Q1:現在の仕事の内容とは?
noteのPRとして、「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」というミッションの実現に向けたさまざまな活動をしています。
いま特に注力しているのは、社会のトレンドとnoteに投稿される記事やクリエイターの情報をかけ合わせたプロダクトPRです。「noteには常におもしろい情報が集まっている」という認知を獲得するため、クリエイターやコンテンツに光を当てる活動を展開しています。
今年はいくつかの情報番組でnoteの仕組みや、クリエイターの活動風景を紹介いただきました。これは、noteに集まる多様なクリエイターをご紹介する取り組みのひとつです。
たとえば、選挙時期には投稿記事をもとに各候補者や政党への言及傾向を分析したレポートを配信したり、生成AIが話題になった際には興味深い活用例の記事をメディアに共有したりしています。こうした動きを通じて、noteを取材の情報源として活用いただけるメディアを増やし、クリエイターの記事がより多くの方に届くことを目指しています。
メディアとの関係構築では、単なる報道機関と事業会社としてではなく、ともに業界を盛り上げていくパートナーとしての関係を構築しています。「クリエイター支援プログラム」を通じて86のメディアと連携し、新しい書き手の発掘をともに行っています。
noteがいちはやく読者課金型のメディア運営モデルを構築したこともあり、メディアの方々からマネタイズについてのご相談も受けます。特に昨今は、デジタル化の波に加えて生成AIの登場により、メディアビジネスの在り方そのものが問われています。そこで2023年4月には「生成AIがもたらすマスメディアの進化」をテーマに勉強会を開催。100名近くのメディア関係者にご参加いただき、業界共通の課題について知見を共有する機会となりました。
また、クリエイターとの関係構築も欠かせません。定期的なインタビューやオフラインイベントへの参加、SNSでの交流を通じて生の声を集め、それらを社内のSlackチャンネルで共有し、機能開発やサービス改善に活かしています。
広報PRは、社内と社外の両方に軸足を置いて、自社への愛情だけでなく客観的な視点も兼ね備えておくべき存在だと考えています。だからこそ、日頃から外の情報を意識的に収集しながらも、だれよりも社内の情報に明るくあろうと努めて日々仕事をしています。
Q2:これまでの職歴は?
大学卒業後、2006年に人材サービスのエン・ジャパンに入社しました。最初の8年間は顧客の新卒採用を支援する法人営業を担当。商材であった就活サイトは業界最大手のサービスではなかったため、いかに顧客の課題を引き出して、自分に任せたいと感じてもらうかの提案力が鍛えられました。
当時は受注した企業は納品まで一貫して営業が担当していたので、採用広告を作成するための取材からコピーライターのディレクションも経験しました。その経験が、広報に不可欠な「誰に何を伝えるか」の思考訓練となり、今につながっています。
その後、社内公募の制度に応募して、ブランド企画室へ異動。ちょうど役員直下の組織として立ち上がり、対外広報を強化するタイミングでもあったため、未経験ながらも様々な仕事を任せてもらいました。
メディアリレーションやプレスリリースの企画作成はもちろん、社内報を社外にも見せていく「en soku!」というオウンドメディアの立ち上げや運営、記事の編集、女性活躍推進プロジェクトの事務局も行いました。グループ会社には海外企業や社員の半分以上が外国籍のグローバル企業もあったため、幅ひろい経験を得られました。この期間の成果が認められ、営業時代とあわせて、通算2度の社長賞も受賞しました。
noteには、広報部門を立ち上げたいと旧知の友人から誘われて、2019年4月に入社。まだ40名ほどの組織で、ちょうどコーポレート部門を担う専門職のメンバーが入社しはじめたタイミングでした。以降、社内の情報整理から、コーポレートPR、採用広報、危機管理広報まで、幅広い領域を担当。2022年12月のIPOでは、コミュニケーション戦略全般のプロジェクト責任者として、重要な経験を積むことができました。現在では、4名体制のチームとなっています。
Q3:転職や社内異動などに際して、強く意識したことは?
