自治体の「アリバイ広報」に陥らず、常に共感獲得や行動変容を目指して活動していきたい(流山市・斉藤勇希さん)

広報、マーケティングなどコミュニケーションビジネスの世界には多様な「専門の仕事」があります。専門職としてのキャリアを積もうとした場合、自分なりのキャリアプランも必要とされます。現在、地方自治体のなかで広報職として活躍する人たちは、どのように自分のスキル形成について考えているのでしょうか。本コラムではリレー形式で、「自治体広報の仕事とキャリア」をテーマにバトンをつないでいただきます。
埼玉県熊谷市の富田卓哉さんからバトンを受け取り、登場いただくのは千葉県流山市の斉藤勇希さんです。
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斉藤勇希氏

千葉県流山市役所
総合政策部秘書広報課
広報係 主事

平成29年入庁。令和3年から現職。広報ながれやまの企画・取材・編集を担当。

Q1:現在の仕事内容について教えてください

こんにちは!千葉県流山市役所の斉藤と申します。
はじめに、流山市の紹介をさせてください!

流山市は千葉県の北西部に位置し、都心から25㎞圏内の首都圏北東部にあります。電車では、平成17年に開業したつくばエクスプレスで都心へ最短20分。羽田空港への直行バス、常磐自動車道につながる流山インターチェンジもあり、アクセス良好な立地です。また、オオタカが生息する市野谷の森や江戸川、利根運河などの豊かな自然にも恵まれています。

流山市では、この好立地条件と緑豊かな特性を活かし、「都心から一番近い森のまち」を目指すまちのイメージとして掲げ、「母になるなら、流山市。」「父になるなら、流山市。」などのキャッチフレーズのもと、さまざまなマーケティング戦略を展開してきました。

その結果、全国で人口減少に悩む自治体が多い中、30代・40代の子育て世代とその子どもを中心に人口増加が続き、平成17年には15万人だった人口が、令和5年に21万人を突破し、約20年で6万人増加しました。なお、人口増加率では、全国792市の中で6年連続第1位(平成29年から令和4年)となりました。

写真 千葉県流山市

四季に合わせて行われる流山の風物詩「森のマルシェ」。人・モノ・コトの新しい出会いを生み出すブランディングイベントです。

写真 駅前送迎保育ステーション

平成21年(2009年)に17園だった保育園の数は15年の時を経て104園まで増設しました。市内にあるコンビニの数よりも多いです。流山おおたかの森駅と南流山駅には「駅前送迎保育ステーション」を設置し、仕事をしながら子育てができるインフラ整備に注力しています。

私は、この魅力盛りだくさんの流山市で、広報ながれやまの企画・取材・編集をメインで担当しています。

ちなみに、流山市では、毎月3回(1日号・11日号・21日号)にわたって広報紙を発行しています。毎月3回広報紙を発行する自治体は全国的にも珍しいと思います。係長を含め4人のミニマムな体制ですが、常にタイムリーな情報を市民の皆様へお届けしている自負を持ちながら仕事をしています。

また、A4冊子版の広報紙が多くなるなか、流山市はタブロイド版(A3より一回り小さめのサイズ)の広報紙を、モノクロ印刷で発行しています(ホームページにはカラー版のPDFデータをアップしています)。他の自治体の広報紙を手に取ることも多いので、「カラー印刷、いいな」と思うことも多少なりともあります。ですが、流山市では、市長の井崎が目指す「1円まで活かす市政」を進めること、また、月3回という多くの広報紙を発行してタイムリーな情報を市民の皆様へお届けすることに重点を置いています。モノクロ印刷にすることでコストを抑え、色校正を省略することでタイトなスケジュールに対応し、最小のコストで最大の効果を上げるべく業務に励んでいます。

実データ グラフィック 広報ながれやま

Q2:広報部門が管轄する仕事の領域について教えてください

私が所属する秘書広報課広報係では、先ほどもお話ししたように毎月3回(1日号・11日号・21日号)にわたって広報紙を発行するほか、市ホームページの管理・運営や報道機関への情報提供を行っています。

領域の話からは少しそれてしまうかも?しれませんが、先ほどお話しした広報紙の作成以外に広報係が担う仕事として、市ホームページのリニューアルについてお話しさせてください。

令和3年から4年にかけて、市民視点や民間のノウハウなどを取り入れるため、ホームページ制作などの分野において専門性の高い市民を「ホームページリニューアルアドバイザー」として募集しました。

アドバイザーからは、流山市の他、全国のホームページの分析、その分析を活かしたワイヤーフレーム(レイアウトを定める設計図のこと)や市のVI(ビジュアルアイデンティティ)を活かしたUIアセット(色、字体、イラストなどの素材)の提案をいただきました。

CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を活用したホームページということもあり、機能面での制限が多々あり、実現したいけど実現できない…ものもありましたが、流山市ホームページは3つのポイントにしぼってリニューアルされました。

1つ目のポイントは、メインビジュアルをランダムに楽しんでいただくことです。市民の方だけでなく、市外の方にも行政「らしくない」デザインに仕上げることで「わお!」と思わせることを意識しています。

2つ目のポイントは、「今の流山らしさ」を体現するデザインにすることです。流山市のブランドイメージを全国に発信するために作成されたビジュアルアイデンティティをもとに、親しみやすくも洗練されたデザインにしています。

3つ目のポイントは、欲しい情報にアクセスしやすくすることです。多くの方が使う情報や他自治体のホームページを分析し、欲しい情報を整理した上で、使いやすい順に配置しました。

実データ グラフィック 広報ながれやま

また、ホームページの分野では、市内のできごとや話題をお届けするコーナー「ぐるっと流山」は流山ならではの取り組みではないかと思います。

実データ グラフィック ぐるっと流山

なお、広報部門が合わせて行う自治体も多いであろうシティプロモーションやブランディングを推進する業務は、平成16年(2004年)に基礎自治体として全国初の設置となったマーケティング課が担っています。

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