大規模データを活用したマーケティング支援に着手
登壇したのはNTTドコモ 執行役員コンシューマーサービスカンパニー統括長兼マーケティングイノベーション部長の石橋英城氏と、インテージ代表取締役社長でインテージホールディングス取締役の檜垣歩氏。両社の業務資本提携によって実現を目指す、統合型データドリブンマーケティングについて語り合った。
両社の提携の狙いは、メーカーや流通が抱える課題を克服し、データを活用した顧客理解を促進し最適な顧客体験を提供するサポートを行うことだという。ドコモには1億を超えるdポイントクラブの会員基盤とIDに紐づくデータと、dポイント加盟店のネットワークを持つ。マーケティングリサーチ大手のインテージにはデータ技術とマーケティング戦略策定能力という強みがある。
石橋氏は、両社の提携の背景でもある、データ統合を伴うシームレスなOMOマーケティングの必要性について解説した。コロナ禍を経て、オンライン販売やD2Cといった業態が一気に浸透したことで、多くの企業がオンラインとオフラインを統合したマーケティングに取り組むようになった。その実現には付加価値の高いデータ活用がポイントとなるが、世界的なプライバシー保護規制の強化など、その適切な収集の難易度は高まっている。
NTTドコモの石橋英城氏
インテージが支援する日用消費財メーカーでも、データを活用した顧客起点マーケティングへのニーズは高まっているという。檜垣氏は、日用消費財メーカーの販路がスーパーやドラッグストアなどの店頭がメインとなっているため、日々のビジネスでの「顧客」として消費者よりも流通に向きがちであるという課題を指摘した。
こうしたメーカー側の課題に加えて、石橋氏は流通市場の課題として「アメリカは寡占的で、大手4社が98%のシェアを持っています。一方の日本は真逆で大手4社を合算しても市場の6割くらい。その結果、データの分散が生まれていて、DXの推進が困難な状況にある」という日本の市場特性にも触れた。
サプライチェーンを横断的にDX化したい
後半はより具体的に、両社の提携で実現する未来について展望を示した。檜垣氏は、近年の店頭値上げという厳しい環境下でも成長するブランドとそうでないブランドがあることに触れながら、成長するブランドは新規顧客の獲得だけではなく既存顧客のリテンションにも優れているというデータを紹介した。
インテージの檜垣歩氏
インテージのクライアントにもROI向上を目指してLTVに注力する企業やブランドもあるというが「自社だけのデータでは展開が難しい、限界を感じるという顧客がいる」と話し、そこに今回の提携に意味があると指摘した。「1億というNTTドコモの会員基盤を、あたかも自社の仮想顧客基盤のように使うことができれば、独自の会員基盤を持つ企業やブランドと同じようなストック型のマーケティングが可能」(檜垣氏)
また、その強化のために、両社にとどまらない各種データをつなぎ、バリューチェーンの上流と下流、業界間で分散しているデータ統合への意欲についても触れた。
石橋氏は、昨年ローンチした「ドコモリテールDXプログラム」も紹介。流通小売業がデータドリブンマーケティングを実践する際に重要となるID-POSデータを、dポイントクラブ会員データと連携させ、統合的に分析・活用できるもので、そのデータを活用すれば販促活動の効果検証をしながらPDCAも回すことができる。複数の流通企業のID-POSデータを常時接続しているという。
近年はリテールメディアの注目度が高まっており、流通事業者は自社の会員向けにアプリを介したオウンドメディアを運用している。しかし、会員数は数十万から数百万程度で、デジタルマーケティングの対象としてはターゲットリーチに物足りなさがある。そこでドコモのグループ会社が開発した、各流通が個別に運用する会員向けアプリを横断して広告配信できるサービスを紹介した。
最後に石橋氏は、ドコモとインテージの提携によって提供される新しい価値の先に「我々の持っている大規模なデマンドサイトのデータを活用して、製造・配送・販売と言われる流通のサプライチェーンをデータドリブンで横断的にDX化する支援をしたいし」と話し、そのための取り組みが始まっていることを伝えた。
インテージはマーケティングの枠を超えて、サプライチェーンの領域でもサービスを提供していることにも触れた。檜垣氏は「マーケティングと一体となった需要創造型のサプライチェーンマネージメントによって、少子高齢化や人口減少という局面にある日本で、ロスの少ない社会を目指す。そのような社会課題の解決も目指したい」と展望を語った。