【2024年10月】BtoBマーケティングの主要な手法を専門家が徹底解説!【ステージ・商材別】

マーケティング、デジマ、クリエイティブにかかわる素朴な疑問・お悩みを解決します!「AdverTimes.の基本用語解説」、今回は「BtoBマーケティング」篇です。
 
主にこれからBtoBマーケティングに携わる方や学びたい方向けに、手法をメインに紹介します。シナジーマーケティングの中村史織さんがわかりやすく解説します。
イメージ B2B MARKETING

BtoBマーケティングとは

企業間の取引におけるマーケティング活動のことで、市場における個人消費者をターゲットとして実施するBtoCマーケティングと異なり、企業とその意思決定者をターゲットとして実施するマーケティング施策のことを指します。展示会や企業サイトから得た見込み顧客の情報に対してアプローチを行うことや、企業サイトでの情報発信などが基本的な活動として挙げられます。

BtoCマーケティングとの違い

BtoBでは購買を決定するまでに関与する人が複数、かつ多層になることが多く、利用者が購買者(もしくは決裁者)と同じとは限りません。BtoCでは季節性や流行に応じた手段、ソリューションやSNSに代表されるような、いわゆる「バズる」コンテンツづくりなどに焦点が当てられますが、企業間のコミュニケーションであるBtoBマーケティングでは信頼関係の構築や、必要なタイミングで自社を思い出してもらう「第一想起」の喚起などが施策の焦点となります。

また、企業において検討期間が長期的になることも多く、フェーズに応じたアプローチが欠かせません。

BtoBマーケティングの手法

図 BtoBマーケティングの手法(ターゲット別)

BtoBマーケティングの手法(ターゲット別)

テレビCMや純広告、リスティング広告などの各手法は、どれも業界・業種問わずに利用され成果を出している企業も多くあります。業種で見ると、コンテンツマーケティングやSEO、メールマーケティングなどは成約までに時間がかかる業界や複数商品が存在する場合など、例えば製造・メーカーなどと親和性が高いと言えますし、ホワイトペーパーやディスプレイ広告などはコンサルティングやSaaS関連などとも相性が良いでしょう。

記事広告などはお客様の事例などを用いることで、市場が発展途上の業界やニッチ分野での訴求にも向いています。

マーケティングは何か1つだけで成果が出るというものではなく、いくつかの手法を組み合わせてこそ成果が最大化していきます。どのようなターゲットに向けて情報発信し、顧客を開拓したいのかによって手法を組み合わせていくと良いでしょう。

認知拡大のための手法

テレビCM、ネット動画広告、タクシー広告など

認知における動画系広告は「ストーリーを伝えやすい」という最大のメリットがあるため、製品紹介、ブランディングの両面で選ばれることが多い手法といえます。

例えばテレビCMは企業の中でもより「企業の担当者・決裁者」へ向けたマーケティング手法として選ばれており、タクシー広告は経営者や管理職にリーチできる媒体として注目されています。

比較的少額からスタートでき、データ分析も可能な運用型テレビCMの登場もありますが、動画広告は配信費用に他の施策よりもコストがかかることが多く、コンテンツ制作にも予算を割く必要があります。

そのため、パートナー企業を選ぶときは単純に配信面だけではなく、コンテンツ制作のノウハウも一緒に得ることができる事業者を選定することが良いといえます。

集客のための手法

集客における広告の手法はいくつかあり、比較的取り組みやすいことが特徴です。特に、すでに課題が顕在化しているユーザーを検索キーワードによって自社の製品、サービスへとつなげるリスティング広告は「すぐリードを獲得したい」といったときやキャンペーンの打ち出しにも活用しやすい手法です。

リスティング、ディスプレイ広告、SNS広告

Google、Yahoo!、Microsoftなどに代表される広告配信面は各ユーザー層が検索するキーワードは少しずつ異なるため、適切なチューニングと広告から遷移させる受け皿となる製品ページやランディングページがとても重要です。

また、セミナーの告知や企業よりも人へフォーカスした施策の場合はFacebookやLINEに代表されるSNS広告も有効です。さらに、より有料広告を活用するためにDSPやアドネットワーク広告で認知拡大を実施、リスティング広告とあわせて集まったユーザーに向けてリターゲティング広告を実施し広告上でナーチャリングするところまで計画できれば良いでしょう。BtoBでは成約までのリードタイムが長くなる場合が多く、定期的に接触できるディスプレイ広告などを用いてナーチャリングすることは有効な手段です。

ただし、サードパーティクッキーが多くのブラウザにおいて段階的に終了していく現状を踏まえると、自社が直接的に収集できるファーストパーティクッキーを活用するなど変化に対応する必要があります。

また、運用代行などパートナー企業を選ぶときにはCPAにこだわった運用というより「自社が求めたい成果は何か」をきちんと整理し、相談できるパートナー企業を選ぶことが大切です。

純広告(Webサイト)、動画広告、交通広告など認知系

認知系の純広告についてもいくつかの種類があり、まずオンライン上に掲載する広告では、ディスプレイ広告とは異なり特定のサイト、枠を指定して配信されます。決められた期間で必ず表示されるため、ブランディングを目的とした利用やキャンペーン告知などでよく利用されます。

