社員の関心をひくインターナルコミュニケーションの取り組みとは

価値観の多様化が進む昨今、多くの企業が組織内の一体感を高めようと、インターナルコミュニケーションに力を入れている。しかし、社内に向けて情報を発信しても、社員の関心が低くて見てもらえないなど、課題を抱えている企業が多いという。社員が興味を持つ情報発信とは、どんなものだろうか。
本記事は2024年10月に開催された「インターナルコミュニケーション・デイ」から、注目セミナーをレポート。エバラ食品工業の執行役員コーポレート本部長である上岡 典彦氏 が、「社内外コミュニケーションを通じた企業ブランディングの一貫性」をテーマに、自社の取り組み事例を踏まえ効果的なインターナルコミュニケーションについて解説した。

多様な価値観を持つ社員にどう伝えるか

インターナルコミュニケーション(IC)に力を入れるエバラ食品工業。上岡氏は「蓄積された企業文化は重要な経営資源のひとつである一方で、その価値観や行動様式に固執すると企業の発展を阻害することがある」と指摘。そのため、「社会で求められていることと自社の現状・活動とのギャップを絶えず点検し、企業文化を変革していく必要がある」と訴えた。そこで重要なのが、社会と自社の間を取り持つ広報の役割だ。
広報といえば消費者や顧客といった外部に対しての情報発信というイメージが先行するが、上岡氏によると、むしろ社内に向けた広報活動(ER: エンプロイーリレーションズ)が重要だという。

ERには、社員が組織に対して愛着や一体感を持つ、企業と社員の相互理解が深まる、社員のモチベーションを高めるなど、さまざまなメリットがある。しかし今日、社員は会社の外に出ると、NPOの代表であったり、消費者であり株主であり、SNSを通じた情報の発信者であるといった具合に、多様な一面を持つ。また一人ひとりの価値観も多様化しており、一律的なERでは到底カバーしきれない。そのため、複数の手法を組み合わせる多層的なコミュニケーションを取ることが重要だという。

社員にスポットを当て、相互理解や当事者意識を育む

上岡氏は効果的だった自社の取り組みを紹介した。
1つは過去の商品を展示した「エバラミュージアム」だ。エバラ食品工業の行動指針である「冒険、反論、失敗の自由」を社員に実感してもらうために行われた取り組みで、先達が試行錯誤して生み出した商品を本社と3工場に展示(23年度実績)した。現社員も失敗を恐れず挑戦し、ユニークな新商品やサービスを生み出してくれることが狙いだ。

2つ目は、外部メディアの活用だ。企業理念や価値観を社員と共有するためには、トップからの発信も欠かせない。ところが、経営者が言葉を尽くして伝えても、現場で働く社員に十分に伝わっていないことが往々にして起こる。そこでエバラ食品工業では、役員が工場などの事業所へ出向き、社員とコミュニケーションを図るタウンホールミーティングを行う際、役員にブロック紙・県紙の取材を受けてもらい、翌日の報道に結び付けることを心がけている。なぜなら、要点がコンパクトにまとめられた新聞記事には、役員の言いたいことが的確に伝わり、理解が深まるだけでなく、従業員の家族にもリーチする効果があるからだ。

外部メディアは、社員の働くモチベーションを高めるためにも活用されている。社員一人ひとりの詳細なプロフィールシートを作成し、メディアに売り込んだ結果、主要ブランドの担当者やバーベキューインストラクターの上級資格をもつ社員など、自社で活躍している人たちがメディアに取り上げられた。特に社員の出身地で普及しているブロック紙・県紙へ働きかける「故郷に錦を飾る作戦」は、地元出身で頑張る人たちを応援したいというブロック紙・県紙の思いとマッチし、双方にWin-Winな取り組みとなっている。ほかにも、アイスホッケーのチームに所属しながら仕事に取り組むデュアルキャリアの社員や女性研究員も取り上げられ、働きがいの高い職場環境という社外イメージの向上にもつながった。

3つ目の取り組みは、社員が互いの仕事や自社の活動に関心を持ち、双方向コミュニケーションを推進するための社内ラジオ「エバラジオ」だ。メインパーソナリティーは予定調和を破り、話題の核心へ鋭く切り込めるプロのアナウンサーを起用。経営陣はもちろん、支店や工場勤務者など、これまで約200名の社員が出演した。部署の垣根を越えて3名ほどの社員が対談するメインコーナーの「クロストーク」や、本音を投稿する「エバラあるある川柳」、お客さまの声や社員間で感謝を伝える「エバラブレター」など、多くの社員が参加できる仕組みを整えた。
ERの効果を調べるため、エバラ食品工業では年に2回、社内調査「エバラブ度アンケート」を実施している。50%の社員がエバラジオを聴いていて、約69%がさまざまなERの取り組みにより、会社や他部署への理解が深まったと回答(2024年3月実施)。
上岡氏は「ERは生きている社員を相手にしている。いつの時代も、『これが正解、最終形態』はない。広報が試行錯誤している姿を社員に見てもらい、一緒に作り上げていくことがER推進の肝要」と締めくくった。

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