都心のオフィスビルや街なかにある喫煙所の広告メディア化が進んでいる。「BREAK(ブレイク)」は喫煙所に設置したデジタルサイネージのネットワークで、都内や横浜のビジネス街を中心に拡大。2021年のサービスローンチから約3年で約500カ所に設置され、リーチ規模は500万人を突破した。その一部はサンプリングなどのプロモーション拠点としても活用されている。
喫煙所の広告といえばタバコの広告やマナー広告を連想するかもしれないが、実は「都心のオフィスで働く有力な層にアプローチできるメディアとしての認知が少しずつ広がっています」と、BREAKを運営するコソドの湯川健太・取締役CMOは説明する。
都市生活者向けの広告メディアとしての実力と可能性について、元テレシーCEOでタクシー広告やオフィスエレベーター広告などのオフライン広告に精通している土井健氏(ohpner代表取締役)と、コソドの湯川氏に聞いた。
首都圏ビジネス層500万人にリーチするメディア
――喫煙所サイネージをネットワーク化しようと考えた経緯は。
湯川:私たちは以前から、首都圏のオフィスエリアを中心に喫煙所「THE
TOBACCO(ザ・タバコ)」を展開していました。喫煙者というと希少種のようなイメージもあるかもしれませんが、全国で約1700万人のボリュームがあります。市場規模で見ると4兆円という、特化型なのに規模があるという稀有な領域なので、デジタルサイネージを展開できるポテンシャルがあるのではないかと考えたのがきっかけです。
コソド 取締役CMO 湯川健太 氏
「BREAK」は、オフィスビルの運営管理を行う不動産関連会社と連携し、ビル内の喫煙所にサイネージを設置して広告を配信しています。2021年に事業展開を開始し、拠点数は当社直営の「THE TOBACCO」を含めて先日470カ所を超えました。月間の延べ想定リーチ数は最新の集計で500万人を突破しています(2024年10月現在)。
広告メディアの価値は量的なものと質的なものがあります。たくさんの人が見るか、「とがった人」が見るか、ともいえます。タバコは嗜好品ですし、年々高価になっていて一定の可処分所得がないと買い続けることができないので、喫煙所はとがった層に入ると思います。
オフィスビル内の喫煙所に設置
一方で、量的側面でも1700万の喫煙者のうち、首都圏のオフィスビルで働く500万人のリーチという規模があります。
加えて、設置している施設は千代田区・港区・中央区・渋谷区など、いわゆるランドマークとなる大型のオフィスビルへの展開が中心です。「BREAK」は首都圏オフィスビル喫煙所サイネージと呼ぶこともできます。
タクシー広告との併用で効果を最大化
土井:首都圏メインで500万人という規模は、統合的なプロモーションを展開しようとするときに、広告主や広告会社が採用を検討するレベルですね。
喫煙所は、電車やエレベーターなどよりも複数人でいる機会も多く、会話が生まれやすい。そこでサイネージの広告をみて、上司や同僚と会話のきっかけになる可能性もあるので、そこは他メディアに比べた優位性かもしれません。
ohpner(オープナー) 代表取締役 土井健 氏
湯川:まさにその通りです。喫煙所は灰皿以外に何もなく手持ち無沙汰な空間なので、サイネージにも自然と目が向きますし、誰か知り合いがいると会話が発生しやすい。そこで話題になれば印象に残りやすい傾向にあります。
――広告主の出稿例として、どんな商品やサービスが多いですか。
湯川:男性向け、ビジネス層向けの商材が多いです。20〜30代で40%、ボリュームゾーンは40〜50代(約50%)、決裁権者も多いので、BtoB商材などの出稿は目立ちます。
タクシー広告とはよく比較されます。タクシーは、営業の人がアポイントの移動などで日頃利用するケースが多いと思いますが、総務や人事、経理部門などは職種の特性上オフィスでの業務が大半であるため、ビジネスシーンにおけるタクシーの利用はそれほど多くありません。そういう方へのリーチを考えるバックオフィス向けのサービスとは非常に相性がいい。経営層にはタクシー広告で広くサービスを訴求し、現場の決裁権者には喫煙所サイネージで情報を補完していくという併用事例も増えてきています。
