「子ども新時代」に向けてこれからも尽力—尾木直樹氏(「私の広告観」出張所)

月刊『宣伝会議』では、社会に大きな影響を与える有識者が、いまの広告やメディア、コミュニケーションについて、どのように捉えているのかをインタビューする企画「私の広告観」を連載中。ここでは「私の広告観 出張所」として、インタビューの一部や誌面では掲載しきれなかった話をお届けします。今回登場するのは、バラエティ番組の出演がきっかけでブレイクし、「尾木ママ」の愛称で親しまれる教育評論家で法政大学名誉教授の尾木直樹さんです。
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尾木直樹さん

1947年滋賀県生まれ。早稲田大学卒業後、中学校・高校の教師として22年間子どもを主役とした創造的な教育を展開。その後大学教員に転身し、合計44年間教壇に立つ。現在は法政大学名誉教授、東京都立図書館名誉館長。「尾木ママ」の愛称で親しまれ、様々なメディア、SNSでも活躍中。教育や子育てに関する著書は230冊を超え、全国各地への講演活動にも精力的に取り組んでいる。

Q.早稲田大学の教育学部を卒業された尾木さん。教員になろうとしたきっかけは何でしたか。

もともと学生時代は、教師に対して良い印象がありませんでした。体罰を受けたり、中学・高校と先生に対して嫌悪感を抱くようなことばかりで、将来は教師にだけはなるまい、とすら思っていたんです。

しかし大学4年生になり就職先に悩みつつ、最初はマスコミを志望していたのですが、「直樹に一番向いているのは、学校の先生だよ」と母親から声をかけられました。

母は、心が傷つくような体験をした中高時代の僕を見て、その経験があるから不登校ややんちゃな子たちの気持ちに寄り添える、良い先生になれると言うんです。それを聞いてもう、目から鱗でしたよ。母からもらったそのアドバイスを反芻して、つらい気持ちを抱えていたあの時の自分が求めていたような先生に、自分がなればいいんだと思い直したんです。

写真 人物 中学校教諭時代の尾木さん

中学校教諭時代の尾木さん。母親からの一言で教師になることを決めた。

Q.ご自身もテレビCMなどに出演もされていますが、広告について印象に残ったエピソードはありますか?

2011年3月に東日本大震災が起きた後、被災地支援の意味を込めて福島県で講演会を開催したんです。会場となった小学校では、私が登場するやいなや、子どもたちがものすごい勢いで押し寄せてきて。

「皆さんのために僕ができることがあったら教えて」と問いかけたところ、子どもたちはみんな口々に「CMに出て!」と言うんです。てっきりこんな支援をしてほしいとか、具体的なことを言われると思っていたので、ピンと来なくて、『どうして?』と尋ねました。

すると、CMだったらテレビさえつければいつでも流れてくるから、と。番組の中だけじゃなくて、もっとたくさんテレビに出てくれたら、先生にいっぱい会えるし、安心できるって。そんな言葉をもらえてすごく嬉しくて、子どもたちの後押しを受けて、それからはCMに出ようと決めたんです。

Q.今後、取り組みたいことはありますか。

2023年4月に「こども基本法」が施行され、こども家庭庁が発足しました。すべての子どもは個人として尊重され、基本的人権が保障されるという基本理念のもと、より一層の子どもに対する施策の充実が求められます。

基本法の第15条では、子どもの権利に関する条約の趣旨や内容について、広報活動などを通じて国民に周知を図るという努力義務を課しているのですが、残念ながらまだ実現できていないようです。

すべての子どもの意見や考えが尊重され、子ども政策に反映される。子どもの声が世の中を変えるくらいの社会にしていきたいなと思っています。

…尾木さんのインタビュー記事全文は、月刊『宣伝会議』2024年10月号に掲載。

月刊『宣伝会議』デジタルマガジン では、2013年から本連載の過去10年分のバックナンバー記事を閲覧可能です。

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