いつかは「博報堂キーファイブ」? web3が浸透した未来を考える

皆さんこんにちは。博報堂キースリーの重松俊範です。

ついにこのコラムも最終回となりました。記事を書いている2024年9月17日、アジア最大のweb3イベント「TOKEN2049」に参加するためにシンガポールに来ており、現在ホテルでこれを仕上げています。

以前にアドタイでコラムを書かせていただいていた2012年前後は、上海に住んで、台湾支社も兼務で立ち上げていた頃。東京に家族が居たので、最大で1年に99回飛行機に乗った年もありました。しかし今回のシンガポールは、1年以上ぶりの海外。以前の生活と隔世の感はあります。中国語も本当に久しぶりに使いました(シンガポールは英語も中国語も通じます)。

改めて考える、web3の可能性

さて、私は今年46歳。子どもは8歳、6歳、3歳。つまりまだあと20年は働かないといけない。自分がいつまでちゃんと働いて彼らを育て上げられるか。結構毎日心配。

個人的に一番推しているNFTプロジェクト「NOT A HOTEL AOSHIMA」にて、私の3人の子どもたち。

自分の家族だけでなく、もっと大きな視点で見ても、これからの日本は人口減や高齢化、いつまで続くかわからない円安。なのに企業は右肩上がりの成長を求められています。

今の子どもたちが大人になる頃の日本は人口ももっと減り、きっともっともっと大変になっている。全体的にとてもとても心配。そんな中、当社のファウンダー兼取締役である渡辺創太の受け売りのようですが、私も真面目に「web3は日本を再度輝かせる可能性がある数少ないテーマ」だと思っています。

博報堂キースリーのファウンダー兼取締役の渡辺創太。

「いや、日本はアニメや漫画などのコンテンツがありますし大丈夫では……?」と言う方も多いですが、最早それしか残ってない状況って結構ヤバい。しかもそうしたIPビジネスの分野でも、中国や韓国の足音がもうすぐそこまで聞こえてきていいます。

コラム第3回で触れた、競合他社に転職したものの活躍できずに悶々としていた時期には、MBAを取ろうとしたり、アマチュア無線の資格を取ってFPVドローンの撮影やレースに挑戦したり、七五三撮影のカメラマンをやってみたり、中国人向けフィリピン英語留学エージェント事業を始めるためにセーシェル共和国に会社をつくって盛大に失敗してみたり、あちこちへ迷走していました。やっと子どもや日本の未来のために自分が長期で挑戦したいと思える、web3というジャンルに辿り着けたと思っています。

2022年9月、渡辺創太が率いるAstarが出稿した日経新聞紙面広告 渡辺創太氏提供

個人的には、これからしばらく企業がチャレンジするメジャーな領域TOP3は「web3」「メタバース」「AI」だと感じています。宇宙や核融合はまだまだその先。今年はご存じの通りAIが大ブームでしたが、その次はまたメタバースかもしれないし、またすぐにweb3のブームもくる。そうやって進化していき、人間が想像できる全てのものはいつかは必ずマスアダプションするのだと思います。

ちなみに、想像できるがまだ無いと思われているタイムマシンも、個人的には実はすでに完成間近だと思っています。仕組みはこうです。

みんながARグラスを掛けて街を歩くようになって、街中のみならず、屋内でもカメラとLiDAR(リモートセンシング技術)で常時スキャンする。それが大規模サーバに保管され、行きたい過去の日時と場所を指定するとAIが瞬時に画像解析して合成、その場でデジタルツインをつくり出す。勿論そこにはその時その場所にいたクルマや人物もボリュメトリックで再現され、動いたり、音を出したりもしている。そしてARやVR技術でメタバースとして再現された過去に入ることができる。

要は、フォトグラメトリーやAI、デジタルツイン、大規模サーバ、AR技術、ボリュメトリックなどすでにある要素技術を組み合わせれば、過去を3Dで完全に保存しておいて、いつでもそれをバーチャル上に生成し、没入体験しに行ける、という仕組みです。こういうことであれば、タイムマシンはすでに完成間近と言えそうですよね? 過去を変えることはできず、ただ見るだけですが、完全に再現された過去の世界に入り込むことは、いずれかなり確度高くできそうだなと考えています(未来へはまだ難しい)。

筆者がAIで生成したタイムマシンのイメージ

そして、そのデジタルツインがリアルタイムでも生成され続けるようになり、その中で人が経済活動をして、貢献の証明としてNFTや報酬としての仮想通貨がやり取りされる。こんな感じで、メタバース ×AI×web3、はかなり近い未来に実現すると思います。

web3は広告業界の仕組みを変えるかも?

