ミニチュア写真家・田中達也が語る、「良い違和感」のある広告とは―「私の広告観」出張所

月刊『宣伝会議』では、社会に大きな影響を与える有識者が、いまの広告やメディア、コミュニケーションについて、どのように捉えているのかをインタビューする企画「私の広告観」を連載中。ここでは「私の広告観 出張所」として、インタビューの一部や誌面では掲載しきれなかった話をお届けします。今回登場するのは、ミニチュアの視点で日常にある物を別の物に見立てたアートで人気の、ミニチュア写真家で見立て作家・田中達也さんです。
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田中達也さん

ミニチュア写真家・見立て作家

日常にある物を別の物に見立てたアート「MINIATURE CALENDAR」を、2011年からインターネット上で毎日発表し続けている。展覧会を国内外で開催。著書に『みたてのくみたて』、絵本『くみたて』『おすしがふくをかいにきた』など。Instagramのフォロワーは390万人を超える(2024年10月現在)。

Q.2011年にInstagramにてアート作品「MINIATURE CALENDAR」の発信を開始され、現在に至るまで、毎日欠かさず投稿を続けていますよね。作品づくりのきっかけは何だったのでしょうか。

大学を卒業後、鹿児島県の制作会社でデザイナーとして働いていて、当時勤めていた制作会社では仕事柄、カメラマンに撮影の指示を出すことが多かったのですが、僕自身はあまりカメラの知識がなくて。

勉強しようと考えていたところにInstagramのサービスが始まって、どんなものかちょっと使ってみようかなと。iPhoneで撮った写真を投稿してみようと思い、軽い気持ちで始めました。

投稿を続けていくうちに、もっと注目されるにはどうしたら良いだろうかと考えるようになり、人気の高い投稿写真の傾向を分析すると、主役の被写体が明確に写し出されているものが多かったんです。

そこで、何かシンボリックな被写体を使って写真を撮ろうと考えるようになりました。モデルを使うことも考えましたが、勤めていた制作会社の仕事が多忙で時間が取れずに断念。

そこでひらめいたのが、趣味で集めていたミニチュアでした。撮影を重ねるにつれて、複数のミニチュアを使ってどのように組み合わせると反応が得られやすいかなど、研究を重ねていき、現在の「見立て」という作風にたどり着きました。

写真 マスクをクリスマスツリーに見立てた「クリスマスク」

マスクをクリスマスツリーに見立てた「クリスマスク」。ほかにも、マスクをオペラハウスやプール、バスケットボールのコートなどに見立てた作品も。

Q.作品を通じて伝えたい想いとは。

“見立て”の作品を通じて伝えたいのは、身の回りにある物事や現象に対してちょっと視点を変えて見ることで、日常がより楽しいものにアップデートされていくということです。

たとえ壁にぶつかってしまったとしても、それを乗り越える方法はひとつではなくて、別のやり方がきっとあるはず。物事を多面的に捉える観察眼と創意工夫の力を、僕の作品を見た人に感じてほしいなと思っています。

Q.最近の広告について、どのようなことを感じていますか。

僕の子どもが動画を見ていると、子どもが対象ではない商品やサービスのCMが表示されて、すると「こんなの見たくない」と言ってすぐスキップするんです。実は僕も同様で、広告が表示されないように有料プランに入っています。

以前は広告づくりに関わっていた自分が、そんな状況になってしまっているのは、ちょっと悲しいですよね。こうやってどんどん広告が日常に入り込む隙間がなくなっていくのではないか、と一抹の寂しさを感じます。

昔見たCMで、あえて見る人にちょっとした不快感をもたせて印象付けるという手法をとったものがあったのですが、やっぱり不快に思われたという時点で良くないと思いました。

僕は2022年に神戸空港の常設ミュージアムをプロデュースした際、屋上に巨大なブロッコリーを作品として置きました。当時は『なぜブロッコリー?』とよく質問されましたね。その背景やコンセプトは作品に解説を添えているのですが、僕の狙いは“良い意味での違和感”。

木かと思いきやブロッコリーだったというように、日常のささいな引っかかりをなんとなく受け流してしまうのではなくて、そこから新たな視点を見つけてほしいなという思いを込めているんです。

広告も、見た人が感じた違和感が、気付きや発見につながるような存在になるといいなと思います。

写真 人物 田中達也 常設ミュージアム「MINIATURE LIFE × KOBE AIRPORT」のフォトスポット

2022年9月には、常設ミュージアム「MINIATURE LIFE × KOBE AIRPORT」を神戸空港にオープン。ブロッコリーを大樹に見立てた「ブロッツリー」をフォトスポットとして設置した。

…田中さんのインタビュー記事全文は、月刊『宣伝会議』2024年11月号に掲載。

月刊『宣伝会議』デジタルマガジンでは、2013年から本連載の過去10年分のバックナンバー記事を閲覧可能です。

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