※本記事は月刊『ブレーン』2024年12月号特集「アップサイクルで循環する社会をデザインする方法」への掲載内容から抜粋してお届けします。
「ゴミ・うんち・CO2」
「いわゆる自然界においては、ゴミもうんちもただそのまま残り続けるものはほとんどありませんでした。しかし、いま人間社会では、その両者の存在は大きな問題となっていますし、文化的にもどこか見たくないものとして扱われています。(略)完全に消えてしまうものなんて、ないのにもかかわらず」。
グラフィックデザイナーの佐藤卓さんと文化人類学を専門とする京都芸術大学の竹村眞一教授が仕掛ける「ゴミうんち展」は、身の回りから宇宙まで、世の中のさまざまな「ゴミうんち」を扱う展覧会だ。
身近なものから宇宙までさまざまな「ゴミうんち」にまつわるものを展示するギャラリー1の「糞驚異の部屋」。撮影:木奥恵三
本来自然界においてそのまま残り続けるゴミやうんちはほぼ無いにもかかわらず、人間社会ではそれらが、ごみ捨て場や水洗トイレといった「装置」を通じて、まるで忘れるべきもののように扱われているのではないか――そんな問いの元、本展では「ゴミうんち」を含む世界の循環を「pooploop(プープ・ループ)」と名付け、改めて目を向けることを促す。さらにpooploopを人工物のデザインでも活用できないかと模索する実験の場でもあるという。
ギャラリー2では新たな循環の在り方や価値の提案をする作品などを展示。撮影:木奥恵三
本展の着想に至った背景を、佐藤さんは次のように説明する。「大量に生産されるパッケージデザインやブランディングは、資源やゴミ問題と直結しています。デザイナーも、ただモノを売ることだけを考えていればいいのかという問いが自分の中に自然と生まれ、40年前にボトルリユースを前提にしたウイスキー『ニッカ・ピュアモルト』を、自主的にプレゼンして発売にまでこぎ着けました。ゴミの問題は当時から自分の中で生まれたテーマだったのです」。
そして今回、以前にも21_21 DESIGN SIGHTで水やコメをテーマにした展覧会を共につくりあげたことがある竹村さんに、ゴミをテーマにした企画を投げかけた。「すると竹村さんの口から『ゴミ・うんち・CO2』という言葉が一連の流れとして発せられたのです。そこでゴミとうんちがくっつきました。私はその時『これだ!』と思ったのです」。
「ゴミ」に「うんち」がくっついたことによって、人工的な廃棄物から自然環境が織りなす循環の大きなスケールへとイメージが広がったと話す。
「今ある地球環境が何十億年かけてやってきた自然の力に、人工的な廃棄物処理のヒントがあるのではないか。そう考えると廃棄物ではなくそれはそのまま資源になるという発想に繋がります。水やコメの展覧会の時と同様に、発想のヒントは常に竹村さんの話に潜んでいました。循環をテーマにした展覧会名が突然決まり、そこから準備が始まりました」。
作品同士も「繋がり」意識し設置
竹村さんと話した内容を、企画のコアメンバーの岡崎智弘さん、狩野佑真さん、清水彩香さん、角尾舞さん、蓮沼執太さん、吉本天地さん、会場構成担当の大野友資さん、会場グラフィック担当の田上亜希乃さんらと共有しながら、徐々に展覧会を組み立てていったという。「さらに循環をテーマにした新しい試みとして、それぞれの作品に隔たりがあるわけではなく、繋がっているような見せ方はどうだろうかという意見が出て、全員が賛同し話が進みました」。・・・以降は月刊ブレーン24年12月号本誌、もしくはデジタル版記事(ご購読が必要です)でご覧ください。
月刊『ブレーン』2024年12月号
【特集】
アップサイクルで
循環する社会をデザインする方法
・廃棄物を「循環」の視点から見直す 「ゴミうんち展」
佐藤卓
・子ども服の廃棄を減らすサステナブル・レーベル
ゴールドウイン「GREEN BATON」
・「髪に良いことが地球にも良い」 再生を後押しするヘアケアブランド
uka「リジェネラティブ グッド」シリーズ
・デニムやTシャツも カカオのアップサイクルで地球環境に貢献
明治「ひらけ、カカオ。」
・初対面の際にも話題に? 食べられなくなった「米」を「名刺」へ
亀田製菓「Re Kameda」
・〈対談〉デザイナーが 環境問題のためにできること
清水彩香、八木彩
【青山デザイン会議】
地域発、アップサイクルの担い手たち
伊藤昌徳×田中達也×山本直人
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