つねに、今まで使っていなかった脳みそが鍛えられる環境に挑戦したいと考えています。広報への異動も、当時は1人目の育児休業から復帰して1年が経過した頃でした。時短勤務でもフルタイムの時代と変わらぬ営業成績を出せるようになり、もっと新しいことがしたいと熱望していました。
未経験で勤務時間の制限や不安定さがあるわたしを、広報に登用してくれた経営陣には、今も感謝しています。扱う商材が1つのプロダクトから、全社へ広がった感覚で、営業のスキルを横展開できました。また全社横断のプロジェクトをリードする経験や、一段上の視座から会社や業界を俯瞰して見ることで成長を実感できました。
noteへの転職を決めた理由は「公私を忘れて没頭できる事業領域」と「広報としての能力開発」の2点です。わたしは書くのも読むのも大好きで、暇な時間さえあれば何かを読まずにはいられない性分。また、アイドル鑑賞や美術館めぐりが大好きで、モノづくりをする職人の方にも尊敬の念がたえません。そんな、何かを生み出すクリエイターの方々と深く広く関わることができるnoteには、以前から関心を持っていました。
能力開発の観点で特に魅力的だったのは、通り一遍なPR施策では評価されない環境です。noteの代表は、ベストセラーを続々と生み出してきた編集者。その経験を踏まえて「社会でいかに自分ごと化してもらえるか」「そもそもの企画がどうであれば、社会にインパクトを与えられるか」を徹底的に考え抜くことが求められます。
代表からは「広報とは企業の編集者」と言われてきました。編集者は本を作って終わりではなく、より多くの方の手に届けるまでが仕事です。この考え方に共感し、自身の広報観を広げられる環境だと確信したことが、転職を決めた大きな要因でした。
Q4:国内において広報としてのキャリア形成で悩みとなることは?
広報職のキャリアにおける最大の課題は、経営へのインパクトをいかに創出できるかという点です。特に、プロダクト開発や新規施策に広報の観点(社会での受け止められ方や話題化のしやすさなど)を組み込んで貢献したいと考えていますが、まだ道半ばという状況です。
この課題に直面したのが、先日のnote10周年企画です。社会課題の解決に向けた新たな挑戦として、ネットでの誹謗中傷防止を目指して他社との事業連携を実現しました。結果として、クリエイターからの期待の声も多数集まり、メディアでも多く取り上げられ、社会的なインパクトを創出できました。しかし、この企画自体は経営陣からの発案によるもので、わたしたちのチームは実務遂行が中心でした。広報として、より本質的な価値提供ができるよう、企画力と経営視点を養っていきたいと感じています。
このような経験を通じて、広報パーソンに求められる専門性の幅広さも実感しています。特に経営への理解は不可欠です。事業戦略や市場動向への深い理解がなければ、経営陣との建設的な対話や、事業に貢献する提案も難しくなります。
さらに、広報部門の組織的な位置づけも大きな課題です。コーポレート、マーケティング、人事、社長室など、会社によって所属部門が異なり、期待される役割や業務内容も千差万別です。そのため、転職時には「広報職」という同じ名称でも、実際の業務内容に大きな違いがあり、キャリアのミスマッチが起きやすい状況です。
これらの課題に対して、個人としてできることは、まず経営に関する知識・理解を深めることです。業界動向や競合分析なども含めて、より広い視野で事業を理解する努力を続けています。同時に、広報職としての専門性を高めながら、組織の中で広報機能の価値を示していくことも重要だと考えています。
Q5:広報職の経験を活かして、今後チャレンジしたいことは?
広報の経験を通じて培った力を、より大きな領域で活かしていきたいと考えています。
これまで、情報収集、分析、企画立案、関係構築、交渉、プロジェクトマネジメント、編集など、幅広いスキルを磨いてきました。以前は「これをやりたい」と自分のWillが明確でないことがコンプレックスでしたが、今では様々な分野に夢中になって取り組める柔軟性こそが自分の強みだと実感しています。
noteでの仕事では、インターネットで自己表現や情報発信をすることで、人生が変わった方々をたくさん目の当たりにしてきました。この体験を、もっと多くの方や組織にしてほしい。そのために、広報の枠組みにとらわれずに挑戦していきたいです。
【次回のコラムの担当は?】
newmoの中澤理香さんです。ウェブディレクターやコミュニティマネージャーを経て、未経験でメルカリの広報として立ち上げを経験。前職では取締役を務めるなど、事業会社広報としての新しいキャリアを切り開いて、尊敬している方です。