市役所職員と市民、両者の視点から行政手続きの煩雑さを描いたBot Expressの映像

官公庁専用対話型アプリケーション(スマホ市役所)を提供するBot Expressは、10月10日に2本の映像を公開。10月25日まで北海道、東北、中部の一部エリアでは、テレビCMとして放映した。

Bot Express 「すみませんの場所で」篇

Bot Express 「町が変わった日」篇

今回の映像は、市役所の手続きの中でもデジタル化の需要が高い「子育て」関連のDXをテーマとしている。
「機能説明ではなく、サービス利用者である自治体職員のみなさんに共感され、関係性を強められるCMをつくりたいというご依頼でした」と、クリエイティブディレクター/コピーライター 姉川伊織氏。

2022年に同社が制作したCM「ある市役所で篇」篇では、「そろそろ、町のふつうが変わらなきゃ。」をテーマに、スマホ市役所で「町を良くしたい」という思いを秘める自治体職員の姿を描いた。このCMは各地であり得る市役所のシチュエーションを切り取ったストーリーと自治体職員を描くという試みで注目を集め、2023年にはTCC賞、ACC賞シルバー、第60回JAA広告賞「消費者が選んだ広告コンクール」デジタル広告部門でメダリストを受賞した。

そして、今回のCMの舞台も市役所だ。
「前回のCMオンエア時より、スマホ市役所の導入自治体も増えているなかで、世の中の変化をもうひと押しできるようになにをすべきかを考えました。ひとつは、自治体の内部でデジタル化を進めるにあたってハードルとなっている場面や、このサービスで救われる人の生活など、描く景色の解像度を一段階あげること。そしてもうひとつは、変化を急ぐあまり、これまでのシステムや現状のあり方を否定しないこと。あとは当たり前ですが、ふだんは公共性を帯びた職員のみなさんも、僕らと同じように職場で冗談を言い合う個人の集まりで、オフの時間は家族や友人と過ごす町の生活者のひとり。変革を担う自治体を組織としてではなく、人間として描くことが、世の中と自治体の関係性を変えることになるのでは?と思いながらつくりました」(姉川氏)

今回の2本のCMは、サービスのメインターゲットである市役所職員側とサービス利用者である市民側の両サイドをそれぞれの視点で描いている。

『すみませんの場所で』篇に登場するのは、一時保育の手続きや、保育園探しなどのデジタル化を子育て課に提案するDX課職員。説明をしている途中で、目の前の窓口対応に追われてしまう子育て課職員。そんな市役所のいつもの光景を見て、「市役所ってさ、いつも誰かが謝ってるじゃない?」とDX課職員がつぶやく。

一方、「町が変わった日」篇は、子育てに奮闘する夫婦が主役。子育ての行政手続きにまつわる、さまざまな面倒ごとに翻弄される日々が続いたある日、市役所に訪れた父親は子育て課の職員から「スマホ市役所で子育て支援のごあんない」を受け取る。「なんで今までなかったんだって感じですよね…。遅くなってすみません」と謝る子育て課職員に、父親はある一言を伝える。

「気をつけたのは、どちら方々にも『わかる』と共感できるリアリティを追求することです」と、企画を手がけた嶋崎仁美氏。
「『すみませんの場所で』篇では、実際に自治体のDX課で働く方々にインタビューをさせてもらい、そこで上がった声をもとにCMの企画をしていきました。男性職員の『直接声を聞いてわかることもあるからなぁ』というセリフは、インタビューで職員の方が話していたことをそのまま採用しています。
『町が変わった日』篇では、子育てに対する不満をネガティブに描き、その解決としてサービスを提示するという、なにかを下げて自分を上げるような描き方にならないように気をつけました。CMの中に生きる夫婦が過度に大変に見えないよう、チームで話し合い、セリフや演出を調整していきました」

今回のCMと第一弾のCM「ある市役所で」篇の演出も手がけた泉田岳氏は、「商品を提供する人、世に打ち出す人、受け取る人。一つのサービスに関わる全ての人が優しく、意義があり、人のことを想っている広告に携わることは大変光栄なことです。そんな土台があるからこそ、一つの“広告”として聴き心地の良い言葉をただ吐くのではなく、作る側の‟現実もしっかりみている“目線が必要だと思いました」と話す。

「『町が変わった日』篇で書類を書きながら夫婦が言う『めんどくせ…』という愚痴には『昔からそういうものだし』という当たり前のシステムに対する諦めも含まれています。
やがて、彼らに子供が生まれた頃、スマホ市役所と出会います。出産までの夫婦の大変な生活と同軸で、市役所の皆さんも新たな試みを進めて誕生させていました。
『すみませんの場所で』と『町が変わった日』。二篇が緩やかに交差することでこのサービスが一側面からの良さではなく、従来の生活を変える優しい発明だと思ってもらえる事を願いながら言葉を作りました」(泉田氏)

Bot Express 執行役員 松尾明美氏によると、今回のCM公開後、パートナーである自治体職員から、「DX担当職員は恐らく誰もが経験する他課とのやり取りにクスっとなりました」「多くの自治体職員は、住民の課題と向き合い、変わりたいと思っていますが、実務に追われて変われないという悩みを抱えています。その中で、職員や住民の困っている姿よりも、みんなの笑顔が見たいという強い想いで、役所全体の窓口を支える影の立役者として活躍している職員も大勢おります。誰かの支えになりたいという公務員としての目的を思い出させてもらいました」といった声が寄せられたという。

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スタッフリスト

企画制作 電通+ロボット
CD、企画、C 姉川伊織
企画、C 嶋崎仁美
Pr 横山治己
PM 歌代翔、佐藤杏里、中谷健太
演出 泉田岳
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撮影 志田貴之
照明 津嘉山槙
美術 都築雄二
録音 伊藤卓
ST 横手智佳
HM 渡辺真洋
CAS 山内雅子
音楽(作詞・作曲・歌) T.V.not January
編集 石井沙貴(オフライン)、梅香悠斗(オンライン)
MIX 太斉唯夫
SE 小林範雄
カラリスト 今西正樹
プロジェクトマネージャー 中嶋一樹
Pr 松尾明美
BP 藤吉祐輔、市原裕太
出演 「すみませんの場所で」篇:安部聡子、才勝、滝沢めぐみ、安部智凛
「町が変わった日」篇:飯田隆裕、千國めぐみ、安部智凛

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