行政(消費者庁)も何らかの監視基準を設けるべきと考える。参入障壁が低い業態だけに、悪質なクーポン乱立を阻止する方策が必要である。
マスコミは消費者が混乱しないように、サービスの名称を考えるべきだろう。「共同購入クーポン」は実態と違うので筆者は「前払クーポン割引サービス」を提唱したい。
行政はサービスの監視機能を考えるべきだろう。筆者は規制推進派ではないが、何らかの指針を設けてそれを満たしているかを明示化することによって、消費者に業者の適正を伝える仕組みが考えられないだろうか。
筆者は今回の事件は単なる商品の問題ではなく、社会がソーシャル化に向かっている中での一つの象徴的な出来事であると考えている。企業がソーシャルメディアを利用したビジネスや、マーケティングを行う上での多岐にわたる問題点を浮き彫りにしてくれたからである。その意味でもこの業界の動向を注意深く観察したいと思っている。
《関連コラム》
「前払いクーポン割引サービス」で“おせち事件”はなぜ起こったのか(1/5)
クーポン共同購入サービスが流行する理由:2(12/22)
クーポン共同購入サービスが流行する理由:1(12/15)
【参考記事】クーポン共同購入、米社参入で市場活性化(8/25)
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