同じく交通広告も駅や電車、空港など交通機関の中にサービスや企業についての告知ができるもので、何度も目にすることから刷り込み効果などが期待され、ブランディング目的としてよく利用されています。

一方、リーチの拡大やより細かな効果検証を考える場合に動画広告・YouTube広告が選択されることもあり、特にYouTube広告はアクティブ人数20億人を越えるユーザーへ向けて認知を広げることができる拡散力の強さから注目されています。

ただし、特に動画広告では「最初の5秒で伝わるか」が勝負を決めるともいわれており、メッセージ性のあるクリエイティブの制作ができるパートナーを選ぶことが特に重要な要素となります。

マス広告(新聞、雑誌)、タイアップなどブランディングと認知拡大系

マス広告も認知広告同様に、ブランディングを目的として実施されることが多い広告です。プラットフォームの記事と同じ体裁でつくられるタイプのタイアップ広告は、製品やサービスの紹介とストーリーでブランドの認知度を高めたり、興味関心を獲得したりすることができます。タイアップ広告(記事広告)は、セグメントされた読者を持つ雑誌などの紙媒体に掲載されるケースと、ビジネス系や専門領域に特化したオンラインメディアに掲載されるケースがあります。

オウンドメディアと異なり、媒体の知名度を活用した拡散力が魅力ですが、一方では制作コストが高額であることが多く、また、自社のターゲットとするユーザーがどのような媒体に触れているか研究しておく必要があります。

また、オンラインにとどまらず、実際に紙面となってユーザーの手元に届けることができる新聞広告はエリアや曜日などターゲティングを行うこともでき、ブランディングや広く認知を得るための施策としては有効です。

どちらの場合も、オンラインメディアとオフラインメディアを組み合わせることで相乗効果を狙うこともできるため、ターゲットにあわせて施策を設計できる代理店を選ぶのが良いでしょう。

リード単価の広告(アフィリエイト広告、資料掲載型広告など)

特にSaaSやサービスの資料を複数社が掲載している比較サイトと呼ばれる資料掲載型の広告メディアの利用は、潜在層から検討層まで幅広いリードをまとまった数で獲得できる手段です。昨今では、リード獲得型だけではなく商談獲得型の資料掲載サイトも増えており、より成約につきやすいリードを選んで獲得することができるものもあります。

SaaSやオンラインサービスなど無形商材に比較的向いているメディアといえますが、一方で自社の製品やサービスと似たものが多く掲載されているため、競合も多くなります。いかにアプローチスピードを向上できるかが鍵となり、インサイドセールスグループや営業部門が直にアプローチするなどの座組が整っているところに向いています。

一方、BtoBにおいてアフィリエイト広告は、サービス理解のためにアフィリエイター側にも専門性が求められることや購買プロセスが長く複雑なために、リード獲得の難易度が高くなる傾向があります。

SEO・オーガニック施策(コンテンツマーケティング、商品サイトSEOなど)

SEO・オーガニック施策もBtoBマーケティングにおいて非常に重要な要素です。見込み顧客が何か解決したいことやサービスを検索したときに、その検索結果の上位に表示されていることは接触頻度を増やすことにも第一想起を獲得することにもつながります。ターゲットに対して役立つコンテンツを発信していくコンテンツマーケティングは、顧客の潜在的なニーズから、課題が顕在化したときまで中長期的に購買につなげるための役割を果たします。

リスティング広告と異なり、比較的予算を使わずに実施することもできるため、取り組みやすくはありますが、公開するコンテンツがターゲットに対して役立つ情報であることが大切で、潜在層が検索するキーワードを分析して軸をしっかりと定めておく必要があります。

また、コンテンツをつくり続けることが重要であるため、自社のフェーズにおいてライティングだけを外注すればよいのか、競合分析やキーワード分析など、アドバイスを含め戦略から外注するべきなのか見極める必要があります。

SNS運用

フォローをしてもらうことで継続的に情報を届けることができるほか、認知度の向上やメッセージなど直接的なコミュニケーションでロイヤリティ向上などを行うことができるメディアです。昨今では企業公式アカウントと並んで社員の顔や人となりが見える個人アカウントに力を入れている企業も多く見られます。

その一方、SNSではよりターゲット像を明確にしターゲットが多く活動しているメディアを選ぶことが重要で、良い口コミの拡散も狙えますが、炎上のリスクに備えておくなど運用体制を整えておくことが必要です。

展示会への出展、セミナー・ウェビナー出演

BtoBマーケティングにおいて展示会も重要なマーケティング施策の一つです。ターゲットに対して直に製品やサービスをアピールし、当日に見込み顧客と商談することで潜在的な課題や反応を確かめることができる貴重な機会でもあります。

また、代理販売などの取り組みが存在する場合、パートナー企業を開拓する上でも役立ちます。

展示会出展のポイントはターゲットとしたい業界や担当者、決裁者がどのくらい来場者に含まれているか、小間数や位置などが選定の要素となり、会場で見えやすく伝わりやすいメッセージを構築する必要があります。

