「エコ」に「D&I」新しい言葉や概念はどのように浸透していったのか?

山本啓一朗氏

有限責任監査法人トーマツ 地域未来創造室 シニアマネジャー
一般社団法人 フェーズフリー協会 理事
一般社団法人 集まろうよ 代表理事

大手電機メーカーでSIerとしてメディア業界のDXを推進。経営企画で中計や組織開発、復興庁にて地域復興に従事した後、TOKYO2020を活用したマーケティング・事業開発及び、全国でのD&EI普及、地方創生を推進。ライフワークである日本の地域課題解決と防災、真の共生社会づくりに邁進中。コラムでは、山本個人としての見解を発信していきます。

皆さん、パリ2024パラリンピックはご覧になられたでしょうか?
史上初の50-50到達の話題でネットもメディアも持ち切りですが(お彼岸に執筆)、パリ2024オリンピックで多くの日本人選手が活躍され20個もの金メダルを獲得されたことは記憶に新しく、閉幕後も様々なメディアでメダリストが取り上げられています。一方、パラリンピックはどうでしょうか?

実は、日本代表団は14個もの金メダルを獲得しています。金メダル獲得後にメディア露出された車いすテニスの小田凱人選手はTVCMも良く放映されておりご存じの方は多いと思いますが、その他の金メダル獲得競技であるゴールボールや車いすラグビーの試合をご覧になった方はいらっしゃいますか?

残念ながら、パリ2024パラリンピックは地上波ではNHKのみの放映でそのほとんどが録画ダイジェスト。試合そのものの迫力や醍醐味が伝わる状況ではありませんでした。TOKYO2020当時、「パラスポーツを通じた“共生社会・ダイバーシティ&インクルージョン”の実現」を旗印に経済界や全国の自治体(ホストタウン429市町村=全国の約1/4)が連携した取組みが全国各地で展開されましたが、今回のパリ2024では普及という観点で未だ道半ばであることを痛感させられました。

先日、車いすユーザーの友人と某山手線駅のタクシー乗り場で順番待ちしていた時、私たちの順番が来た時にタイミング良く車いす対応に開発されたジャパンタクシーが到着したので乗り込もうとしたのですが、なんと、友人を見つけるなり、そのタクシーは急発進して立ち去ってしまいました…。とても悲しく残念な気持ちと共に、自分自身の力の足りなさを痛感してしまいました。

ところで、“ダイバーシティ&インクルージョン(Diversity&Inclusion:以下D&I)”という言葉を聞いて最初に何を思い浮かべますか?

少し前だと、障がいのあるなしに関わらない社会づくりに関する話題が多かったのですが、最近ではジェンダーレス、女性の社会参画、国政の違いに関わらない活躍の機会提供などを意図する機会が多くなっていると思います。これは社会トレンドが影響しており、メディアや企業各社の取組みが色濃く反映されている結果です。

D&Iは昔の日本ではなかった言葉で新しい概念を表していますが、その概念が浸透し概念を具現化する取組みが普及するためには社会情勢やメディア、企業各社の動向に寄るところが大きく、マーケティングコミュニケーションが欠かせません。

誰もが知っている“エコ(eco)”という概念があります。これはどうやって広まっていったのでしょうか。元々はエコロジー(ecology)という生物(生態)学であり、1982年に米国のエレン・スワローが提唱した環境保全を指す言葉です。ただ、普及のきっかけはその約100年後、1972年にストックホルムで開かれた国連人間環境会議を経て1988年に英国で始まったグリーンコンシューマーという社会運動で瞬く間に世界に広まっていきました。その背景には社会情勢を捉えた企業のマーケティング活動があり、2000年代に入ると日本でもコンシューマー向けプロモーションだけでなく、BtoB企業の取組みも加速し、NECも2003年に「IT、で、エコ」というキャッチコピーを開発しプロモーション活動を展開しました。

個人的には、エコ(eco)が大きく普及、本当の意味で誰もが当たり前に取り組むようになったきっかけはおしゃれでクールなスポーツやファッションブランドがプロモーションや企業活動に組み込んだ上で商品サービスを展開したことだと考えています。

以前は、リサイクルを行うことにどこか恥ずかしさを感じていたのですが、いつの間にか当たり前でそうしないことがカッコ悪いと思っている自分になっていました。これはエコ(eco)マーケティングコミュニケーションに取組んだ企業ブランドの影響が大きく寄与しています。

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山本啓一朗氏
山本啓一朗氏

有限責任監査法人トーマツ 地域未来創造室 シニアマネジャー / 一般社団法人 フェーズフリー協会 理事 / 一般社団法人 集まろうよ 代表理事 大手電機メーカーでSIerとしてメディア業界のDXを推進。経営企画で中計や組織開発、復興庁にて地域復興に従事した後、TOKYO2020を活用したマーケティング・事業開発及び、全国でのD&EI普及、地方創生を推進。ライフワークである日本の地域課題解決と防災、真の共生社会づくりに邁進中。コラムでは、山本個人としての見解を発信していきます。

山本啓一朗氏

有限責任監査法人トーマツ 地域未来創造室 シニアマネジャー / 一般社団法人 フェーズフリー協会 理事 / 一般社団法人 集まろうよ 代表理事 大手電機メーカーでSIerとしてメディア業界のDXを推進。経営企画で中計や組織開発、復興庁にて地域復興に従事した後、TOKYO2020を活用したマーケティング・事業開発及び、全国でのD&EI普及、地方創生を推進。ライフワークである日本の地域課題解決と防災、真の共生社会づくりに邁進中。コラムでは、山本個人としての見解を発信していきます。

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