土井:タクシー広告で想定される課題は、経営者層はタクシーで繰り返しリーチしているので詳しいのに、現場の担当者はあまり日頃タクシーを使わないので知らないというケースです。「BREAK」を併用すれば、上手くそこを補完できます。
SaaS系のサービスなどは、タクシーで経営者にリーチして「BREAK」で現場の方々にも認知してもらうことで導入ハードルを下げられるほか、社内調整や稟議もスムーズに進めることができるというのはストーリーとして理解してもらいやすいのではないでしょうか。
テレビ番組やゲーム、飲料、メンズケア商品などの出稿事例も
――BtoB商材は相性が良さそうですが、BtoCはいかがですか。
湯川:大きく増える可能性があると期待しています。喫煙所という空間の特性で密閉されているので、割と大きめの音を出すこともできます。動画素材や音に魅力のあるサービス、VODやテレビ、ゲームのプロモーションで活用いただいています。飲料の自販機が近くにあるケースも多いので、飲料メーカーも親和性があります。
当然ながら喫煙所にいるのは20歳以上なので、年齢によるゾーニングが必要な商材も出しやすいと思います。ユーザー層からメンズスキンケア商品やビジネス向け英会話、アーリーアダプターに当たる層も多いので新製品や高級寝具なども活用いただいてますし、高価格帯のガジェットやアルコール飲料はリピート利用も増えています。
タクシー広告もBtoBから始まってBtoCへと広がっていく傾向にありますが、同じように「BREAK」も約3年で比率が半々になりました。
――広告メニューについて教えてください。
湯川:30秒を1枠として販売しています。放映は12枠単位で、1ロール360秒の設定で喫煙所の平均滞在時間の6分と合わせています。そのため、どのタイミングで入室しても一通りの広告に接触するような設計です。30秒なのでテレビCMやタクシー広告と同じ素材を使うことができます。
直営のスペース(THE TOBACCO)内であれば、サンプル配布・販売などの接客や定性・定量アンケートの実施も可能です。スタッフが定期的に清掃対応をしているので、その一環としてサンプルやチラシの補充などの対応もしています。
土井:サイネージ広告で認知と興味を高めながら、その場で実際に商品に触れたり試したりできるのは効果が高そうですよね。広告と商品体験をシームレスに結びつけることは、マーケティングでも重要なポイントですので。休憩中という、割と無防備な状態にあるため行動へのハードルが低いこともポイントだと思います。
――直近の活用事例や実績は。
湯川:今年の4月に放映したアサヒビール「GINON」のCMは、首都圏を中心に348カ所で展開し、認知率が「BREAK」接触者と非接触者比で9倍となり、64%の人が「GINON」という名前を覚えたという実績を残しています。認知や態度変容に加えて、検索や購入検討など、具体的なアクションへの効果も生まれました。
10月21日から11月3日までは、24カ所で花王の「リセッシュ除菌EX ワイドジェットストロング」の体験プロモーションを実施しました。喫煙所は臭いも気になる場所なので効果も実感してもらいやすく、消臭剤はもちろん、口臭ケアなども非常に親和性の高い商材だと思います。
花王「リセッシュ」の体験プロモーション(左)とサミー「e北斗の拳10 」のプロモーション展開 ©武論尊・原哲夫/コアミックス 1983, ©COAMIX 2007 版権許諾証YSS-324 ©Sammy
少し珍しい事例ですが、8月に実施したサミーの「e北斗の拳10 」のプロモーションでは首都圏施設で動画を放映しただけではなく、丸の内の「THE TOBACCO 2:50.76」では壁面や灰皿をキャラクターでジャックし、大型サイネージの特設やBGMも独占放映しました。ノベルティサンプリングも行い、期間中4万5000人の方に利用いただきました。丸の内と同じような直営施設(THE TOBACCO)は東京23区を中心に100カ所以上あるので、映画やドラマ、ゲームなどコンテンツに合わせて活用の幅は広いと思います。
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株式会社コソド
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