広報会議サミットでの講演の様子。イオングループで、DE&Iを推進している背景や、取り組みの推移、アワード事例について、イオン DE&I推進室 室長 江藤悦子氏が解説した。
国内外で流通小売り事業などを展開するイオングループ。グループ会社数は300を超え、総従業員数は約60万人にのぼる。
2013年、イオンは株主総会で、当時社長が「日本一女性が働きやすく、活躍できる会社を目指す」と宣言。女性管理職比率50%を目標に、ダイバーシティ推進室を設置し、活動を開始した。その後、女性活躍推進のみならず、多様な人材の活躍、ダイバーシティ経営へと取り組みの幅を広げている。
DE&Iの推進体制
現在、グループ主要企業約70社には、DE&I推進の責任者と担当者1名以上を配置し、各社が現状分析を踏まえ目標に向け独自の取り組みを行っている。一方で、イオンDE&I推進室は、グループ共通の方針を策定し、各社への情報提供や教育サポート、進捗管理を行う体制をとっている。
イオングループがダイバーシティ推進を通じて目指す姿として打ち出しているのが「ダイ満足」だ。これは「ダイバーシティが生み出す、従業員と家族、お客さま、会社の満足」の最初と最後の文字を合わせた造語である。
グループ共通の活動として、ベストプラクティスを共有する「“ダイ満足” アワード」や、研修を行う「“ダイ満足” カレッジ」、グループ各社のDE&I責任者・担当者会議「“ダイ満足” サミット」など、様々なプログラムをDE&I推進室が中心となって進めている。
「グループの取り組みの基盤となる“ダイ満足” サミットでは、各社の担当者が集まり、事例の共有や、ネットワーキングを行っており、顔の見えるコミュニケーションをしています。四半期に一度は、有識者によるセミナーやディスカッションも行い、最新の情報を提供しています」と、DE&I推進室室長 江藤悦子氏は話す。
アワードで組織内を巻き込む
グループ各社を活動に巻き込んでいくための社内コミュニケーション施策として注目したいのがベストプラクティスを共有、表彰する「“ダイ満足” アワード」だ。2014年にスタートし2020年以降はオンラインにて開催している。
目的は、グループ各社が、DE&I推進活動を振り返り、グループ他社の成功事例、推進事例を学ぶこと。そしてグループ全体のDE&I推進の水準を高めることにある。
2023年度は10回目を迎え、40施策のエントリーがあった。1次審査ではアクションレポートをもとに、イオンの部長とDE&I推進メンバーが審査。続いて、DE&I推進部が、最終プレゼン審査出場企業の社長・支社長への個別インタビューを行い、トップがどのようにコミットしているのかを確認。最終プレゼン審査会では、東京大学の佐藤博樹名誉教授やイオンの経営陣が審査を行い、5つの取り組みが優秀施策として選ばれた。
「受賞した会社は誇りに感じており、やる気の糧になっている、という声が寄せられています。受賞企業の取り組みを見て、自社でもチャレンジしようとする企業も出てきています」と江藤氏は振り返る。
「“ダイ満足” アワード」が10年以上継続できている理由について江藤氏は、「グループ各社とのコミュニケーション、ネットワーク強化を大切にしている」と話した。アワードのプロセスにある各社の社長インタビューで、トップの考えや方向性などを聞き取り、コミットメントを引き出しているほか、70社それぞれのDE&I推進担当者に対しきめ細くコミュニケーションをとり、進捗管理や日々の悩み相談など個別のやりとりを丁寧に行っているという。こうした支援体制が、アワード成功の裏側にはあった。
外部配信の強化を目指す
今後の課題について江藤氏は、社内に留まらない外部発信の強化を挙げた。
「オウンドメディアにて、グループ各社の取り組みや取り組む人々を紹介する記事の準備を進めています。そうした発信を通じて企業価値の向上につなげたいと考えています。『すべての人材が、すべての現場で革新に挑戦し続けるイオン』『人材を成長、発展の原動力とするイオン』の実現に向けて、DE&Iを推進していきます」(江藤氏)。
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