また、広告業界にも昨今、個人情報の規制(GDPR)や顧客獲得単価(CPA)の高騰、CRMの効果低下などさまざまな課題があります。性年代や職業などのデモグラではなくブロックチェーンというジャイアントCRMツールを通じて、第6回でご紹介したweb3Jam的な取り組み=さまざまな企業が“まとまって、ひろがる”ことで、各社の顧客データが繋がりブロックチェーン上に集約され、本当に届けたい人に届けるためのROIが高くなる――そんなことができる可能性もあると思います。

そのほかweb3技術を使うことで、自分に合った広告を見れば見るほど報酬が貰えたり、SNSで誰かの役に立つ投稿をすると自動的に報酬がもらえたり、といったような広告業界の仕組みごと変革させる可能性もあります。

web3は、まずは金融やゲームの世界からジワジワ浸透してくると思いますが、現在インターネットを使っていない企業や生活者がいないのと同じように、いずれは全ての企業と生活者が知らずにweb3を使う日々が訪れるはず。自分の3人の子どものみならず、日本の未来のためにもブロックチェーンという便利な技術を使ったweb3革命の真ん中に日本がいられたらいいな、と思います。当社は、微力ながらそのお手伝いをしたいと日々思いながら業務に励んでいます。

かなり余談でしたが、色々と偉そうに言ってみても自分はweb3業界の中では圧倒的に一番“ワカッテナイ”部類の人間。30代でシニアと呼ばれるweb3業界。最近老眼鏡デビューした非エンジニアの46歳にとって、潮流についていくだけでも結構大変です。でもそもそもweb3は、個人的には“紙の再発明”くらいさまざまな用途があると思っています。さまざまな経験を掛け算するという意味で、実はシニアにも若者といっしょにやっていくチャンスがあると思っています。
 
 
さて、12年ぶりのアドタイコラム、1回でも読んでくださった方、どうもありがとうございました。実は世の中では、上述のweb3にAIやメタバースをかけ合わせていくことをweb4やweb5と呼び始めているそうです。自分の過去のメタバース事業での苦い経験(第3回参照)も活かして、またいつかここに博報堂キーファイブ?の社長として戻って来られることを祈って、ひとまず筆を置かせていただきます。ひょっとしたら、また2036年にお会いしましょう!

※博報堂キースリーは設立2年目でまだまだ大きな成果も出せていないのに、宣伝会議の編集さんに乗せられて偉そうなコラムを書いてしまいました。会社としても個人としてもweb3業界に於いてスタート地点に立ったばかりのひよっこです。引き続きご支援ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願いします。

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重松俊範(博報堂キースリー 代表取締役社長)
重松俊範(博報堂キースリー 代表取締役社長)

1978年生まれ、中央大学法学部卒業。2001年読売広告社入社。国内で不動産広告の営業を経験した後、27歳で中国に渡る。読売広告社の上海支社と台湾支社を立ち上げ、クリエイティブディレクター&支社長に就任。上海・広州・台湾に合計12年間駐在。帰国後、他の広告会社やXR企業でのメタバースビジネス展示会事業の管掌取締役を経て、2023年1月に博報堂キースリーの設立とともに代表取締役社長として参画。三児のパパ。趣味はカメラ、写真も動画も撮ります。

重松俊範(博報堂キースリー 代表取締役社長)

1978年生まれ、中央大学法学部卒業。2001年読売広告社入社。国内で不動産広告の営業を経験した後、27歳で中国に渡る。読売広告社の上海支社と台湾支社を立ち上げ、クリエイティブディレクター&支社長に就任。上海・広州・台湾に合計12年間駐在。帰国後、他の広告会社やXR企業でのメタバースビジネス展示会事業の管掌取締役を経て、2023年1月に博報堂キースリーの設立とともに代表取締役社長として参画。三児のパパ。趣味はカメラ、写真も動画も撮ります。

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