展示会には併設のセミナーやワークショップが開かれることがあり、識者として講演に登壇することも見込み客の獲得に役立ちます。

また、獲得した名刺をいかに早くデータ化し、素早くアプローチを開始することが大切です。昨今では、展示会で獲得した名刺をデータ化するツールなども多様化しているため、可能であれば当日に案内が開始できる体制を整えると良いでしょう。

テレマーケティング/テレアポ

インサイドセールスチームや営業チームがある場合、インバウンドで獲得したリードに対してアプローチするSDR(Sales Development Representative)、アウトバウンドでリードを獲得するBRD(Business Development Representative)の2つに大きく手法が分かれます。BDRとテレアポは近い位置にあり、 BRDではより深くターゲットを絞ってコールを実施します。

昨今では、Webサイトの動向と組み合わせるインテントデータの活用も活発でリストを上から順にローラー的に架電していく従来のテレアポ手法より、こうしたデータやターゲティングを行い欲しいターゲットへ近づくBDRの戦略を立てる企業も増えてきています。

営業代行を請け負っている企業でも、コール数に応じた課金体系のものから商談をセットした数によって課金されるものまでバリエーションが増えているため、アプローチしたい対象やリストの精査をきちんと行い、どんなフェーズの情報が欲しいのかにより代行業者を選ぶ必要があります。

DM(ダイレクトメール)、FAXDM

テレワークの普及により、少なくなりつつはありますが、とりわけBtoBでは企業との関係性が薄いものの一斉に情報発信をしたい場合にDMが選ばれることがあります。

FAXDMは、比較的小規模の法人を対象に商品やサービスを提供している場合は有効とされており、ダイレクトメールを配布するよりはFAXDMのほうがコストが安い場合が多くなりますが、受け取る側にもインク代や用紙代などコストが発生してしまうため注意が必要です。

また、印刷から投函までお任せできるDM送付もありますが、どちらにしても送付するターゲット、メッセージを絞り込んで、受け手がひと目でわかりやすいものを送ることが大切です。

PR活動

PR活動もマーケティング戦略の一つといえます。見込み顧客の獲得や既存顧客との関係性の強化や採用活動の促進など、役割がいくつかありますが、製品情報や企業情報、展示会出展などの情報発信を通じて長期的に認知向上を目指すことが目的として挙げられます。

BtoB企業では製品やサービスの数が多岐にわたっていたり、無形のものであったりすることもありますが、製品やサービスそのものではなくても例えば代表やマーケティング担当、専門職のメンバーなどを会社を代表する存在として打ち出していくことが可能です。

しかしながら、サービス、製品のPRと企業そのもののPRとは役割が少し違いますので、まずはPRを行う目的は何かから整理をしていくと良いでしょう。

接客のための手法

ホワイトペーパー、ウェビナー開催など

ホワイトペーパーは、見込み顧客にとって役立つ情報やテーマについて深掘りした資料のことで、先述したSEO・オーガニックやリード育成(ナーチャリング)とも深い関連があります。サービス資料とは異なり、潜在層に向けたコンテンツであるため、今はまだ自社の製品やサービスに興味がなくてもテーマに興味があればダウンロードされる可能性があります。

こうしてリードを集める一つの手段としてサイトのCTA(Call To Action=行動喚起)として使用するほか、顧客の課題に合わせた具体的なコンテンツを提供することでリード育成のフェーズではより受注の可能性を高めるための関係性づくりに役立ち、ユーザーを次の検討フェーズに促していくきっかけにもなります。

また、ウェビナーの開催も同様に製品やサービスの直接的な紹介でなくても、包括的なテーマで開催することで、今はまだ温度感が高くないとしても自社の製品やサービスに近い位置にいるユーザーが参加することで自社とのつながりができ、その後のナーチャリングを経て顧客へと変わっていく第一歩となります。

追客のための手法

メールマガジン、DM、FAXDM

メールマガジンはBtoBマーケティングにおいて重要なナーチャリング施策の一つで、定期的に配信することで自社の製品、サービスはもちろんのこと、自社そのものを知ってもらうことができる有効な手段です。

比較的低コストで始めることができるほか、自社のファンづくりを行うことができるため業種や業界問わずに有効な手法です。

配信する目的を明確にすること、内容もユーザーのフェーズにあわせて送り分けることでより効果を引き出すことができます。

また、メールマガジンを配信する上では、ツールの操作が簡単であること、安全に顧客情報を扱えるプラットフォームであることが大切です。

コストはかかりますが、有効な見込み客に対してダイレクトメール(DM)を送付することもあります。より印象づけたい場合は郵送のDM、コストを抑えたい場合はFAXも有効です。

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中村 史織

シナジーマーケティング クラウド事業部マーケティンググループマネージャー

不動産業界にて営業から集客コンサルティングまでを経験し、その後はSaaSベンダーにてマーケティング部門の立ち上げなどに奮闘。得意分野はリスティング広告・SEO分野で、シナジーマーケティング入社後は展示会や広告・SEO・ナーチャリングと様々な手法を組み合わせたデジタルマーケティング全般の企画から実行までを幅広く担当している。

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