近年、新しい価値観や働き方の多様化への対応が求められ、インターナルコミュニケーションの重要性が高まる中、ヤプリと宣伝会議が共同で「インターナルコミュニケーション研究会」を2024年4月に発足。その成果発表の場として「インターナルコミュニケーション・デイ」が2024年10月に開催された。本記事は、研究会のアドバイザーであり日本電気(NEC)シニアディレクター コーポレートコミュニケーション統括の岡部一志氏を交えたオープニング・クロージングセッションをレポート。インターナルコミュニケーションの促進方法についての情報を紹介する。
エンゲージメント向上やマーケティング視点の導入、社内広報を進化させる4つの秘訣
インターナルコミュニケーション研究会は15の企業 の責任者が集まり、これから求められるインターナルコミュニケーションの在り方について数々の議論を重ねてきた。インターナルコミュニケーション・デイのオープニングセッションでは、岡部氏がこれまでの研究会での取り組みを踏まえ、インターナルコミュニケーションを進化させる4つの秘策について解説した。
まず1つ目は「従業員エンゲージメントの向上」。ここ数年、経営課題として注目されているキーワードだが、その背景を岡部氏は「世の中の働くことや会社に対する考え方の変化と、人的資本経営の発展により従業員エンゲージメントが企業評価の指標になったこと」だと分析する。企業の持続成長においてエンゲージメントの高い従業員の数を増やしていくことが重要であり、「インターナルコミュニケーションを活用し、経営戦略や方向性を理解した上で、従業員が生き生きと活躍できる職場環境を作ることを目標に掲げる企業は多い」と岡部氏は話す。
2つ目は、どんな目標を達成するために取り組み、どのような成果が出せたかという「マーケティング視点」を持つこと。岡部氏は、インターナルコミュニケーションには目標設定が必須とした上で「効果測定をするためには、従業員をどうしていきたいのかという指標を設置する必要がある。それから施策を行うと何が測れる か、どういった進捗が見られるかが分かってくる」と指南した。
3つ目は「インターナルとエクスターナルの連動」。インターナルコミュニケーションは社内のみで完結すると思われがちだが、経営者が社外に発信する情報を社内でも共有することが、従業員の会社への信頼感に繋がる。また、「報道対応をしている広報担当者は、メディアによるアウトプットを従業員が読んだらどう思うか、社内と社外にどんな相乗効果をもたらすことができるのか、重視するべき」と岡部氏。情報発信が多様化している時代だからこそ、社内外の広報を連携させることが大事だと力説した。
最後は「部署を超えた連携体制」。広報部は人事部、経営企画部、事業・マーケティング部など、他部署と関わりを持つことが多い。岡部氏は「同じ目標を持っていても、制度や報酬などの違いからその部署でしか取り組めない面もある。他部署とうまくタッグを組むことで働きやすい環境作りに繋がる」と語る。また、ダイバーシティの観点においては「特にグローバル観点でいえば、言語や文化の違いを繋げるために、各地域のコミュニケーション担当、グローバル人事担当との連携も必要になってくる」と説いた。
インターナルコミュニケーションを推進するための5つのチェックポイント
クロージングセッションでは、岡部氏とヤプリ執行役員CMO松田恵利子氏が、インターナルコミュニケーションへの取り組みに必要な5つのチェックポイントについて語った。
まずは広報におけるターゲットオーディエンスについて。広報活動におけるターゲットは株主、顧客など様々だが、近年従業員の割合に変化が見られ、従業員をターゲットにしている企業が8年前から20%以上も増加 (出典:広報会議2025年2月号)。株主、顧客に続き従業員はメディアを抜いて3位となった。このデータを岡部氏は「従業員をオーディエンスととらえ、しっかりコミュニケーションをとらなくてはいけないということが明確になってきている」と分析した。
ターゲットが変わると伝えるべきメッセージも変わってくる。岡部氏は「従業員は一番身近なステークホルダー。会社が大事にしているパーパスやミッション、DNAがメッセージになる」と語り、松田氏は「パーパスに共感できると、貢献意欲が高まり、良いパフォーマンスが出せたと実感している」と実体験を告白。共に会社の核に沿ったインターナルコミュニケーションの必要性を語った。
ではそのメッセージをどのように届けていくか。社内報、デジタル、イベントなど、情報のチャネルは多種多様だ。情報チャネルを設計する際のポイントについて、岡部氏は「ターゲティングとそこに響くチャネルの見極めが必要」と回答。ただし様々なツールを駆使したとしても、メッセージに一貫性を持たせることを忘れてはいけないと付け加えた。
いろいろな取り組みを行う中で、効果測定は常に意識したいところである。効果測定で注意すべき点は、最初に6W1H 考慮した、明確な目標を設定することだと岡部氏は語る。さらに岡部氏は、「アウトプットだけでなく、その成果がどのような影響をもたらしたかというアウトカムベースで物事を考えるよう心掛けている」という。松田氏が「マーケティングに似ている」と感想を述べると、岡部氏は「多様なステークホルダーへの対応のため、マーケティング思考も取り入れている」と語った。
最後は体制について。社内と社外広報を兼任したり経営企画が担当したりと、インターナルコミュニケーションの取り組みスタイルは多様だが、一番重視すべき点は「経営層との距離の近さ」だと岡部氏は言う。会社が変革を推進する時や従業員の働く気持ちを高めたい時には、トップが引っ張ってくれる姿を見せられる距離感が理想なのだそう。また、「単独でできる業務ではないので他部署と連携をして、サーベイからのデータや従業員からの声を分析して、PDCAを回していくドライバーになることも大切」と岡部氏は語った。最後に岡部氏は「会社の目標を達成するためには、『インターナルコミュニケーションは必要だ』と誇りをもって取り組んでほしい」と広報担当にエールを送り締めくくった。
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