デジタルエージェンシーから事業会社へと転職する人が増加しています。企業側も、デジタルエージェンシーで培ったスキルを事業会社の成長に生かせる人材を、積極的に採用する動きが高まっています。
そこで、デジタルエージェンシー出身者が事業会社に転職を考える際に、どのような経験やスキルをアピールするべきなのかを深掘りし、若手デジタルマーケターに向けた具体的なキャリアのヒントをお届けします。デジタルエージェンシーでの経験がどのように評価され、どんなスキルセットが企業で求められるのか、気になる方も多いはずです。
今回は、Web広告運用兼営業担当からキャリアをスタートし、デジタルマーケティングからブランドマーケティングへと広げてきた小山魁理さんにインタビューを実施。これまでの経験を通じて、デジタルエージェンシー出身者が持つ強みを最大限に生かす方法や、採用側が実際に評価するポイントを解説していただきます。
小山魁理（こやま・かいり） 氏
DMM.com
マーケティング本部 ブランドマネジメント部 副部長
大学卒業後、急成長ベンチャーのデジタルエージェンシーにて営業課長として営業チームを統括。2018年8月にドミノ・ピザ ジャパンへSNS担当として入社し、2022年3月からはブランドマネージャーとしてブランドの成長に貢献。2023年11月にDMM.comマーケティング本部ブランドマネジメント部の副部長に就任し、マス広告、PR、SNSなどを駆使したアッパーファネルのコミュニケーション戦略立案と実行を社内外のステークホルダーと共に事業横断で推進している。
Q．デジタルエージェンシー出身者が事業会社へ転職する際、強みになる経験・スキルは何ですか？
A．デジタルマーケティングにおけるデータ分析力とユーザーインサイトの深掘りを通じて、クライアントのビジネス価値向上に貢献してきた経験です。
デジタルマーケティング領域では、Webサイトのアクセスデータや広告のクリック数、SNSでのエンゲージメントなど、ユーザー行動をリアルタイムで細かく把握することができるため、ターゲット層の潜在的なニーズや動機を深く理解するスキルが培われます。このように得られたユーザー理解力は、ユーザーが求めるものや潜在的な期待を把握するうえで非常に重要だと考えています。
これらに基づき、デジタルに留まらない多角的な視点でクライアントの課題解決を図ることで、ビジネス成果を支えてきた経験は、事業会社においても有用なスキルセットとしてアピールできるかもしれません。
Q．実際に転職活動の際、職務経歴書でアピールすべき経験や成果は何ですか？
A．具体的な成功事例と、その成果に至るまでの思考プロセスです。
成果を数値で示しつつ、その結果がどのような分析や考察を経て生まれたのかを説明すると、採用担当者に対して説得力が増すかもしれません。例えば、「CPA（Cost per Action）を改善しました」という結果のみでは、その成果がご自身の取り組みによるものなのか、外部要因によるものなのかが判断しづらい可能性があります。「CPA改善の要因を精査し、それに基づいた戦略提案により、前年比110%以上の成長を達成した」といった形で、結果のみならず、その過程における考察や取り組みを合わせて記載することで、入社後の貢献への期待感を伝えることができると思います。
また、現在の業務において培ったスキルが、転職先の事業にどのように貢献できるかを明確に伝えることが重要だと考えています。このアプローチにより、「自分がどのような価値を提供できるのか」を採用担当者に理解していただきやすくなります。単にクライアントの規模や業種、企業名を挙げるのではなく、実際にどのような問題を解決してきたのか、その過程でどのようなスキルを身につけ、それを転職先でどのように応用できるかを具体的に示すことが、より効果的かもしれません。
Q．スキルアップのために今何をすべきですか？
A．日々の業務を通じて成功体験を積み重ねることです。
デジタルエージェンシーで働く魅力の一つは、膨大なデータに触れながら、PDCAサイクルを実践することができる点です。ユーザーの行動データに基づいて仮説を立て、それを基にクライアントに提案し、新しい施策を実行して結果を検証する。このプロセスを繰り返すことが、事業会社でも役立つ実務的な知見や成果につながると感じています。
