企業の想い体現した「シンボル」ボルダリングウォールが採用にも奏功したIVRyのオフィス移転

リアルの価値が再認識される中、オフィスは企業にとってコミュニケーションツールとしての存在感を高めている。本記事ではIVRyのオフィスに潜入し、同社のコミュニケーション戦略を紐解いていく。
※本記事は、月刊『広報会議』11月号 の連載「オフィスに見るコミュニケーション戦略」を転載した内容です。

企業等の電話対応を支援する対話型音声SaaSを手がけるIVRyは2024年6月、オフィスを住友不動産東京三田ガーデンタワーに移転した。延床面積は前オフィスの約2.3倍、“遊びたくなるオフィス”をコンセプトに、「ボルダリングウォール」も設置している。

イメージ 旧オフィスで社内外から好評だったボルダリングスペースを引き続き採用。
イメージ 共用スペースには本格的なDJ機材も用意。

旧オフィスで社内外から好評だったボルダリングスペースを引き続き採用。「遊びたくなるオフィス」をコンセプトに、ビジョン内の文言「Work is Fun(働くことは、楽しい)」が体現され、随所に遊び心が感じられる設計とした。共用スペースには本格的なDJ機材も用意。エンジニアとDJは先読みをする行程が似ているため、機材を第二のフックにオフィスへの吸引力をさらに高めてエンジニアを中心とした採用力を強化していく狙い。

実は「ボルダリングウォール」は、2022年に構えた前オフィスからあるもの。当時、企業ブランディングにつながるシンボルを模索していた同社。手がける事業が電話対応と、時に「地味」な印象を抱かれてしまうこともある中で、優秀なエンジニアなどの採用力の強化が喫緊の課題だった。そこでボルダリング好きな社員の提案がきっかけとなり、企業のシンボルとしての設置を決めた。

「『スタートアップの成長には、避けられない壁が沢山あるけれど、みんなで楽しく乗り越えよう』という想いが重なったのも設置の決め手です。ウォールには業界内で注目が集まり、通常では縁のないゲストの来社が多数あり、実際に採用にもつながりましたね」と、語るのはcorporateの今西剛士氏。また社員にも好評で、出社を自由体制としているにも関わらず常に半数以上が社内にいたという。

イメージ 延床面積は前オフィスの約2.3倍に拡大。写真手前がコミュニケーションスペースで、奥が執務スペース。

延床面積は前オフィスの約2.3倍に拡大。写真手前がコミュニケーションスペースで、奥が執務スペース。余裕を持ったデスクの配置が今後の企業成長を予見させる。

イメージ オフィス入口にあるLEGOブロックのオブジェは、各従業員へ入社時にプレゼントされたもの。
イメージ オフィス入口にあるLEGOブロックのオブジェは、各従業員へ入社時にプレゼントされたもの。

オフィス入口にあるLEGOブロックのオブジェは、各従業員へ入社時にプレゼントされたもの。出社後に、自分のデスクに置く仕組みとしている。

こうした出社率の高さに加え、従業員数の加速度的な増加もあり、今回のオフィス移転を決断。さらなる企業成長のため、利便性の良い立地と広いオフィスを求めたという。

新オフィスのコンセプトは、ビジョン内の文言“Work is Fun(働くことは楽しい)”に基づいたもの。ボルダリングウォール設置の際の「ハードルに楽しく立ち向かう」という考えをメインに据えた。実際に、内装は仕切りのないワンフロアで天井板をなくし開放感を確保。執務エリアのデザインは自然とコミュニュケーションが生まれる“人の流れ”を意識している。

イメージ 共用スペースには、オフィス移転パーティーで約300名のゲストを迎え入れた。

共用スペースには、オフィス移転パーティーで約300名のゲストを迎え入れた。29階からの眺めは絶景で、角のステージはイベントでの使い勝手が良いと評判。今後も週1ペースでイベントの開催を予定する。

イメージ 前オフィスまではなかった会議室を3室設置。

前オフィスまではなかった会議室を3室設置。社内情報の共有にオープンな社風ながらも、人事や経理面における踏み込んだ話し合いをする際に、心理的安心が確保される場所が必要という社内の声に応えた形だ。

また今年5月には、新たに企業バリューを決定した。多くの従業員からアイデアを募り丁寧な議論を経て決まったバリューが、ボルダリングウォールに影響を受けた表現になったことも興味深い。「『早く行くなら1人で、遠くへ行くなら皆で』という諺ことわざの後者も重視するのが当社です。新オフィスを従業員が切磋琢磨するコミュニケーションの場所とし、企業としても大きな目標を達成する拠点にしたいと考えています」と今西氏は先を見据えた。

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